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プラハの春 & ベルリンの秋【読書紹介の春。まだまだ時間なき夏。買った本が壁の高さになる秋。一年ごとに少しだけやってくる休み】

日本の元外交官が経験を生かして作家に転職して書いた作品。

まずは第1作「プラハの春」
説明しよう。
プラハの春とは、
ソ連健在だったころ「社会主義やめたい」とか言い出したチェコスロバキアを、周辺の共産国が共同軍事侵攻することによって力づくでやめさせなかったという国際的パワハラ事例である。
もはや共産圏は武力でそれを維持することしかできないことが改めて証明された。

そんな中、チェコ駐在の日本人外交官と、東ドイツからやってきたある女性が、道ならぬ恋愛をしてしまう話です。不倫です。
(あれ、離婚したんだったかな?)
といっても旦那さんとはもう距離があるようなので、ここではもめません。
しかし「プラハの春」の事態が進行するにしたがって、改革派に共感を覚えるふたりにも当然に激動の時代が降りかかり、

(ネタバレ注意報)悲劇に終わります。

そして続編「ベルリンの秋」へと続きます。
主人公である日本人外交官は、国交樹立したばかりの東ドイツに赴任。
かつての恋人の娘と出会い、そして一方的に惚れられて、最終的にくっつきます。
おいちょっとまて。
案外どろどろしてないか?
まあ当時国力が絶頂期の日本人外交官なんて、共産圏の女性から見たら星の王子様に見えるのも仕方ないのかもしれないが。
まあ、ほだされちゃったのか。

もっとも私が、関心を持っていたのは、
恋愛ドラマというより東ドイツでした。
謎の国、東ドイツ。
オタにとっては東ドイツが崩壊した後に、急激に増えた興味の対象だったんですね。
御徒町では東ドイツ軍の中古制服が流通し、東ドイツアイテムが急速に認知度を増していた時期です。
要はナチオタに飽きた人たちが入ってきたんですね。
ソ連崩壊後の国際共産趣味ともかぶるものがあります。

特に東ドイツの秘密政治警察シュタージは悪名高き存在でして、
国民の3分の1が同胞の監視と情報提供を行うための非公式スパイとされ、かように国家の総力を挙げて自国民の監視をするメカニズムを機能させていたそうです。
アホなんじゃないの?とか言われそう。

「物語 東ドイツの歴史」なる本を読みますと、

貧乏国でナイナイ尽くしだった東ドイツ社会も、
西ドイツと相互国交承認してお金を借りられるようになると、
70年代にはどうにか東側で最も豊かな経済大国にはなります。
それでも西ドイツからの借金を返済できず、借金を返すためにさらに借金を申し込むような体たらくでしたが。
ただ東ドイツは国民を豊かにすることによって体制からの離反を防ごうという努力に、一定の結果を出せた国ではあったようです。
この点が他の共産国とは決定的に違う。
また頼みの綱であるソ連からの補助金も、減額される一方どころか逆に金の無心をされるようになる。
日本も同じですが、当時は経済超大国であった日本とは違い、
東独は腐っても貧乏、その寿命をさらに縮小させたようです。

「ベルリンの秋」作中では、トラバントなる自家用車が、申し込みをしてお金を払い込んでも届くのは10年後とかいう遅さになっています。
(一瞬、レクサスLXを思い出したぜ!危なかったぜ!)

そんな東ドイツ社会でかつての恋人の元旦那、
ラインハルト大佐とかいう人物が、部下からものすごく慕われています。
それについて報告するソ連外交官とアンドロポフとの会話が印象的でした。

「とにかく部下からはものすごく慕われ、上官からはものすごく憎まれているようです」
「それで?直接に会ったのか?」
「いや、まだ会ったことは」
「君はそれでも東欧問題担当ソ連外交官かね。実際に会わないで相手の人格を推し量れるわけないだろう!」

確かこんな感じ(微妙に違うはず)

とにかくアンドロポフ(当時KGB長官)は、実際に面と向かって会わなければ、相手の人物像を推し量れないという真っ当なコミュ力をお持ちの人でしたね。
悪役ながら非常にやり手感があって、手ごわいと同時にある意味で話ができそうな印象です。

もちろん物語のラストはベルリンの壁崩壊で終わるわけですが。
旧共産圏の話をたくさん読めてしばらくはお腹いっぱいになれたのでした。

今日はおしまい。

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