シェイクスピア全集(松岡和子訳)⑩ ヴェニスの商人
シェイクスピア全集を読もう!シリーズ第2弾。
『シェイクスピア全集10 ヴェニスの商人』
これは、とても有名な話なので、どうしようか迷ったが、ちゃんと通して読んだことはないので読んでみることにしてよかった。
シャイロックと、金を借りたアントーニオ、友人のパサーニオとパサーニオがあこがれる女性ポーシャ。
この4人の役割は記憶にあったが、それ以外に、アントーニオとパサーニオの友人が何人も、ポーシャの求婚者が何人も、シャイロックにも娘がいた!彼らの召使たちもいるし、カップルになりそうな組み合わせが何組も、と登場人物の多さにちょっとびっくり。
金貸しの「シャイロック」が「ユダヤ人」であるというだけで、悪者として扱われるのは、人種差別的だといった解説をどこかで読んだ記憶があるので、その辺に特に注目して読んでみた。
当時の社会では、「利息」をとるということ自体が、キリスト教的には良くない行いだと思われていたことに注意しなければならない。だから、金貸しはキリスト教徒ではない、ユダヤ人の仕事だったわけである。
ただ、少なくともヴェニスでは、法律的に利息を取ることを禁止されていたわけではない。
シャイロックが、普段どれだけ高利で貸したり、厳しい取り立てをしていたかは知る由もないが、しかし、遊んで借りた金をほとんど踏み倒すような真似を友人にさせるアントーニオを、普段から憎んでいたシャイロックの怒りもわからなくはない。
いかにも名裁きをしたように見える裁判官(これも偽物)だが、シャイロックをあきらめさせるところまではともかく、そのあとの追い打ちのかけ方が、ユダヤ人差別以外の何物でもない、と思った。
誰も命を奪われないし、セリフなどはユーモアや詩的要素にあふれているが、喜劇、ハッピーエンドと片付けていいものか。
美しくて、お金持ち、おまけに頭もいい?ポーシャ。
求婚者の選び方を見れば、彼女こそ、一番の人種差別主義者だとも言えそうだ。
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