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小説 本好きゆめの冒険譚 第二十七頁

 結局、雨はやまなかったので「ずぶ濡れ」になって家に帰るとママが慌ててタオルを持ってくる。

 お風呂に初めてひとりで入る。
 お風呂ってこんなに広かったんだ…。

 シャワーを浴びながら、さっきまでの事を考えてた。

 何で話さなかったんだろう・・・
 せっかくのチャンスだったのに・・・

 何で「好き」って、言えなかったんだろう・・・
 私にもっと、勇気があれば良かったのに・・・

 泣きそうになったけど、我慢した。
 この事は、誰にも言わない私だけの秘密。

 お風呂から上がると、パパが帰っていた。
 パパに抱きつき、一生懸命に甘える。
 パパは私の頭を撫でながら、ひとりでお風呂に入った事を褒めてくれたけど、私はこれからもパパと一緒に入りたいと願った。

 今夜の夕飯も朝に続いて中華シリーズと言う事で「四川風麻婆豆腐」をメインに、イカの湯引き、青梗菜と牛肉の炒め物、五目炒飯、たまごスープ。

 いつもの様に、皆で笑いながら食べるけど、私は少し切なくて、あまり食が進まない。

「どうしたの?美味しくない?」ママが聞いてくるので「ううん、美味しいよ。ママのごはんはいつも美味しい!」
 でも今日のごはんは、いつもより少ししょっぱい・・・。

 パパにせがんでもう一度一緒にお風呂に入る。
 しょんぼりしている私に向かって、「どうした?」とパパが心配してくれるので、本当の事を言いそうになったけど、「なんでもないよ。パパ、大好き。」パパは嬉しそうに、久しぶりに体を洗ってくれた。

 お風呂から上がり、ママが入れてくれた冷たいミルクを飲む。
 器に映るのは私の顔のはずなんだけど、今日の雨の出来事を自然と思い出しては、カップに口をやる。

 パパが「今日のゆめ、なんだか辛そうだね。」と言うと「女の子には、色々あるものよ。」とママが微笑えんだ。

 いつもの様に部屋に入ると、机の上に「御伽噺」の本があった。

 パラパラとページを捲ってみるけど、
 今は読む気になれない。

 はぁ~っと漏れる、ため息が切ない・・・。

 このまま、眠ってしまおう…。


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