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映画めも。

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観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
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#おすすめ名作映画

【映画】事の次第 The state of things/ヴィム・ヴェンダース

【映画】事の次第 The state of things/ヴィム・ヴェンダース

タイトル:事の次第 The state of things 1982年
監督:ヴィム・ヴェンダース

さすがフォトグラファーとしての実力もあるヴェンダースだけに、風景の切り取り方が上手い。一見廃墟のような海辺のホテル。プールは波に晒されて海水が溜まり、淵は穴が空いている。終末を描いたチープなSF(弁護士役で出てきたロジャー・コーマンが助言した)の映画内映画の舞台として、フィルムが尽きた映画クルーの

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【本】はなればなれに Fools’ Gold/ドロレス・ヒッチェンス

【本】はなればなれに Fools’ Gold/ドロレス・ヒッチェンス

昨年翻訳が出版された「気狂いピエロ」の原作に続いて「はなればなれ」の原作も出版された。映画のイメージといえば、3人で踊るマジソンダンスや、ルーブル美術館を走り抜けるシーンの印象が強く、物語はB級なクライムコメディくらいの受け取られ方だったと思う。コミカルにドタバタと3人が場当たり的な犯罪を企むくらいの印象しかなく、物語よりもルグランの音楽を含んだ雰囲気の方がイメージとしては強い。
その一方で、原作

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【映画】一晩中 Toute une nuit/シャンタル・アケルマン

【映画】一晩中 Toute une nuit/シャンタル・アケルマン

タイトル:一晩中 Toute une nuit 1982年
監督:シャンタル・アケルマン

1976年の「家からの手紙」の描き方も凄かったけれど、こちらはさらにメタな表現が炸裂している。細切れに男女(中には同性も)の出会いと別れのシーンが次々と映し出される。というかほぼそれだけを撮影したものを数珠繋ぎで合わせている。一軒家やアパルトマン、バーやカフェといった場所の軒先で出会い、ある時はリビングやベ

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【映画】ゴールデン・エイティーズ Golden Eighties/シャンタル・アケルマン

【映画】ゴールデン・エイティーズ Golden Eighties/シャンタル・アケルマン

タイトル:ゴールデン・エイティーズ Golden Eighties 1986年
監督:シャンタル・アケルマン

冒頭からアケルマンらしい固定されたカメラアングルの中で、ハイヒールを履いた女性たちの脚だけが画面に映り、右から、左から忙しなく行き交う。狂騒じみて騒がしい雰囲気が常に溢れていて、落ち着く暇もない。アケルマンは「ジャンヌ・ディエルマン」の焼き直しを求められていたらしいが、当然そんなことをす

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【映画】家からの手紙 News from home/シャンタル・アケルマン

【映画】家からの手紙 News from home/シャンタル・アケルマン

タイトル:家からの手紙 News from home 1976年
監督:シャンタル・アケルマン

観終わった直後に沸き起こった感情が孤独だった。孤独と言っても人によってはネガティブなイメージしかないかもしれない。でもひとりで街をぷらっと歩いている時の感覚と同じ様に、そこにいる人とコミットするわけでもなく、ただ日がな一日目的があってもなくてもほっつき歩く、そんは感覚に近い。どこかの店に入って店員やそ

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【映画】最近観た映画2023年3月

3月はジョナス・メカスのボックスをひたすら鑑賞。前から観たいと思っていながら、中々タイミングが合わず未見だった諸作を、立て続けに観ることが出来た。メカスの映画は作品単独で成り立つというよりも、連作として捉えた方が全体像が掴みやすい。というのもそもそも共通したテーマの下に連作で発表しようとしたのだけれど、それが叶わず単独で作られた経緯があったみたい。「ウォールデン」はアヴァンギャルドな要素が強いけど

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【映画】2022年公開映画で鑑賞したものメモ

【映画】2022年公開映画で鑑賞したものメモ

去年はやっぱりケリー・ライカートやバーバラ・ローデン、シャンタル・アケルマンら女性監督の特集がかなりのトピックだったと思う。特にバーバラ・ローデンの「ワンダ」は、シャンタル・アケルマンの「私、あなた、彼、彼女」や「ジャンヌ・ディエルマン」ケリー・ライカートの「リバー・オブ・グラス」に連なる作品であり、これら全てが近い時期に公開されたのも昨今の社会的なテーマとも繋がってくる。数年前に公開されたクロエ

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【映画】ザ・スクエア 思いやりの聖域 The Square/リューベン・オストルンド

【映画】ザ・スクエア 思いやりの聖域 The Square/リューベン・オストルンド

タイトル:ザ・スクエア 思いやりの聖域 The Square 2018年
監督:リューベン・オストルンド

事故や事件に巻き込まれる時は、得てして予想もなく唐突に来るもので大体面食らう。突然被害者になった時、途方に暮れながらもなんとか解決策を考える。オストルンドの映画が面白いのは、被害者が加害者に転じた時にサムゼロになるかというとそうではなく、新たな問題が山積していくだけという皮肉が全編に施されて

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【映画】フレンチアルプスで起きたこと Force Majeure/リューベン・オストルンド

【映画】フレンチアルプスで起きたこと Force Majeure/リューベン・オストルンド

タイトル:フレンチアルプスで起きたこと Force Majeure 2014年
監督:ルーベン・オストルンド

人間関係に亀裂が入った時、亀裂が元に戻る事は無い。不可逆的な状態のまま人生が進んでいく事は誰しも経験している事だと思う。特に夫婦や家族の繋がりは他人とは違って守るべき存在であるために、致命的な亀裂が入ってしまうと修復はより困難になる。友人や知人であれば、関係はそこまでで断たれるだけで終わ

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【映画】ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ Je taime moi non plus/セルジュ・ゲンズブール

【映画】ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ Je taime moi non plus/セルジュ・ゲンズブール

タイトル:ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ Je taime moi non plus 1976年
監督:セルジュ・ゲンズブール

ゲンズブール初監督作品であり彼の代表作のひとつでもあるのだけれど、ゲンズブールという作家性を差し引いて観る事が出来るかというとちょっと難しい気がする。要するにゲンズブールの描く馬鹿げた卑猥さの奥に隠れるセンチメンタリズムや、ニヒリズムを知っているかどうかという事である

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【映画】セリーヌとジュリーは船でゆく Céline et Julie vont en bateau: Phantom Ladies Over Paris/ジャック・リヴェット

【映画】セリーヌとジュリーは船でゆく Céline et Julie vont en bateau: Phantom Ladies Over Paris/ジャック・リヴェット

タイトル:セリーヌとジュリーは船でゆく Céline et Julie vont en bateau: Phantom Ladies Over Paris 1974年
監督:ジャック・リヴェット

なんとも不思議な不条理コメディかつファンタジーでミステリー。掴みどころがあるような、ないようなそんな映画だった。不思議の国のアリスのウサギさながら、サングラスやスカーフを落として走り去っていくセリーヌを

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