【読書感想文】 読書感想文用の本に迷える小・中学生におすすめ 『しずかな日々』
夏休みがない生活をかれこれ10年以上続けています。
うだるどころか焼かれるような暑さの中を歩くのは嫌ですが、この生活にすっかり慣れてしまったので、夏休みが無いことに不都合や理不尽さなどは感じていません。
思えば、学生の頃の夏休みはやる気があるのは最初だけで、あとは冷房を効かせた部屋で高校野球を観ながらアイスを食べて、スイカを食べて、音楽を聴いて、下手な歌を歌って過ごしていました。
そして、ゴロゴロと寝転がり、飼っていたうさぎくんに踏んづけられるという怠惰な日々としてあっさり過ぎ去っていきました。
今、もし夏休みがあったならば南仏プロヴァンスでバカンス…と言いたいところですが、このご時世の状況を抜きにしても、スーパーマーケットで値引きシールが貼られたお惣菜を見比べて迷うような庶民の私には未だ夢のまた夢の場所なので、結局は学生の頃と同じく怠惰な日々を過ごすことでしょう。
ただあの頃と違うところがあるとすれば、私を容赦なく踏みつけたうさぎくんがこの世に居ないことくらいかもしれません。
読書感想文用の本に迷える小・中学生に差し出したい
本日は、『しずかな日々』(椰月美智子 著)をご紹介します。
第45回野間児童文芸賞、第25回坪田譲治文学賞受賞作
母子家庭で育った小学5年生の少年が、母親から離れて祖父の家で過ごした、静かながらも輝いた尊い夏休みの日々を描いた物語。
小学校高学年向けで何か良い本はないかな、と思い探していた時に出逢った作品です。
もし、読書感想文用の本に迷っている小・中学生がいたら、等身大の自分の体験や想いを織り交ぜて書き綴れるだろうこの本を私はそっと差し出したいと思っています。
少年が自分の人生を生き抜く術を見つけた瞬間に立ち会えた
友達も居らず、存在すらも消しているようにしてずっと母親だけを頼りに生きていた内気な少年が、小学5年生で人生のターニングポイントを迎え、一気に視野も世界も広がり、たくましく成長していく姿に安堵感を覚えました。
ターニングポイントと言っても、この少年が過ごした日々は誰もが子どもの頃に経験したことがあるような、懐かしく、ありふれたものなのですが、それは大人になるための大切な経験だったのです。
しかし、もし自分の意思を持たず、少年が母親の人生に流され、従っていたなら、静かとはとても言えない全く違う人生になっていただろうと想像し、空恐ろしくなりました。
表面的には劇的なことなど何も起こっていないけれども、裏では劇的に事が動いていている。
この少年が、自分の人生を生き抜く術を見つけた瞬間に立ち会えたような気がして、心が震えました。
P.S.
私は小学生の頃、夏休みの宿題の読書感想文を書くのがとても苦手で、毎年散々なことになっていました。
なので、読書感想文コンクールで何度も入選したという友人に出逢った時は、羨ましいというより不思議でしょうがなかったです。
ちなみに、その友人は校則でアルバイトが禁止だった高校生の時、平然と「テレビ局の社外モニターに応募して採用された」と言ってお小遣い稼ぎをしていました。