マンアフターマン(著:ドゥーガルディクソン)【200万年後、我々は読書紹介に適応しすぎたあまり、肉体が変形し、全身がひだのような書物鰓によって覆われたのである】
生物学系世界三大奇書にして、その中でもっとも絵面がアレな作品です。
さて「マンアフターマン」を語るには、
まず前作である「アフターマン」について語らなければなりません。
では「アフターマン」の紹介から。
それは人類滅亡後の地球で、当然ながら野生動物が復活して、
やはりダーウィン的進化の法則に従って再度進化していきます。
人類による大絶滅で、生態的地位(ニッチ)がだいぶ空いていたのと、
人類が各大陸にばら撒いてしまった侵略的外来種などが定着して、
その結果としてまったく新しい生態系がいつものごとく再生されました。
大量絶滅の後、生き残った生物から空いたニッチを埋め尽くすように再度進化する。
地球の歴史では、こういうのを数千回と繰り返してきているので、古生物学に詳しい人にとってはお馴染みの光景です。
進化生物学の啓蒙を深めるための絵本といった体裁です。
だいたい5000万年後。
温帯の草原。
ネズミからイタチのような姿に進化したラピド
ネズミから猫のような姿に進化したラヴァン。
ネズミからジャッカルのような姿に進化したファランクス。
いずれも尻尾だけはネズミのままです。
ファランクスが獲物として狩るのは鹿、ではなくてウサギから鹿のような姿に進化したラバック。
一方、こちらは森林地帯。
樹上にはシャクトリムシのように胴が長く伸びたリスの子孫、チリット。
猫の子孫で猿のように綱渡りするストライガー。猫系の子孫はこの子以外は絶滅したようです。生きた化石でしょうか?
海洋を泳ぐ巨大なクジラ、は哺乳類ではなくペンギンから進化したヴォーテックス。
孤立した島世界には飛べない巨大な鳥、ではなく飛べない巨大なコウモリ、ナイトストーカー。その生態は、奇声を上げて(その超音波はもはや可聴域も使う)走り回る夜行性肉食獣であり、この島の夜を恐ろしい雰囲気に仕立て上げます。
はい、ここまで。前座です。
これくらいでいいでしょう。ほんの少し抜粋しただけです。
さらに恐竜が絶滅しなかったら、
どんな種族に進化していたかという「新恐竜」
「アフターマン」の続編で時代ごとにどんな生物が主流になるかを描いた「フューチャーイズワイルド」
これらもオススメです。
しかしこれらシリーズの中で、断然もっともおぞましいのは、
人類自身が進化した姿を描いた「マンアフターマン」となります。
発想がおかしい。
ただこの本に出てくる人類は、知性を退化させられて野生動物として改めて進化しなおした種が多いです。
知性を残したグループ、知性が変則的に復活しているグループなどもありますが。
まあ進化生物学の絵本なので、野生動物人類が圧倒的に主流として描かれています。
一言でいうとキモイ。
クトゥルフ神話の邪神ですら、これに比べたらインパクトは弱い。
まず宇宙人間。
ノミみたいな外見をしていますが、改造された人類です。肉体を覆うシェルターの中にはちゃんと人間の骨格が収まっています。女性しかおらず一代で絶滅します。子孫は残せません。
水中人間。
水中で生活できるよう扁平な顔とエラを持っています。この種族は子孫を残せるので、実は同作品中で最も系譜が続く種族でもあります。顔はインスマス顔とかいうレベルではないです。
チック。
地球に残った文明人類の成れの果て。バイオテクノロジーで次から次へと肉体を継ぎ足していき、融合した肉の塊となっています。RPGに割と実在しそうなモンスターとなっています。
共生者とキャリアー。
もふもふした巨大ヒババンゴ、キャリアーは、共生者という中途半端に知性を取り戻した猿型人類に乗りこなされることによって生活の糧を得ています。
これはいずれ更に巨大化するホストと、それに寄生するだけのダニみたいにへばりついているパラサイトへと進化します。ホストもパラサイトも人類の子孫です。
この画像はおそらくマッシュルームとかを吸うと見れる光景のやつです。
アリのように進化した新社会性のソシアル。
狼の群れのようになったハイバー。
トビネズミのようになった砂漠のランナー。
アリクイみたいになったアントマン。
巨大肉食獣であるスパイクマン。
巨大草食獣であるスロースマン。
人類以外の動物がいなくなったので、退化した人類から各生態系のニッチに合わせた生物へと再度進化したという感じなのですね。
収斂進化により同じニッチに適応した生物は種族が違っていても姿形や機能が似てきます。
水中人間は地上に再進出してきますが、これはもう水木しげるの鬼太郎シリーズに出てきそうな面構えになっています。地上の人間とは食べたり食べられたりの関係です。
最後に、宇宙から文明化した人類が帰還しました。
文明人類にとって地球は資源としての価値しかなかったらしく、ホストは改造されてタンパク源を生産するための食料生産人間に、あるいは使えそうな人類は脳コントロールされる騎乗馬にされたり、あるいはマイクロチップを修理するためのマイクロ人間に魔改造されたりします。
家畜人ヤプーよりもバリエーションが豊富です。
わざわざ機械ではなく野生人類を魔改造して使う辺りにこだわりを感じますね。さすがは人類の子孫。
地球を改めて破壊しつくした帰還人類は、ふたたび地球を捨てて、また別の星を探しに行きます。
海底の熱水噴出孔に適応した海底人類を唯一の例外として。
まだいますけどこれくらいで。
お子さんにこういうのオススメしたら、怒られるでしょうか。
だがこれで興奮できるお子さんだったら、才能があるかも。間違いない!
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