きっとどこかの路地裏にありそうなビストロ『キッチン常夜灯 真夜中のクロックムッシュ』 長月天音 著
小説を読んで実際におなかがすいてくる。食べたことのない、知らない料理のはずなのに、頭になんとなく料理が浮かんできて味まで想像できてしまう。映像でもなく、写真や絵で表現されているわけでもなく、文章だけでその料理を想像して、おいしそうだと感じ、おなかがすいてくる。こんな体験をしたことがあるだろうか。
それは、すごく想像力が必要そうで、なかなか高度な読書テクニックのような気もするけれど、素敵な食べ物小説からは、店内の香りや料理の味わいが感じられることもあるのだ。
読むだけでおなかがすいてくる、そしてなんだか主人公と一緒にそのお店にいるような気がして、現実社会との向き合い方もすこしだけ変わるような気持ちになれる小説をご紹介します。
『キッチン常夜灯 真夜中のクロックムッシュ』 長月天音 著
2023年に刊行された『キッチン常夜灯』の続編となる物語。5月下旬に刊行されたため、書店の新刊棚に並んでいるかと思う。
▼『キッチン常夜灯』はこちらでご紹介しておりますので、よろしければ読んでみてください
続編ではあるが、主人公は別の女性だ。そして、主人公は別の女性ではあるが、舞台となる場所は同じだ。
ここから先は
1,778字
¥ 100
この記事が参加している募集
最後までお読みいただきありがとうございます!