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断絶への航海(著:JPホーガン:1992年)【モコア歴4年、読書紹介共和国が建国。国民がひとりしかおらず、その後の行く末を知るものはいない】

図書館で借りた本です。
80年代SFとしては、
今でも絶版にならずむしろ再販されている稀有の作品。

人類がはるか彼方の惑星に植民して、
そこで新しい文明を築くのですが。

平たく言うとリバタリアン(?)の思考実験をまんまSF小説にした感じ。
(ホーガンはいわゆるリベラルホークっぽいですが)

つまり、
人類の偏見や差別意識を完全に拭い去るには、
新しい新世代を、
まったく新しい環境で、
ゼロから育てなおすしかない。

という思考実験。

つまり植民第1世代は、第3次大戦前に移民したピュア世代で、
子ども時代はAIに育てられた純粋な世代です。

そして後から、頭の固い冷戦思考の移民第2世代がやってくる。

時あたかも第4次世界大戦前夜。
地球では冷戦かまびすしく(中国VSアメリカ)
第2世代の移民団は、敵国に先駆けて新世界を我が物にせんとするアメリカの野心を代表してやってきます。
それでニューフェニックスとかいう合衆国の飛び地領土を建国するのですが。

第1世代は冷ややかな感じでそれを視ています。
彼らにとっては地球での敵対関係など眼中になく、
中国系とアメリカ系が特に敵対するでもなく、
その星の「ケイロン人」としてやっております。

「ケイロン人」である移民第1世代と
「アメリカ人」である移民第2世代との確執を描く作品。
テーマが・・・

作中では大戦の惨禍から不死鳥のように復活した例として、
第1次大戦のドイツ、
第2次大戦のロシア、
第3次大戦のアメリカ、
と書いてあるので、第3次大戦では核戦争まで行き、
そこからアメリカが大復活して覇権の座を死守、
20年後に新たな挑戦者を迎え、
着々と次の大戦の準備をしているという描写があります。

これが第2世代の価値観なんですね。

とはいえ第2世代の方も、がりごりの冷戦思考の持ち主もいれば、
ケイロン人の文化に憧れる人たちもいたり、
むしろそちらの対立の方が激しく。

***

技術に裏打ちされた架空の世界史。
として私は感じました。
世界史好きには美味しかったです。

価値観の相違や、歴史年表的なイベントなどを、
まずは丁寧に作っている感じで、
SFでここまで事前準備をやって歴史を作っている例は珍しかったので、
(銀英伝とかは極端な例外)

2020年。人類播種船出発。
2021年。第3次大戦。米ソ衝突。
2040年。ケイロン発見が報告される。
2080年。新アメリカのメイフラワー2世号、ケイロン到着。

ほら、ちゃんと年表まであるんですよ。わかりやすい。
田中芳樹以前にこんなの見たことない。
(厳密に言うと田中芳樹先生の方が古いのですが)

というSF歴史小説でした!
楽しい!
長々と続かないのもいい!
当然の一冊完結。
しかも絶版になってない。

たーのしーいーっ

それにしても、やっぱり2020年ごろにドンパチあるな、
ってのが昔の人にも推測できたんですね。
なんともはや。

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