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自分を知る【9】自分のためにキーボードを打つ。
私がタイピングを始めたのは、6歳の時だった。
実家には当時、ワープロがあった。
今の20代の方は知っているだろうか。
まだパソコンが無かった頃に、文字を入力するためのワードプロセッサーという機器があったことを。
なんで親が持っていたのか、そういえば知らなかったな。
私にとっては『当たり前に家にあるもの』だった。
ただ、思い起こしてみたら、いつ触り始めたのか、どうして私も打ちたいと思ったのか全く覚えていない。
気付いたら、自分の手でタイピングすることで文字が画面に打ち込まれていくのが、面白くて楽しくて仕方なかったんだ。
頭で考えていることが文字になっていく。
それも、子どもの字ではなくて、大人の字だ。
そうだ。ワープロの字は『大人の字』と感じたんだ。
6歳の私が書く字は、どうしたって丸っこくて、バランスの悪いこどもの字だった。
ワープロを通すと、まるで大人の仲間入りをしたような気持ちになれたんだ。
『キャンベル島の冒険』と題名をつけて、私は物語を打ち始めた。
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父はドラマ制作に携わる仕事をしていて、大学時代には劇団員だったという。
今ではNGなのだろうけれど、当時は台本を持って帰ってきてもよくて、私も時折目を通していた。
物語を書き始める前に、大まかなストーリーと、登場人物の役名と年齢と関係図を考える。台本には、役柄に細かい設定が書かれていることもあった。
私もそれを真似て考えてみた。
実際には存在しない人物たちが、空想の中ではまるで本当に存在しているかのように生きていて、動いている。生活をして、恋をしている。感情が動き、表情が変わり、時には涙がこぼれたり、ちょっとした仕草に心情が込められる。
本当はいないのに、本当にいる。
私の頭の中では、ちゃんと生きている。
この時間が、この感覚が、6歳の頃からたまらなく好きだった。
ワクワクして、手が止まらなかった。
私の空想なのに、登場人物が勝手にしゃべり出していく瞬間も、私の手なのに、どんどんと文字を打っていくと自分の手じゃないような感覚に陥る瞬間も、昔から大好きだった。
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母は毎晩、寝る前に絵本を読んでくれた。
夜の8時半になると、畳の部屋に布団を敷いて、電気のヒモを引いて灯りを1つ暗くし、私と弟が布団に入る。
そうすると母が、図書館で借りた絵本か紙芝居を読んでくれた。
物語は日本のものから外国のものまで様々で、短い話もあれば、2日に分けて読んでくれた本もあった。
どんな話が好きだったのか、誰の絵本が好きだったのかあまり覚えていないけれど、私が母親になって図書館の絵本コーナーに行った時に、見覚えのある絵本の多さに驚いた。
「あ!懐かしい~!!!」「わぁ!これって今も人気なんだね!」
つい、こどもよりも絵本コーナーではしゃいでしまったのを覚えている。
それくらい、母が私達にたくさんの絵本を、何度も何度も読んでくれたのだろう。
だからこそ、私自身も6歳ながらに、たくさんの物語が脳内に浮かんだのかもしれない。
こうして書きだしてみると、意外と『ワープロで物語を書くのが好きだった理由』が浮き彫りになってきたように思う。面白いね。
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小学生になると、友達の家でパソコンのタイピングゲームを体験させてもらった。それがきっかけで、タイピングの達人を目指すようになった。
『達人』というのは、ゲームの中の称号で、たくさんの対戦相手を倒していくともらえるものだった。
私は結局、小学5年生で『達人』になった。
その頃には、ワープロは使わなくなり、家にはノートパソコンが置かれていた。
放課後に友達と缶蹴りしたり、鬼ごっこしたり、習い事に行ったりもしていたけれど、家にいる時は隙あらばタイピングをしていた気がする。
すっかりブラインドタッチが出来るようになっていた。
さらに、ブラインドタッチで文字を打つことが、ストレス解消法にもなっていた。
実は30代の今でも、パソコンのキーボードでブラインドタッチをしている時間が、自分にとっての癒しと解放の時間となっている。
そんな私は現在、職場で毎日ブラインドタッチをしている。キーボードをバンバン打っている。
就職してすぐの頃はあまりパソコンを触らず、書類の整理や用意、ホチキスやのり、封筒、ハンコに触れている時間が長かった。
しかし、履歴書に書いていた「特技:文字入力 趣味:ラジオの文字起こし」の一文に目を止めてくれた上司が声を掛けてくれた。
「どうしてこの経歴で、文字入力が得意なんですか?」
「あぁ、こどもの頃からタイピングが好きだったんです。実は大学時代に、教授に頼まれて文字起こしをしていた経験もあって。それから、文字起こしが好きになりました。」
「そうなんですね!で、この、趣味の文字起こしって、なんですか?」
「あぁ…。私、推しのラジオを聴くと、つい文字に起こしたくなるんです。聴くだけじゃなくて、文章でも読みたくなるというか。そうやって、2度楽しんでいるんです。」
という、なんともマニアックな回答をしたにも関わらず、上司は面白がってくれたのだった。
「ラジオを文字起こしするってすごいですね!(笑)なかなか出来ないですよ!」
それ以来、上司からカンファレンスの文字起こしを頼んでもらえるようになった。最初に頼まれた時には、嬉しくて嬉しくて、思わず顔がにやけてしまった。
「えっ。みんな面倒くさがったり、嫌がる仕事なのに…。快く引き受けてもらえて助かります。」と感謝していただけた。
それ以来、私は毎日のように職場で文字起こしに取り掛かっている。
いやぁ~…嬉しい!!!自分の好きなことが仕事に繋がるなんて。
それで、喜んでもらえて、給料もいただけるなんて。ありがたいです。
好きなこと、得意なことを臆せず公言していると、こういうチャンスに恵まれることもあるんだなぁと体感した。
ただね、仕事は仕事。
というのも、最近は少し感じ始めている。
きちんと、正確に、迅速に仕上げることが目的であって、楽しむことは二の次になってしまうことも多い。
やっぱり私は、今こうして好きなことを好きなように、 思うがままに、流れるように、ダンダンと打っていく時間が、好きだ!!!!
大好きな人達の、大好きな声を聴きながら文字起こしする時間が、本当に本当に大好きなんだ!!!!
ってことも、実感した。
だからね、こうして「好きなように書いていいよ!!!」って、手と頭を解放してあげる時間が、とっても大切なのだと思う。
だってほら、今すっごく楽しいもん!!!!
手がイキイキしてるっ!!!!わぁぁああい!!!!
(笑)
自分のためにキーボードを打つ時間。
私にとっての至福の時間。癒しの時間。解放の時間。
大事だね。
満たされたぁ~!!!
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さて、あなたにとっての至福、癒し、解放の時間はそれぞれなんでしょう?
良かったら教えてくださいね☆彡