社畜時代の職場で実際にあった怪談
10年近く前の話だ。
わたしがうつ症状での1回目の休職を経て、工場で勤務している時だった。直属の上司から「ここ実はいろいろあってなあ、、、」と、話を聞く機会があった。当時の直属の上司視点で語らせてもらいたい。
話を聞いたのが10年前、それから遡ることその上司が入社時なので、さらに10年前、つまり20年前の話だ。
その工場は、罵声の飛び交う昔ながらのゴリゴリの体育会系の職場だった。見て覚えろが当たり前の環境でも、上司はテキパキと仕事をこなしていたようだった。
ある時、上司は、電動のフォークリフトを製品の倉庫内を運転していた。時刻は深夜2時。屋根しかない倉庫で、ほぼ外のようなもの。明かりはフォークリフトのライトだけだ。すると、突然フォークリフトの「ファーン」という電動音が徐々に小さくなり、フォークリフトが止まってしまった。
「え!?なんで!?バッテリーは半分以上あったはず、、、」
キーを回し直しても反応がない。フォークリフトが動かないのであれば、運搬業務は続けることは出来ない。班長に報告せねばならない。しかし、この班長は鬼のように怖い。いわゆるオラオラ系の俺が法律だと本気で言いそうな人だった。
「きっとバッテリーのチェックが出来ていなかったとかで怒鳴られるに違いない」
当時の上司はそう思ったそうだ。走って現場に戻り、班長を探し、報告。
「あ、あのM班長!フォークリフトが突然製品倉庫で止まってしまって、、バッテリーはまだまだあったはずなんですが、、、」
「ん?ああ、、、、うん、わかった。仕方ねえな」
「え?は、、はい、、、」
当時の上司は、なぜ班長が怒らなかったのか、とても疑問に思ったそうだ。その疑問は朝になって解消されることになる。
日が昇り、時刻は朝6時。ラインもいくつか止まり、業務が落ち着いてきた。当時の上司はフォークリフトの様子を見に行った。すると、、、
「ファーン、、、」
フォークリフトは稼働していた。
「なんで??」
現場にフォークリフトを運転し戻り、班長に事の顛末を報告した。
「やっぱりか」
「え?どういうことですか?」
「お前、いたずらされたんやわ」
「え?」
「あそこ出るでな」
班長が言うには、そこの製品倉庫が出来てから、いろいろと妙なことが起こっていたそうだ。
こんなことがあったらしい。
「真冬の朝3時に半袖短パンで工場内を走り回っている小学生の男の子を見た」とか。
「誰もいない倉庫の向かいにあるラインが稼働していた」とか。
他にもいろいろとあったらしいが、わたしは聞いていない。
これは、わたしが工場に配属される3年前の話。先輩から聞いた話。
わたしが働いていた工場は、一番大きな量産工場、元繊維製品を作っていた製品倉庫、そしてフォークリフトの怪談で挙げた製品倉庫の3つで構成されている。次の話は、元繊維工場の製品倉庫での出来事だ。
当時の先輩は、フォークリフトの運搬者だった。業務内容は、量産工場で作られた製品をライン作業者がパレットに乗せる。それをラップ巻き機で荷崩れしないように梱包し、各置き場に運ぶのだ。この仕事はかなり忙しい。10~30分くらいで1パレット出来てきて、ラインは9ラインもある。効率よくやれないと務まらない。そして一部の製品は、元繊維工場に運ぶ必要がある。入り口が建物の正反対にあるため、それなりに時間がかかる。この元繊維工場への運搬がほとんどの場合、フォークリフトの運搬者は2人必要になる。
当時の時刻は深夜2時。先輩は元繊維工場内でフォークリフトで製品を運んでいた。基本的に製品を運んでいる時、フォークリフトはバックで進まなければならない。製品で前が見えないためだ。倉庫内は製品で埋め尽くされており、今から運び入れる製品の置き場だけ、一列空いている。先輩は、その一列の一番奥にフォークリフトで製品を置くため、その一列の入り口でフォークリフトを切り返し、前向きになり進んでいった。そして、製品を置いて、ふと、視線を左の奥に移してしまった。
その視線の先には、元ボイラー室がある。そこは、ライトはあり、明るくはあるのだが、使用されなくなってから管理されておらず、瓦礫がごろごろと転がっている。そこだけ切り取ってみれば、廃墟そのものだろう。
そこを歩いていたのだ。
白いワンピースを着た女性が、長い黒髪と両腕を前にダラリと垂らしながら、ゆらりゆらりと。
見てしまった先輩は、高速でバックギアに切り替えにアクセルベタ踏みで量産工場に戻り、、、
「K班長!!無理!!」
それでも、他に運搬者の代わりはおらず、先輩はやらなければならなかった。
その時から、先輩は0時を回ってから朝6時半になるまで、元繊維工場に立ち入らなくなった。それまでに搬入しなければならない製品は、すべて元繊維工場の軒下に並べ、朝6時半からまとめて搬入するようになった。断っておくが、この先輩はとても真面目で責任感が強く、そんな嘘をつくためにそこまでのことはやらない人だ。実際に、その先輩が運搬担当の時を見たことがあるが、本当に軒下に製品が山のように仮置きしてあったのを見たときはゾッとしたものだ。ちなみにだが、この先輩はそういったものが見える体質ではなかったのだが、あの会社に就職してからいろいろと妙なものを目にするようになったようだ。
わたしが、最初に就職した会社で一番印象深かったお話を2つ紹介させていただきました。わたしの在籍中にはあまりそういったことはなかったように思います。ああいった会社でも、良くはなっていたんでしょうね。会社の在り方のようなものが。
では、また
皆さんの行き先に明るい未来がありますように
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