どうしようもなくフェアじゃない社会でも心を込めて働く人へ 「東京ハイダウェイ」古内一絵 著
全身全霊をかけて一生懸命に働くのはすごいことだ。自分の時間や体力、気力、すべてを自分が与えられた仕事に注ぐのはすごい。目に見えなくても、きっと何かのかたちで誰かの役にたっているのだと思う。
それでも、仕事に一生懸命向き合っているからと言って絶対に報われるわけではない。体力には男女関係なくいつか限界が来るし、あたりまえに降りかかってくる理不尽に、きっと心は疲弊していく。どうにもこうにも上手くいかなくなって、すべてをかけていた仕事も、大切にしたいと思っていた存在を大切にすることもできなくなることがある。
きっと休み方が分からなくなるのだ。ほっと一息つく時間を後回しにし続けた結果、自分の限界のサインが分からなくなる。自分を押し殺して言われたとおりに働き続けるうちに、自分のことを休めることができなくなる。
人には休憩が必要だ。分かっていても、できない人は多いと思う。そんなときは、自分だけの隠れ家を見つけるといいのかもしれない。
そんなふうに考えるきっかけをくれた本をご紹介します。
「東京ハイダウェイ」 古内一絵 著
こちらの本は是非、書店で手に取ってみてほしい。
都会的ではありつつも心安らぐ美しい風景。淡い色合いの装丁にうっとりする。そして、本を開くと内側も美しいのだ。文章を読む前から、すこしざわめいていた心がすっと静かになる。きっとこの本に心が救われるのだろうという予感がした。
6つの物語からなる連作短編集。都会で働く人々の、「隠れ家」を通しての心の移ろいが描かれている。
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