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今日の1冊 『日本の禍機』

『日本の禍機』

『世界に孤立し国運誤るなかれ』
『日本の禍機』は、1908年.
アメリカのエール大学で研究生活のほとんどを過ごした朝河貫一により、
日露戦争勝利に沸く祖国日本へ警鐘を鳴らすべく書かれたものです。

文中では、日本の満洲における外交を
「機会均等ではなく独占排他」
「領土保全ではなく主権抑圧」
と指摘し、
するどく厳しくあらゆる角度から批判しました。

第二次大戦の約30年前に、既に日中戦争や日米関係の破綻への危惧を募らせ、警告している朝河さんの慧眼には恐ろしさすら覚えると共に、なぜこの人があまり知られていないのか、疑問に思いました。

今僕は、この朝河貫一の生涯を記した伝記を読んでいます。

彼は東京専門学校(現早稲田大学)を卒業し、
アメリカのダートマス大学へ迎え入れられ、
その後エール大学に招かれ、日本人初のエール大学教授となった人物です。

アメリカではまだ分野として確立されていなった東アジア研究、東洋と西洋の歴史の比較にその研究生活の多くを費やしました。

『日本の禍機』以前に書いた『日露衝突』では日本とロシアの外交を論じ、アメリカでは注目を浴びました。

『日本の禍機』は坪内逍遥の助力により日本での出版が実現し、

伊藤博文や時の首相桂太郎、
当時の外務大臣や政務局長も読み、
主な新聞社や図書館にも寄贈されたと言います。

それなのに何故、惨事を防ぐことができなかったのか…。


僕が一番心に残った言葉が、

『一時の国利を重んずるあまり、永久の国富を論ずる人をすら非愛国者となすの傾きあり』

です。

目先の利益に飛びつき、長い目で物事を見ることのできる人を非国民と批難する傾向が、
当時の日本にはあったということですね。

この言葉は現在にも通じるもので、
読めば読むほどに、
「この人はまじで予言者やな…」と思いました。

読みやすい現代語訳版は出ておらず、
1908年当時の言葉なのでとても難解でしたが、現代に通じることが多く、読んだ甲斐がありました。

少し難解かもしれませんが、一読の価値はある1冊と思います。

小野トロ

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