【感想】不時着する流星たち (角川文庫)小川洋子(著)/ 短編集作成のヒントになるのかもしれない
短編集はタイトル以外の短編を読後に忘れがち。
P.K.ディック短編集のnote記事は、自身の備忘用。
投稿済み小川洋子作品の感想はこちら。
この本に収められた短編、それぞれの特徴を備忘として残しておきたい。
本のタイトル「不時着する流星たち」の短編はない。
第一話 誘拐の女王
血の通わない姉の誘拐物語。
第二話 散歩同盟会長への手紙
囲いの中で散歩をしながら出さない手紙を考える。
第三話 カタツムリの結婚式
空港でカタツムリが結ばれる。
第四話 臨時実験補助員
「放置手紙調査方法」仕事の相方は母乳ババロアの先生。
第五話 測量
この短編は由来(Glenn Herbert Gould)との関係が分からなかった。
グレン・グールドを聴けば分かるのかもしれない。
第六話 手違い
お見送り幼女を撮ったシッターは、Vivian Maier の面影。
どれも素晴らしいモノクロ写真。
第七話 肉詰めピーマンとマットレス
スペインで肉詰めピーマンを食べたくなる。
バルセロナオリンピックは1992年開催。
第八話 若草クラブ
エリザベス・テイラーに憧れる痛い子。
第九話 さあ、いい子だ、おいで
文鳥の世話をしない夫婦の妻はベビーカーを奪う。
第十話 十三人きょうだい
13番目の「サー叔父さん」は永久欠番。
植物学者牧野富太郎が命名した「スエコザサ」は亡夫の名前。
解説 鴻巣 友季子
読後に感じた思いを分かりやすく表現している。
感想
短編それぞれのモチーフは、短編の最後に足されている。
それは著者が物語を着想する題材で、小説を書く人には参考になるがハードルは高い。
著者が過去の作品からどのようなインスピレーションを得て、短編に仕立て上げたのかを想像してみるのも面白い。
並の創造力(想像力)では思いつかない幻想的な物語の数々。
Amazonのレビューはあまり芳しくないようだ。
(Amazonレビューは作品毎に差がありすぎるので仕方ないが…)
『博士の愛した数式』(含む映画)が好きで、この本を手にした方のレビューが良くないのは「期待していた何か」が違ったのであろう。
この短編集、著者らしい作品集だと思う。
全体的にトーンは抑えめで読んでいて落ち着かない描写が続き、それらは緻密に作られたエンディングへと向かう。
ネタ元を短編の終わりに掲載するのは、疑問に思ったままの読者へのサービス。
短編集全体の感想は、鴻巣友季子氏の解説が的確なので少し引用する。
どの短編も情景(情況)描写が豊か。
短い文章で、読者を物語の世界へ引き摺り込む。
MOH