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日記・手元にあるだけで嬉しくなる

6月13日(木)

頭木弘樹さんの『口の立つやつが勝つってことでいいのか』を読む。

「ありがとう」を伝える。それはとても大事なことだから、自分の子どもたちにも「ありがとう」を言うようにと、日ごろから口うるさく言い続けてきた。しかし感謝を伝えることも、行き過ぎれば苦痛になる、といった話が本にあってなるほどと思った。

誰かが困っていたら親切にする。そこまではいいんだけど、親切にしたことにたいして見返り(感謝)を求めてしまうとおかしくなる。相手が自分の思う反応をするとは限らない。感謝の表現は人それぞれだから。

自分が思う反応を相手がしなかった場合、「感謝が足りない」という思いが生まれ、相手に腹が立ってしまうと本に書いてあった。まったくその通り。私自身も思い当たることがありすぎてぐうの音も出なかった。


よかれと思ってしたことであっても、見返りを「当然のこと」として求めてしまう。そうすると、世の中には求められた「感謝」が必要になり、求められた「感謝」を表現しなければ叩かれてしまうという、なんとも生きにくい状況が発生している。

そういった「感謝」が蔓延していない場所があるらしい。それは宮古島なんだとか。困っている人には手助けする、困っていたら助けてもらう、それが「当たり前」だと思っている人が多いらしく、過度なお礼をする必要はなし。

困っている人は助ける、自分が困っていたら助けてもらう、ただそれだけ。「感謝」の見返りはいらないのだ。そのシンプルさにめちゃくちゃ心惹かれた。親切も感謝も、シンプルでいいんだよ、本当はね。


『口の立つやつが勝つってことでいいのか』は、頭木さんの視点が面白くて、読み進めながら色んなことを考えていた。自分が「当たり前」と思っていることに、頭木さんが「それって本当に当たり前かな?」と疑問を投げてくる。頭木さんの「それって当たり前?本当に??」を読みながら、自分の凝り固まった思考がどんどんほぐれていくのを感じた。本を読みながらとても面白い体験をしたな、と思っている。読めてよかった。





6月14日(金)

結婚した当初は料理をするのに「○○の素」を使うことが多かった。クックドゥとか、うちのごはんとか。それらを使うほうが味がピタッと決まるし、失敗がないから安心できた。

しかし今では「○○の素」を使うことがなくなった。レシピ本を見て味付けするようになったからなんだけど、何年も前に「素を使うのは主婦の怠慢」という発言を耳にしたおかげで、素を使いにくくなってしまったのだ。

ある種の意地のようなもので「○○の素」を使わなくなって十数年経過している今日、夫が急に

「素を使うのと、レシピ本を見て味付けするのは一緒じゃない?」

と言いだしたのでビックリした。

「レシピ本は誰かが考えた配合でしょ? だったら素を使うのも一緒じゃない?企業が考えた味を使ってるってことだし」

と言うので、あぁ、言われてみると確かにそうかも・・と思った。

夫曰く、レシピ本を眺めながら必死に料理する私を見て、そんなにがんばらなくても「○○の素」を使うほうが簡単じゃないだろうか、無理しなくていいんだよ、という優しさを表現した発言だったらしい。

素を使ったから簡単というのは少し違う気もしたけれど、「ラクできるところはどんどんラクしていこう」という夫の気持ちはよくわかったので、これからは夫が料理担当になればいいのではないかと提案し、即却下された。納得がいかない。




6月15日(土)

村井理子さんの『ある翻訳家の取り憑かれた日常』を読んでいる。村井さんの本はどれもこれも本当に面白くて大好きなんだけど、日記本が発売されているなんて知らなかったので、本屋さんでこの本を見つけたとき、驚きと嬉しさで思わず「うぇ??へ???」みたいな変な声が出てしまった。その声に、近くにいた妙齢の女性が驚き、私から即座に離れようとする姿勢がいまでも忘れられない(めっちゃ足早に去っていった。驚かせてすみませんでした)。

村井さんは私の中でエッセイを書く人なんだけど、この日記を読むと翻訳ばかりされていて、そうだった!村井さんは翻訳家さんだった!!と改めて思い知った。そして村井さんはいったいどれだけ仕事をするんだ????と思うぐらい、毎日ずっと翻訳していてビックリする。

双子を育てながら、義父母の介護もしながら、そして家事もしながら、毎日翻訳している村井さん。村井さんにとって翻訳するのは仕事なんだけど、面白くてたまらないから翻訳してしまう、という状況も日記には書かれていて、それがとてもよかった。


日記本としてめちゃくちゃよくて、こんな風に日記が書きたい!!!と憧れる一冊だった。やっぱり日記は素晴らしいね。そして村井さんの文章もやっぱり面白いので、購入して本当によかったと思う。手元にあるだけで嬉しくなる本だ。



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