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約40キロのダイエットをして分かった自己啓発ビジネスの裏側ー方法論の罠
はじめに
ダイエットを始めた動機
就職等の面談で、今までの一番の成功体験は何かと問われるのは定番だ。
質問主は結果そのものより、相手がプロセスを自覚できているのかを知りたいのだろう。その人なりの上達の法則を掴んでいれば、仮に未知な問題に遭遇して及第点以上のアウトプットを出せるという理屈があるのではないかと推測する。
冒頭の問いに関しての自分の答えはダイエットになるだろう。
そもそも自分がダイエットを始めたきっかけは足の骨折による入院生活だった。
骨折箇所が関節部であったことから医者との面談の際に言われたことは関節に負担をかけないように減量すること。あとリハビリのロードマップも案内された。
思うに治療というのは一方通行のものではなく、双方でなければならない。いくら手術が上手くいったとしても、医者のアドバイスを守らずリバビリを怠れば台無しになってしまうだろう。
医者も人の子であるから協力的でない患者に対してはそれなりの対応しかしてくれないものではないのか、あくまで共同作業であるがゆえに。患者の熱心な態度こそ付け届け以上の価値を持つこともあるはずだ。
なぜ自分はダイエット成功させたかったのか
動機づけというのは2種類に分かれる。
一つは他人のため、上記の医者への謝意を示すためというのはそ
こに含まれるだろう。そして、二つ目は自分のためだ。それに関しては次のとおりだ。
どうしても自分がダイエット成功させたかった理由がある。それは自分の人生を変えるきっかけになると思ったからだ。
それまでの人生はというと、向上心のある無能という感じでビジネス書が指南する事を取り入れては実践しては効果が得られず、更なる努力や新しい本を購入するような出口の見えないループを繰り返していた。
その徒労感に辟易したスランプ時期だったことから、本来であれば骨折による入院はネガティブな事でしかないが、またとない僥倖で運命的なものとさえ感じたぐらいだ。
ビジネス書から導き出した3つの黄金律
殆どのビジネス書というのは自己啓発本と言っても過言ではないだろう、エナジードリンクのような気付け薬程度と揶揄されるぐらいだ。
確かに読みやすい反面、手垢にまみれたポジティブシンキングなものや断片的な方法を寄せ集めたもので内容が占められている。
それでも多くを当たっていると、最大公約数のものには普遍性を持ちうるのではないかと思う。
自分はそれを以下の3点に集約してダイエットに当てはめることにした。
①メモをすること
②数値化
③ワンブロックワンテーマ
理論編
1、食べたものをメモをすること
職場や学校などでメモの重要性は散々言われてきていることだが2つの目的に分かれていることは見落とされがちだ。
それは備忘録と発想の方法としての機能だ。最近はメモを謳うビジネス書が書店に溢れているが、別に目新しいことではない。頭の中だけで考えるのではなく、メモに落とし込むと新たな発想や別の着眼点が生まれたりするものである。
ダイエットのためのメモは、特段アイデアを必要とするものではないことから備忘録メモとしての側面が強い。
昨日何を食べたと問われて答えられる人は少ないだろう。かろうじて思い出せても間食までは無理なはずだ。理由は食べることが無意識の行為になってしまっているからである。無自覚だからこそ、暇が生じると気を紛らわせるためにまた食指が動いてしまうのである。それは生存のためでもなく、愉しみを求めてでもない。そのような惰性のための食事を無くすことこそダイエットの近道ではないだろうか。
その前提として、健忘症に陥りがちな食べたという事実を認識出来るためにメモによる記録を残すことが必要なのだ。
2、カロリーによる数値化
野球のバッティング練習で来た球を打てといわれるより、ボールの縫い目をめがけて振れと言われた方が効果的なアドバイスと言えるだろう。後者のほうが具体性が高く集中力を発揮しやすいからだ。
具体性の最たるものは数字だ。先程食事の記録をつける必要性を述べたが、それはメニューではなく同じ尺度に置き換えてほしい。つまりカロリーに換算して記録し続けるのだ。現在は健康に対する意識の高まりもあってか、生鮮食品以外の食べ物にはカロリーが記載しているはずだ。仮にわからなければネットで調べればよい。
実際にメモをとり合算すると、思っている以上にカロリーを摂取しているはずだ。
その自覚こそスタートラインで、1日の摂取カロリーを2000キロカロリーに抑えたいのであれば、そこから逆算して満足度の高いメニューを作ると良いだろう。
3、ワンブロックワンテーマ
かつての車の製造は、職人が1から10まで手掛けていた。それが今のような生産方式になったのはフォード社の採用以降だ。ベルトコンベヤーを使って作業工程を分業化したのだ。各人が与えられた作業のみに従事するから、アイドルタイムを減らすことが出来、大量生産を可能にしたのだ。
それは、個人レベルの仕事や日常作業にも言えるだろう。あれこれ手を尽くしている割には作業が遅々として進まないこともあるが、そのような場合の多くは頭の中身が漠然として集中すべき対象が絞り込めていなかったりする。あるいは複数の事に同時に対処しようとして精神的に負担がかかる割には、虻蜂取らずという結果になるのだ。
筋力トレーニングのコツは鍛えるべき箇所に意識を集中させることだという。
確かに握力と太腿を同時に鍛えようとする人はいないだろう
つまり、人間の脳みそが集中できるのは一つだけなのであるから、今やるべきこと次にやるべきことを切り分けることが不可欠なのだ。
フォード式になぞらえるのなら、一人ベルトコンベヤーといってもよいだろう。
さてダイエットに話を戻したい。平均的な成人男子が1日に必要なカロリーは2300~3000キロカロリー位ではないだろうか。当然活動量によって増減するが。
しかし、健康診断等でダイエットの必要性を指摘される人は必要摂取量より多いというのが現状であろう。
まずやるべきことは現状認識だ。手始めに自分が今から食べたものカロリーを全て記録することだ。簡単なことのように思うが、三日坊主という言葉があるように言うは易し行うは難しなのである。だからこそ、当面はカロリー記録をつけるという工程に専念してもらいたい。
1~2週間続ければ概ねの傾向は見えてくるはずだ。間食の菓子パンだけで1日で1000キロカロリー近くいっていたり夜更かした時にテレビのお供としてスナック菓子を無為に食べ続けていた等。
記録したものを分析すると満足度が低い惰性的な間食がいかに多くの摂取カロリーを占めているか分かるはずだ。そこで一足飛びにそれらを一気に無くそうとしてはならない。それは失敗に終わり、折角のダイエットへの意志そのものをを放棄するという事に繋がりかねない。
というのは、惰性的な食習慣というのは一朝一夕に出来上がるものではなく長年の習慣の産物であるからである。
だからこそこれも作業工程として捉え、間食の回数が多ければその数を減らすこと、または一回ごとの間食のボリュームが多いのであれば軽めにすること、というように達成しやすい具体的な形に分けて考えると良い。
切り分けられた小さな目標を達成した際に起こる気分の高揚感の力を借りて次の目標に向かい、これが出来たらもう一つのといった良い循環を生み出し続けることが継続に繋がるのだと思う。
実践編
入院期
自分の入院時の体重は90キロ近くあったとを記憶している。標準体重より25キロ程重い。
ダイエットを始めるにあたり追い風になったのは入院という隔離された空間に閉じ込められたことだ。そのためコンビニでおやつを買い漁ったり、夜ふかしをして間食をとるということが無くなった。また仕事上のストレスから飲食に逃げるということも。
ストレスと過食は親和性が高いように感じる。では入院時のストレスはというと、自分には無かった。医者との対話やリハビリそして病院内の日常はどのようなものか全てが新鮮なことだらけだったからだ。逆に自分がいかに恵まれた境遇にいるかという事が思い知らされることもあった。「怪我」は我を怪しむと書くが自身を自省する良いきっかけになったと思う。
唯一の愉しみと言えるのが入院食だった。一般的に病院食は決して評判の良いものではない。しかし、自分は一人暮らしでありバランスの取れた献立というのは無縁であったので色とりどりの食材は精神的な助けにもなった。
病院食の総カロリーは1800キロカロリー程度だったはずだ。一方これまでの食生活では2倍以上のカロリーを摂取していたように思うが、満足度は入院食の方が高かったのではないか。入院期間はおよそ1ヶ月位だった。退院前に体重計に乗ったところ4キロ程の減量で率直に言って期待を下回るものであったが、食事のカロリー制限を守れば痩せ続けるものであるという確信はあった。
退院後
入院期間は病院食であったために受け身で良かったが、これからの食事は主体的な管理をしていかなければならない。強制的に1日1800キロカロリー程度の食生活を続けさせられたためか体が慣れ始めた頃だった。この種火を消すことなく灯し続ける事が焦眉の課題だ。
2000キロカロリー内に抑えるための工夫
手始めに1日2000キロカロリー未満に抑えることを心掛けた。だから店で食品を選ぶ際にも常にカロリー表示を確認して記載のないものは選考外とした。菓子パンはよく間食として手軽に購入されるが、高カロリーのものが多く2つも食べれば900キロカロリーにもなることもあるので要注意だ。
ダイエットにおいて、自分が第一としたのはカロリーだ。栄養価の優先順位は低く設定し運動も気分転換程度のものにとどめた。
理由としては自分の状況下では短期間で成功を得ることが至上命題であったことから、栄養バランスやトレーニングメニューを考えることにより意識が散漫になってゴールへの方向性がずれたりスピードが減速することを恐れたからである。
ちなみに一万歩歩いて消費できるカロリーは350キロカロリー程度であるから、無理を押して運動した結果ストレスをためて食生活に乱れを起こすのならばもともこもなく、はじめからやらない方が良いのかもしれない。
制限カロリーの中でも自分の満足度を諦めては継続できないだろう。
自分は甘いものを食べたい時にはカロリーの高いものを一個というのではなく、極細のポッキーを20本食べるというような満足を演出した。意外にもアイス関係はカロリーは低く、割高になるが低カロリーアイスというのもある。
塩気のものが欲しいときには大袋のスナック菓子ではなく小袋のものを買うようにしていた。いかんせん一袋平らげるという欲望には抗えないもので大袋を中途半端に残すということは出来なかったからだ。初めから小袋にしておけばその心配もない。
スナック菓子を食べたくなった時には焼きそばやカップヌードルなど似たような風味を持つものを主食として据えるようにすれば間食に走らなくて済むものだ。
入院食の献立から学んだことがあった。満足度が高くかつカロリーが低い物の存在だ。自分にとっては、おでんや鶏肉またお粥なども挙げられるだろうか。特におでんはバラエティが豊富で腹持ちが良く満腹感がある。
鶏肉で満足できず牛肉を食べたいのであれば、すき家の牛丼LIGHTが約330キロカロリーでおすすめだ。低カロリーの秘密はご飯の代わりに豆腐とサラダが用いられているのだ。自分も外食時にはしばしば利用した。
完璧主義を捨てて継続を重視
続けていく上でもう一つ必要なのは完璧主義を捨てることだ、仮に1日2000キロカロリーを超えたところで捨鉢にならずに週単位で調整すればよいことだし、それすら上手くいかなくても一旦そこでリセットしてゼロベースからやり直すとよい。短期的なオールオアナッシングに陥らずに長期的な視点を忘れないことだ。
メモからの脱却
半年も経つと記録を続けること自体が倦むようになってきた。かつてであれば、そこで挫折していたかも知れないが柔軟に対応した。
記録する回数を減らしたいのであれば間食をやめる。また記録をしなくて良いように覚えておきやすい摂取カロリーを心掛けた。
つまり記録するという面倒さを飼いならして良い方向に転換して「食欲<簡略」という図式にしたのだ。
体に起こった変化
半年、それ以降と体重も順調に減量出来、肉体的な変化も徐々に実感しつつあった。具体的には運動したあとに息を切らさなくなったことだ。以前は3階でも階段の昇降をすれば肩で息をし背中が濡れたものだ。
個人的なことだと思うが、かつては20分程度歩いただけでも足全体に筋肉痛に近い症状が現れ、悩まされていた。しかし、それが全く無くなったのだから体重の重さだけが原因だったということか。
それから一年、体型にも急激な変化が起こった。およそ60キロになっており、ダイエット開始時から30キロ分の肉が取り除かれたのだ。銭湯にいくと周囲を見て肉付きの良い人が多いと感じていたが、否ただ単に自分が痩せすぎていたのだ。全身鏡で横から映し出された自分を見るとベニヤ板のようで凹凸が無かった。風呂椅子に座って湯を被ると目線は下に向かい、かつてならそこに太腿とお腹によって閉じ合わされた小さな池があった。しかし今は代わりに三角の空洞が空きそこから水が抜け落ちて床のタイルが見えるだけ、これは衝撃的だった。
昔のズボンもぶかぶかになり、その弛みのスペースにはもう一人人が入れただろう。ベルトの穴も開け直して、ベロの部分が左脇腹をこえて背中に到達しそうな勢いだった。
約40キロの減量
更に半年を超え、退院後2年近くに差し掛かるまでダイエットは続けた。最終的には瞬間的には50キロを切る位までいった。開始当初から約40キロの減量で標準体重よりも15キロも軽い。
久しぶりにあった知人にも気づかれない位で、痩せすぎの余り風貌そのものも変わったようなのだ。
それまでの減量の推移ではメリットが多かった。しかし標準体重よりも10キロ以上下回るとデメリットが生じてきた。当時は自覚していなかったが、今にして思えばその時期は、冷え性になり風邪を引きやすい傾向にあったように思う。なにせ身体を守る肉の鎧が無く、食制限による免疫力の低下をカバー出来なかったのだろう。
あとがき
今の体重は65キロ程で丁度標準体重になるように意識をしている。食制限は特にしていないが、体重が増えたと感じた時は、油ものを控え、肉は蒸し鶏にしたり、またカロリー計算を再開している。それで十分体重コントロールは出来ている。
ちなみに退院後経過措置を診断してもらうため定期的に通院していたが、一年も経った頃に担当医が自分の変わりように目を丸くしていた。ダイエットの方法を尋ねられたのでカロリー記録をつけることだと答えたところ、それは医学の現場でも実践されていると聞いた。無論、栄養バランスを重視しながらであろうが。
方法×努力=結果
はじめにで述べたような上達の方法を掴むという目的が達成できたのは、痩せた事以上の喜びがあった。人生を好転させるためのアイテムを手に入れたような気分だった。方法×努力=結果、の公式を信じて疑わなかった。
そして兼ねてから念願であったある別の目標に邁進した、それまでも少しづつ取り組んでいたが、自分の方法そのものに懐疑的であったことから本腰を入れきれないでいた。しかし今は違う、自分の持ちうるリソースを投入できるし短期的に結果は出せなくても我慢は出来る。なぜなら成功体験を持っているので、その先に光があることは知っているからだ。
2年3年程、ダイエットと同じかそれ以上のエネルギーを注いだ。
結果は・・・・。
思い描いた上達曲線は描くことはなく、少なくとも人より抜きん出たレヴェルになることは無理だと諦めがついた。
分析による気づき
そこで、自分が焦がれた所に居る人間と自分の何が違うのだろうかと分析して分かったことがある。
努力×方法の他にもう一つ別のファクターがあるのだ。
それは、才能だ。もう少し具体的に言うのならば適性や資質であろう。
何を今更、と思われるかも知れないが、自分のように幼少期から目の前の課題に真剣に取り組まないで流されてきた人間は、結果から適正なフィードバックも得られずこうなりがちなのだ。
まだ本気を出していないから、というエクスキューズは人間をスポイルするもので、真理への気づきから遠のくばかりだ。
逆に早い段階で挫折経験を得た人間は、柔軟な脳で自分の適性とはなにか探し当てる可能性はぐっと高くなるだろう。
ユダヤ人の格言で才能とは自分がどのジャンルに才能があるか気づくことだというトートロージがあるが、蓋し至言であると思う。
自分のダイエットの成功も方法と努力以外のもう一つの要因である体質に頼るところが大きいはずだ。なぜならば自分の周囲にも少食でもふくよかな人間はたくさん居るからだ。もちろん健康体であればそういう体質である以上無理にダイエットをする必要はない。
方法論の罠
最近では自己啓発産業が花盛りだ。
日本はアメリカの10年遅れだと言われている。
昔は深夜放送でアメリカの通販の吹き替え番組が放映されていた。当時はその芝居がかった口上や客席の大仰な反応に失笑の他無かったが、今のジャパネット高田などまさにそれではないだろうか。
かつての日本で売られている自己啓発本はアメリカのベストセラーを翻訳したものが多かった。著者のプロフィールをみて講演家と記載されているのを見て不可思議だった。日本では聞き慣れない職業だったからだ。
後に分かったことだが、彼らは夢を叶える方法、金持ちになるために、人を引きつけるために等その種の自己啓発的なテーマで各地で講演活動をして巨万の富を得ている人達なのだ。
やはりアメリカは格差社会だからそういったビジネスが成り立つ土壌があるのだろうと、その時は感じていた。
しかし、数十年遅れてその潮流がやってきたのが格差社会と言われつつある日本の現在なのではないだろうか。情報教材やサロンビジネス、自己啓発セミナーが活況を呈しているのも時代背景と無縁ではない。
そこで、主催者はこのような切り口で扇動する。
「あなたが上手く言っていないのは方法を知らないだけ」
その秘伝の方法を教えてあげるから会員になって、教材の購入やセミナーへの参加をと誘導するのだ。
その口車に乗せられて常に新しい教材やセミナーを求め続ける人達を見ると、さながら魚群のようにも思える。とはいうものの自分とて対岸の火事では無かったはずで、自分にも起こり得た姿だったと感じる。
物事は単純ではなく、秘密の方法さえ知りさえすれば上手く行くというわけではないのだ。
多岐茫洋という言葉はあるが、自己啓発という「青い鳥」を追いかけ続けて路頭に迷ったらどうすればよいのだろう。
もしそれが自分であったらこう声をかけると思う。
「来た道を戻れ」、つまり自身の過去を振り返り、目を背けたい自分の等身大の姿を受け入れろ。それは辛いことかもしれないが、そうしない限り自分の道は切り開けないのではないだろうか。
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