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リサイクル・新生活準備

ベルリンでの新生活が始まってから早くも2週間が経過した。

タスマニアで暮らし始めた時の目まぐるしさと比較すると、かなりゆったりとしたテンポで日々が過ぎていっているような気がする。
というのも、私たちはビザの都合上まだ仕事を探し始めることが出来ず、大学の授業も今月末までは始まらないため、必然的に今自分たちが動ける要素である「生活」そのものにフォーカスを当てざるを得ないのである。

おかげさまで、「生活を整える」という観点で見ると、この2週間ではめざましい進歩があった。

私たちが今住んでいる部屋は、シェアアパートメントの一部屋にしてはかなり広く、自分たちだけで使える生活スペースが25平米ほどある。
ベッドや、勉強机と椅子1セット、クローゼットといった基本的な家具は最初から備わっていたものの、追加で家具を導入することでリビングスペースとしても充分に活用できそうなポテンシャルを秘めていた。

そこで、まず第一の課題として挙がったのは、家具探しである。特に、ベッド以外でくつろぐ場所を生み出すべく、ソファがあったら最高であるという見解が夫婦で一致していた。

早速最寄りのIKEAへ下見に行く。どうやらさすがのIKEAもソファ規模の家具となると安いものでも150ユーロぐらいはかかるらしい。

先述の通り、我々にはまだ収入源がないため、100ユーロ以上の買い物は慎重に稟議にかける必要がある。となれば次に考えるべきはプランB、中古品である。

ドイツがリサイクル大国である、というのは以前から何度か目にしていた情報であった。
要らなくなったものは、売るか、もしくは家の前に出しておく。そうすると、次に必要な人が現れて、取っていく。そうして、物を再利用する習慣が根付いているため、「捨てる」という選択肢は最終手段なのだという。

実際に街を歩いていても、本当に道端に家具が平然と置かれているので驚いた。そういう文化圏なので、当然ながら、フリマ系のアプリも充実している。

私がこの2週間ヘビーユーザーと化しているのは、「Kleinanzeigen」というアプリである。日本でいう「ジモティー」のようなもので、自分の近所で出されている中古品の広告を検索し、売り主と連絡を取って、任意の場所に出向いて実際に商品を確認した上で、その場でお金と交換する、というとてもシンプルなシステムで成り立っている。

このアプリを始めた当日、なんと30ユーロで売りに出ているソファを見つけてしまった。
しかもデザインが今の部屋に合いそうで、状態もかなり良いと来ている。

この機を逃すまい、と翻訳アプリを駆使してドイツ語でメッセージを送信したところ、早速「今日受け取りに来て良い」と返事があった。話が早くて大変助かる。

交通費節約と観光のため、徒歩45分の距離を歩いて指定された住所へと向かう。

「帰りはさすがに地下鉄乗らないとね〜」なんて軽口を叩いていた我々であったが、待ち合わせ場所のアパートの玄関に鎮座するソファを見て、思わず絶句することになる。

そのソファは、大人が余裕で横になれるぐらいの立派な大きさであった。

値段が値段ということもあり、せいぜい2人がギリギリ座れるぐらいのミニサイズかと思っていたがとんでもない。これだけ立派なソファを30ユーロで引き取れるのは買い手としても嬉しい限りなのだが、問題は持ち帰り方である。

売り主の夫婦も私たちが車か何かで来ているのを想定していたようで、片言のドイツ語で「電車で持って帰る」と伝えるとかなり心配してくれた。しかし、もう乗りかかった船、やり切るしかない。

2人でバカでかいソファを担いで地下鉄に乗り、エレベーターのないアパートの3階まで持ち帰った日のことは今後もきっと忘れないだろう。

人生で、このサイズの家具をそのまま担いで公共交通機関に乗ることがあろうとは想像していなかった。周りの人もビックリしていたし、私たち自身もビックリしていた。何よりソファ本人が一番ビックリしていたと思う。

地下鉄のホームに置かれたソファ。心なしか不安そう

ベルリン生活デビュー早々の珍道中となってしまったが、部屋に持ち帰ってさえしまえばもうこちらのものである。苦労の甲斐あって、かなり費用を抑えながらプライベートのリビングスペースを作り出すことができた。

安価で良い品を手に入れられることに味をしめた我々は、その後、同じフリマアプリで中古の自転車2台、炊飯器、ソファテーブルを次々と入手することになる。ちなみに、2つ目の勉強用椅子は道端に落ちているやつを拾ってきた。

エコ先進国と言われるドイツならではの新生活準備で、長期的に住みたいと思える住環境を整えることができたように思う。

巡り巡って自分たちの元へやってきたモノとのご縁を大切に、自分たちとしても、この場所でなんとか根を張っていけるよう頑張る所存である。

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