Philip K. Dick::アジャストメント ディック短篇傑作選【Memorandum, Reading impressions】
フィリップ・K・ディックの短編集。
読書感想文というより、どちらかと言えば読書記録。
「アジャストメント」 Adjustment Team
犬に召喚係をさせてはダメ
「ルーグ」 Roog
真実は吠える番犬しか知らない
「ウーブ身重く横たわる」 Beyond Lies the Wub
ウーブが憑依するのを知らないのは…
「にせもの」 Impostor
偽物はニセモノにも分からない
「くずれてしまえ」 Pay for the Printer
『創作とコピーは、まったくべつべつのものなんだよ』
文中のこの言葉が意味深い
「消耗員」 Expendable
小さな生き物の世界大戦
人間なんて…
「おお! ブローベルとなりて」 Oh, To Be a Blobel!
異星人同士の結婚はすれ違い
「ぶざまなオルフェウス」 Orpheus with Clay Feet
未来から霊感を与えるのは難しい!?
「父祖の信仰」 Faith of Our Fathers
党主席は全知全能のスライム
「電気蟻」 The Electric Ant
有機ロボットが切断した世界の行方は…
「凍った旅」 Frozen Journey(I Hope I Shall Arrive Soon)
不完全な冷凍冬眠旅行者が過去のトラウマに…
「さよなら、ヴィンセント」 Goodbye, Vincent
バービー人形が廃れば、リンダ人形?
「人間とアンドロイドと機械」 Man, Android and Machine
これはディックが真面目に書いたエッセイ。
古代哲学を始めとする多様な引用(含む自分の作品)を用いて、世界の見方を述べているように読める(内容はやや混沌としているように感じられる)。
編集あとがき(編者:大森望)
「あとがき」というより、ディックの詳しい解説。
気合いが入っている。
雑感
この記事、タイムスタンプを見ると書き始めたのは2022年。
この年の春から夏にかけてSFに浸りきり(映画・読書・執筆)その後、反動が出たようだ。
久しぶりに読んでみると、ディックが書いた小説は「SFの皮を被ったシニカルな社会派小説」と、思えなくもない。
物語の中では、常に登場人物の葛藤がある。
読者がそれだけを読んでも面白くないので、話のオチをSFに託してオブラートに包んだと読み取れなくもない。
予想外のプロットと、それをSFとして巧みに表現できるチカラがあればこそ形になる小説。
いつか、そんな短編が書ければな、とは思う
MOH