見出し画像

薫大将と匂の宮 岡田鯱彦著 

光源氏ゆかりの薫大将と匂の宮が織りなす物語、宇治十帖、千年以上たって、未完ともされていた、その幻の続編を、本郷の古本屋で手に入れた[私]その内容は.貴公子達の恋の鞘当てが招く、美しき姫君達の死が、自殺なのか殺人なのか、宮中を震撼させる、実は実在の人物だった、薫と匂宮が巻き込まれた、この事件の謎を紫式部が推理する、そこに清少納言が参戦して競う、本書の謎の核心は、芳香をその身から放つ薫大将と、薫物調合の名手で馥郁たる匂いの持ち主の匂宮、この二人の過敏すぎる嗅覚を頼りに、文字通り恋の嗅跡を追う.この設定こそが源氏物語を、下敷きにしていて、心憎いばかり.多情な匂の宮に浮舟を奪われた薫大将が、その報復として自分の情人たちを次々に、籠絡していると匂の宮は怒りを訴えるのです.一方、薫大将はこの疑い、自分が匂の宮の情人たちを寝取ったという、ことをまったく濡れ衣だと全面的に否定する.双方の矛盾する訴えを聞き、どちらも真実を語っているのではと、紫式部は直感するが、検証することができない.物証はなにしろ、二人だけが備える嗅覚によるものだけ.そんな嗅覚を持たない紫式部の、解決手段は論理的思考だけ.あるはずのない薫香があるという不可能なことに対する式部、そして解決がどのようなものなのか、是非、お読みになることをお勧めします. 本書には、ほかに王朝物の小説なども、収められている、中でも[六条御息所の誕生]如何にして生まれたのか、紫式部はこのところ、机に向かっても、筆が止まってしまい、どうにもならなくなり、気を晴らすために、参上して中宮の美しいお顔を、拝見すれば何か知恵がわく、筆が止まり書けなくなった、と申し上げた、すると帝から伺った話です.といって彰子中宮から、昔宇多法皇が御息所と御同車の時に、物の怪のに襲われて、気取られて絶え入ってしまった、と物の怪の話をして、藤式部こうゆう怪異の物語は、どうですか書けますか、そして生まれたのが、六条御息所[夕顔の巻、葵の巻]などに登場する、光源氏の北の方たちに、死霊になっても、苦しめる、六条御息所なくして、源氏物語はなしえない、紫式部はこの物の怪に、取りつかれたみたいに書いていると.作者は書いています.国文学者であり推理作家である、古典文学に造詣が深い、本格にもとずいての、王朝推理小説です.作者の想像創造には、脱帽です、この本は昭和二十五年発表とは驚きです.二十年ぶりの新版だそうです。源氏物語をお読みの方々、必読です.


いいなと思ったら応援しよう!