たまごの中(詩)
私は卵の中で生きている
暖かく濡れて皮膚で呼吸する
まどろみながら
ひたすらあなたを待つ
永遠に待っていると
突然あなたは入ってくる
私をさわる手を感じる
手は冷たく荒れてガサガサ
それだけが外の世界の情報
音楽が変わり
匂いが満ち急に熱くなる
私は直ぐに気を失い別の世界に舞い上がる
私の意識は既に脳裏にはない
遠くあなたの声と私の声が聞こえる
わたしを包んだ卵は
ぽんと宇宙に放り出されたよう
この上ない快楽の後
私は静かに漂いながら深海に沈んでゆく
幸福感が私を満たす
私はそっとあなたの手をとり
胸に寄せ感謝と幸せを伝える
漆黒の中、体は温まりそのまま眠りにつく
やがて闇が薄くなり
ゆっくりと目覚める
寝顔を確かめ
私は残りの営みを静かに始める
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