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最近読んだ本の話 vol.83

 「最近読んだ本の話」の第83弾です。朝晩冷え込む日が増えてきました。冬が近づいてきたなあ。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。

1、小砂川 チト『家庭用安心坑夫』

日本橋三越の柱に、幼いころ実家に貼ったシールがあるのを見つけたところから物語は始まる。狂気と現実世界が互いに浸食し合い、新人らしからぬ圧倒的筆致とスピード感で我々を思わぬところへ運んでいく。
誌上発表後、新聞各紙絶賛、話題沸騰の受賞作を緊急刊行!                                                                         

Amazonより引用

 主人公の小波が日本橋三越の大理石の柱に、自分の実家にある洋服ダンスに貼った覚えのあるケロケロケロッピのシールを見つけるところから物語は始まります。描写力が新人とは思えません。小波の日常が綴られていると思ったら、「ツトム」という人物が突如あらわれて、小波が幼い頃母親から教えられた父親だというのですが、坑夫のマネキンなのか?どうなっているんだ⁉と、真相が知りたくてどんどん読み進みました。誰も思い付かない想像をはるかに超える物語で、小波の行動と心理描写も圧巻でした。


2、くどう れいん『虎のたましい人魚の涙』

時が過ぎ、変わっていくもの、変わらないもの。
さりげない日常の場面や心情を切り取る言葉が、読む人の心に響く23のエッセイ。
「いまのわたしが、いまのわたしで、いまを書く。いまはこれから。」(本書より)

Amazonより引用

 この本を読んでいたら私ももっと書きたい、という気持ちがむくむく湧き上がってきて、何本かエッセイのような文を書きました。何か起こった時に、キートン山田さんのナレーションを頭の中で流すのいいなあ、と思って真似したいと思っていたのに、仕事中すっかり忘れてしまって帰って来てから思い出して残念でした。


3、ポール・フルネル『編集者とタブレット』

変わりゆく出版界。紙の本は消えるのか ?
紙に埋もれて生きてきた編集者デュボワの当惑、
そして軽やかで飄々とした彼の選択。
すべての読書人と出版人に捧げます。

編集者ロベール・デュボワが週末に原稿の束を抱えて帰ることはもうない。持ち帰るのは何本もの原稿の入ったタブレットのみだ。紙の本は消えてしまうのか? 読者は何を求めているのか? なじみのレストランでの、ワインと料理に舌鼓を打ちながらの著者との打合せも、もうなくなるのだ。今や、ワインよりビール、コーラとハンバーガーの若者たちが中心となり……彼らの提案の新鮮さに驚かされもする。おまけに行きつけの昔ながらのビストロはスシ・レストランに身売り! 紙に埋もれて生きてきた昔ながらの編集者デュボワが直面する時代の変化の嵐。当惑そして諦め……しかし軽やかに飄々とそれらを超越する彼。変わりつつある出版界と読書人たちに捧げる、小品でありながらも風格ある一冊。

Amazonより引用

 主人公の編集者・ロベール・デュボワは、ある日タブレットを渡され、読んでほしい原稿はすべてその中に入っていると告げられます。紙の原稿を読み続けてきたデュボワにとって、最初は慣れないですが、徐々にタブレットに親しみを持ち始めます。この出版社には研修生が何人も来ていて、その中の一人に持ち込みの原稿を読ませて、「きみが良かったと思うなら本にしよう」という軽い感じで作者に連絡を取らせて出版してしまったりします。他にも研修生たちに新しい出版社を作らせたりして、デュボワはいい加減なのかよく考えているのかわからない感じで、どんどん新しいことを人に任せてやり始めるのです。おいしそうな料理もたくさん出てきて楽しいです。最後に翻訳者のあとがきを読むと、この作品のあちこちに仕掛けがあると知らされます。全然気づかなかった!


 読みたい本リストがどんどん増えて継ぎ足して、わけがわからなくなっています。来年こそリストに書いた本を読みたい📚最後までお読みくださってありがとうございました。

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