記事一覧

【感想】君の夢はもう見ない(五條瑛)

鉱物シリーズに登場する『中華文化思想研究所』の所長 仲上孔兵が主人公の連作集です。 かつて、アメリカ国防総省の情報機関のひとつである<会社>のもとで、情報の世界に…

めあ
3年前

【感想】星条旗の憂鬱 情報分析官・葉山隆(五條瑛)

個人出版の「Analyst in the Box1」を改題、文庫化した、鉱物シリーズの連作集です。 「極東ジャーナル」に主人公 葉山隆を訪ねてきた神奈川県警外事課の警官が持ち込んだ…

めあ
3年前
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【感想】パーフェクト・クオーツ 碧き鮫(五條瑛)

2020年8月に出版された「パーフェクト・クオーツ 北の水晶」と対になる物語。 「北の水晶」はこれまで同様葉山隆の物語でしたが、「碧き鮫」の主人公は、隆さんの相棒であ…

めあ
3年前
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【感想】夢の中の魚(五條瑛)

鉱物シリーズで鮮烈な存在感を放つ洪敏成(ホン ミンソン)と、その相棒のパクの物語。 グイグイ物語を進める洪と、無口なパクが抱える過去の閉塞感が絡み合い、緩急の効い…

めあ
4年前
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【感想】パーフェクト・クオーツ 北の水晶(五條瑛)

待ちに待った、鉱物シリーズ続編の出版。 シリーズ1作目の「プラチナ・ビーズ」に出会ってからずっと、このシリーズが好きで、本編はもちろんスピンオフも大事に大事に読ん…

めあ
4年前
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【感想】ROMES シリーズ(五條瑛)

架空の洋上型国際空港「西日本国際空港(西空)」を舞台にした作品群です。 ROMES 06 ROMES 06 誘惑の女神 ROMES 06 まどろみの月桃 五條作品のなかで、現在も購入できる…

めあ
4年前
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【感想】スノウ・グッピー(五條瑛)

電子戦という世界を知った一冊。 情報を集めて学習する…今ならAIと呼ばれるものでしょうか。最新型の戦闘機搭載対空中戦用電子戦機器をめぐって展開される物語です。 (…

めあ
4年前
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【感想】赤い羊は肉を喰う(五條瑛)

小さなリサーチ会社「内田調査」の計数屋 内田偲が本作の主人公。 依頼されたことを調査し、数値として提供するのが仕事。 内田調査社長の内田雅弘(偲さんとは他人)曰く…

めあ
4年前
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【感想】3way Waltz(五條瑛)

米国、北朝鮮、日本の三つ巴。 鉱物シリーズおなじみのキャラクターが多数登場しますが、主人公が隆さんではないので、また雰囲気の違う作品になっています。 (以下、ネ…

めあ
4年前
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【感想】動物園で逢いましょう(五條瑛)

ちょっと本編を離れて。 本作は、いくつかの短編が書き下ろしで繋がれている連作集です。 短編はそれぞれ異なる事件を扱っているのですが、少しずつ共通する要素やテーマが…

めあ
4年前
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【感想】スパイは楽園に戯れる(五條瑛)

「鉱物シリーズ」の3冊目と言うべきか、スピンオフと言うべきか。小説推理に連載された「パーフェクト・クオーツ」を改題・加筆修正したものとのこと。 私は小説推理版を…

めあ
4年前
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【感想】スリー・アゲーツ(五條瑛)

家族の在り方を考えさせられる物語。「鉱物シリーズ」の2作目です。 北朝鮮の工作員チョンと、北朝鮮と日本のふたつの家族。 結末は決してやさしくはないけれど、チョンの…

めあ
4年前
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【感想】プラチナ・ビーズ(五條瑛)

五條瑛先生のデビュー作であり、私の五條作品との出会いとなった作品。 「鉱物シリーズ」の1作目です。 スパイ小説や謀略小説好きというわけでも、極東の国際情勢に明るい…

めあ
4年前
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【感想】君の夢はもう見ない(五條瑛)

【感想】君の夢はもう見ない(五條瑛)

鉱物シリーズに登場する『中華文化思想研究所』の所長 仲上孔兵が主人公の連作集です。
かつて、アメリカ国防総省の情報機関のひとつである<会社>のもとで、情報の世界に身を置いていた仲上。
ある事情から情報の第一線から退き、現在は<会社>の子会社である中文研で働く彼のもとに、数年ぶりに届いたある“中国通”からの手紙。
同じく<会社>の連絡員だったラウル・ホウとの個人的な因縁。
仲上が四分の一、ラウル・ホ

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【感想】星条旗の憂鬱 情報分析官・葉山隆(五條瑛)

【感想】星条旗の憂鬱 情報分析官・葉山隆(五條瑛)

個人出版の「Analyst in the Box1」を改題、文庫化した、鉱物シリーズの連作集です。
「極東ジャーナル」に主人公 葉山隆を訪ねてきた神奈川県警外事課の警官が持ち込んだ人探し。
冬樹さんが探す脱走兵は何に関わってしまったのか。
エディの代わりに隆さんが出席した、とある重機メーカー会長の告別式。
それぞれ別々の出来事を扱う6編の物語からは、日米地位協定に代表される日本と米国の関係性と、そ

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【感想】パーフェクト・クオーツ 碧き鮫(五條瑛)

【感想】パーフェクト・クオーツ 碧き鮫(五條瑛)

2020年8月に出版された「パーフェクト・クオーツ 北の水晶」と対になる物語。
「北の水晶」はこれまで同様葉山隆の物語でしたが、「碧き鮫」の主人公は、隆さんの相棒であり、米海軍犯罪捜査局(NCIS)の捜査員である坂下冬樹。
「北の水晶」の物語の裏で、冬樹さんは韓国に出張していました。仕事の内容は、「スリー・アゲーツ」に繋がる北朝鮮工作員チョンの逃亡劇に絡み、情報漏洩の原因となった女を捜索すること。

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【感想】夢の中の魚(五條瑛)

【感想】夢の中の魚(五條瑛)

鉱物シリーズで鮮烈な存在感を放つ洪敏成(ホン ミンソン)と、その相棒のパクの物語。
グイグイ物語を進める洪と、無口なパクが抱える過去の閉塞感が絡み合い、緩急の効いたストーリー運びとなっています。
洪はなかなかに個性的ですが、貪欲で優秀で、とても魅力的なキャラクターだと思います。

(以下、ネタバレあり)

韓国日報特派員という肩書を隠れ蓑に、日本で活動する韓国国家情報部のスパイ コードネーム<東京

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【感想】パーフェクト・クオーツ 北の水晶(五條瑛)

【感想】パーフェクト・クオーツ 北の水晶(五條瑛)

待ちに待った、鉱物シリーズ続編の出版。
シリーズ1作目の「プラチナ・ビーズ」に出会ってからずっと、このシリーズが好きで、本編はもちろんスピンオフも大事に大事に読んできました。
本当に、嬉しいです。

前作「スリー・アゲーツ」で、日本と北朝鮮のふたつの家族のために生き、そして死ぬことになった、北朝鮮の工作員チョン。
主人公 葉山隆は、彼から託された言葉たちを手繰っていきます。
チョンの語った工作員“

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【感想】ROMES シリーズ(五條瑛)

【感想】ROMES シリーズ(五條瑛)

架空の洋上型国際空港「西日本国際空港(西空)」を舞台にした作品群です。

ROMES 06
ROMES 06 誘惑の女神
ROMES 06 まどろみの月桃

五條作品のなかで、現在も購入できる貴重なシリーズもの。電子書籍もありますので、ぜひまとめて手に取っていただきたい。
五條ファンはもちろん、サスペンス好きの方、空港や飛行機、システム、コンピュータなどに魅かれる方にもおすすめです。

(以下ネタ

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【感想】スノウ・グッピー(五條瑛)

【感想】スノウ・グッピー(五條瑛)

電子戦という世界を知った一冊。
情報を集めて学習する…今ならAIと呼ばれるものでしょうか。最新型の戦闘機搭載対空中戦用電子戦機器をめぐって展開される物語です。

(以下、ネタバレあり)

きっかけは、極秘に開発され試験運用中の通称「グッピー」を搭載した母機が、事故によって日本海に墜落したこと。
それと時を同じくして失踪した、グッピーの開発を請け負う電子部品専門メーカー 関東電子機器のスタッフ。

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【感想】赤い羊は肉を喰う(五條瑛)

【感想】赤い羊は肉を喰う(五條瑛)

小さなリサーチ会社「内田調査」の計数屋 内田偲が本作の主人公。
依頼されたことを調査し、数値として提供するのが仕事。
内田調査社長の内田雅弘(偲さんとは他人)曰く、計数屋は数字を並べるのが仕事で、そこに先入観は必要ない。数字はしょせん数字でしかなく、使う側の姿勢がすべてを決める―とのこと。
(「情報屋」もですけど、「計数屋」ってなんだかかっこいい。)

数字という無機質なものを扱う偲さんを主人公に

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【感想】3way Waltz(五條瑛)

【感想】3way Waltz(五條瑛)

米国、北朝鮮、日本の三つ巴。
鉱物シリーズおなじみのキャラクターが多数登場しますが、主人公が隆さんではないので、また雰囲気の違う作品になっています。

(以下、ネタバレあり)

主人公は、航空機事故で母親を亡くしている神田恭祐。
父親と義母と折り合いが悪く現在保護観察中の彼の身辺で、ある日突然何かが動き出す。
その背景にはどうやら彼の実の母親が関係しているようで…
16年前の航空機墜落事故に隠され

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【感想】動物園で逢いましょう(五條瑛)

【感想】動物園で逢いましょう(五條瑛)

ちょっと本編を離れて。
本作は、いくつかの短編が書き下ろしで繋がれている連作集です。
短編はそれぞれ異なる事件を扱っているのですが、少しずつ共通する要素やテーマがあり、ひとつの流れが出来上がっています。
書き下ろし部分で、上司の“エディ”の指示により主人公である葉山隆は、ある情報提供者―元新聞記者の仁志と会うことになります。ふたりが会う場所が毎回上野動物園なんです。だからタイトルが「動物園」なんで

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【感想】スパイは楽園に戯れる(五條瑛)

【感想】スパイは楽園に戯れる(五條瑛)

「鉱物シリーズ」の3冊目と言うべきか、スピンオフと言うべきか。小説推理に連載された「パーフェクト・クオーツ」を改題・加筆修正したものとのこと。
私は小説推理版を読み逃しているのですが、どうやら相当変わっているようです。いつか小説推理版もぜひ読んでみたい。

本作の登場人物は、幼少期に見ず知らずの男から聞いた「国のために役に立つ人間になれ」との言葉を胸に国会議員になった涌井直哉。スパイ防止法案で注目

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【感想】スリー・アゲーツ(五條瑛)

【感想】スリー・アゲーツ(五條瑛)

家族の在り方を考えさせられる物語。「鉱物シリーズ」の2作目です。
北朝鮮の工作員チョンと、北朝鮮と日本のふたつの家族。
結末は決してやさしくはないけれど、チョンの想いは確かに家族を生かし、チョンが主人公である葉山隆に残した情報が、また次の物語に繋がっていきます。

「家族」というキーワードは、隆さんのトラウマを思いきり刺激して、自分をひとり残して死んだ父親へのやり場のない気持ちが端々に顔を出します

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【感想】プラチナ・ビーズ(五條瑛)

【感想】プラチナ・ビーズ(五條瑛)

五條瑛先生のデビュー作であり、私の五條作品との出会いとなった作品。
「鉱物シリーズ」の1作目です。
スパイ小説や謀略小説好きというわけでも、極東の国際情勢に明るいわけでもなかったただの学生でも、それが全く苦にならないほどの物語としての面白さと魅力的な登場人物に惹き込まれました。

この物語は、米国情報機関の末端に籍を置くHUMINT(人的情報収集。この言葉も本作で初めて知った。)の担当官 葉山隆を

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