小説 本好きゆめの冒険譚 第三十七頁
お腹が焼き芋ではち切れんばかりになっているが、
ここは、「何も無い空間」。
本も一緒に持って来ました!
ゼウスさんが、「おぉ、ゆ…」
「ゆめちゃーん!」
私に全力タックルで愛情表現をするヘーラーさんが、ゼウスさんの前を横切る。
「こっ、こんにちは!」
「いらっしゃい、ゆめちゃん♡」
ヘーラーさんは、ご機嫌である。ん?
「ヘーラーさん、その格好は…?」
いつもの絹で編んだ、ちょっとセクシーなドレスではなく、麦わら帽子に作業服のような、出立である。
「あぁ、これ?これはね〜ぇ」
ジャーンと、焼き芋を出してきましたよ!この女神様!
「あの、この空間は何もないはずなんじゃあ…」
「そんなの、このエロジジイにかかれば、チョチョイのチョイよ♡」
「本当は干渉してはいかんのだ!いかんのだが、聞かなくってな〜、仕方なしに創造してみたんじゃよ。」
ヘーラーさんが、美味しそうに焼き芋を、頰張ってるこんなシーン、他の人間では絶対に見れないのだが…
「ん?食べる?」
と焼き芋を差し出してくるので、そこは不干渉といたします。
「あ、あの、ゼウスさん、後でいいので聞きたい事があるんですけど…」
「おっ、わかった。では後での!」
ゼウスさんも、口いっぱいに、焼き芋を楽しまれていました。
「まだまだ焼くわよ~」
ヘーラーさんが腕まくりをしながら、サツマイモを火の中にポイッと放り込む。
「あの、ヘーラーさん。イモはアルミホイルで包んでから焼いた方が美味しく出来ますよ。」
「アルミホイル?」
「はい。」
「ジジイ!アルミホイル出して!」
「わかった!ほれ!」と空中にアルミホイルが浮かび上がる。
「それと、バターがあれば、もっと美味しいですよ!」
・・・バターが出てきました。