『名画の中で働く人々―「仕事」で学ぶ西洋史』by 中野京子
中野京子さんの本を読むのは、もう25冊目だけど、ほとんど外れなし。
いい加減ネタ切れなんじゃないのか、「仕事」を切り口に名画についてなんか書けるんだろうか?なんて思ったけど、さすが引き出しが豊富だ。
「仕事」といってもバラエティに富んでいる。
闘牛士、侍女、香具師(やし)、宮廷音楽家、羊飼い、女性科学者、道化、警官、思想家、ファッション・デザイナー、大工、看護婦、政治家、修道女、船頭、異端審問官、傭兵、女優、子供も働く、天使も働く。
名画とともに、いろいろと面白い、ためになるエピソードが満載。
以下、自分の興味に応じてメモしたものを、そのまま貼り付けておくことにする。
侍女:
・ 素敵!
・18世紀のイギリスのアン王女に仕えた女優サラ・チャーチル(ウィンストン・チャーチルとダイアナ妃の御先祖)は、女王を精神的に支配。王室女官最高位の衣装係に。
夫を初代マールバラ公爵にしてもらい、ブレナム宮殿建設費も賜る。
香具師(やし):
ペテン師や詐欺師のこと。
女性科学者:
<ヒュパティア> by チャールズ・ウィリアム・ミッチェル
あの、結末が怖い映画を思い出すなあ。
警官:
絵画の主役にはなりにくい。なるほど!
ファッション・デザイナー:
・<ハープを奏でるマリー・アントワネット> by アンドレ・ゴーティエ=ダゴティ
フランス史に登場するデザイナー、ローズ=ベルタン
・<夫人帽子店> by ドガ
大工:
イエスと結びつき、神聖化された職業
<大工ヨセフ>by ラ・トゥール
<大工の家(画家の家のキリスト)>by エヴァレット・ミレイ
政治家:
<トーマス・モア><トーマス・クロムウエル> by ハンス・ホルバイン
ヘンリー8世の時代の政治家は、難儀な職業
船頭:
<アルジャントゥイユ> by マネ
異端審問官:
・<ウィンチェスター枢機卿の尋問を受ける独房のジャンヌ・ダルク>by ポール・ドラローシュ
・表紙になっている作品
この本を読み始めた直後に、だいぶ前に録画してあったTV番組(「世界一受けたい授業」)を見たら、この作品が紹介されていてびっくり。
傭兵:
多数の都市国家に分かれ、下剋上だったルネッサンス期のイタリアは、有名な傭兵隊長の宝庫。
貧農の出から傭兵隊長を経て、ミラノ公国の君主にまで成り上がったフランチェスコ・スフォルツァや、貴族の庶子から傭兵隊長、やがてウルビーノ公国の君主になったフェデリーコ・ダ・モンテフェルトなど。
女優:
・<ハムレット> by ミュシャ
有名なサラ・ベルナールがモデル
・<マクベス夫人に扮したエレン・テリー> by ジョン・シンガー・サージェント
サラと並ぶ大女優
・<ミトロジアの心臓> by ミレイ
リリー・ラングドリーがモデル。リリーは、ヴィクトリア女王の皇太子(のちの7世)の寵姫だったとも。ホームズシリーズで登場するオペラ歌手アイリーン・アドラーという悪女は、リリーがモデルだとも。
天使:
・天使にも階級がある。悪い天使もいる。
・<ソドムの天使> by モロー
・7人の大天使 ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル、セラフィル、イェディエル、パラキエル
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