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グレーな旅のおもしろさ

旅に出る時、しっかり計画を立てるタイプと何の計画もないタイプに分かれるというが、実際どちらにも属さない、グレーな人も多いんじゃないだろうか。

わたしはまさにそのグレーな人間で、よくひとり旅をするけれど、絶対に行きたい地域や展覧会、お店などを元に、ざっくり調べはする。でも完璧にスケジュールは決めない。


グレーの振り幅もなかなか広い。
例えば昨年、アイスランドの首都レイキャヴィクにひとりで10日ほど滞在した。この時は、カナダからアイスランドってめちゃくちゃ近い!航空券も安い!(当時カナダ東海岸に住んでいた)これはイギリスに行く前に寄るしかないな、と本当にほぼ何も決めず行ってきた。レイキャヴィクをゆっくり楽しむ、温泉に一回は入りたい。がプラン。ここまでノープランなのは、ひとり旅ならではかも。

でもこれがなかなかによかった。10年前の来訪時は、Iceland Airwavesというフェス参加目的で訪れ、また名所は多少回ったけど、市内をゆっくり見る時間はあまりなかった。
今回はThe Reykjavík City Cardというカードでレイキャヴィクにある美術館、博物館をバスで巡りつくし、ご厚意で美術館プライベートガイドをしてもらい、市営プールで住民とともにサウナに入り、夜はオーロラハントと素敵な窓辺を探す散歩。新しい洒落たラグーン(温泉)にも、自然の中にある無料足湯にも行った。

これはあまりにも何も決めてなかった旅の例だけど、「レイキャヴィク市内を満喫したい」というわたしの旅の目的は達成した。

寒空の下、野外民俗博物館で何時間も楽しみ本物のターフハウスの中にも入れた
プライベートガイドのおかげで知れた彫刻家Ásmundur Sveinssonの、元住居兼アトリエ美術館
唯一予約していた絶景Sky lagoon わたしの渡航日よりBlue lagoon付近で噴火の恐れがあり、長らく閉鎖されていたため、たまたまこちらを予約していたのは運が良かった
主にカードで行けた場所のメモ バスも乗り放題なのが嬉しい




一方、人と旅行のときはさすがにここまでざっくりしたプランでの旅は、なかなか難しい(これでも構わない友人も何人か思い浮かぶけど…)

先日母娘ふたりで2泊3日兵庫と京都の北側へ行ってきたのだけど、わたしは
①和久傳乃森でごはんをいただいて、安野光雅の赤毛のアンの絵を見たい
②温泉宿でゆっくりしたい
③いつも頂いているコウノトリ育むお米を産地で買いたい
以外は臨機応変でよく、そのほか絶対行きたい!という場所もなかった。

働いているわたしに代わり母がスケジュールを立ててくれたのだけど、美術館などでは長居をするのを見越して、ゆとりのある予定になっていた。このゆとりー余白のおかげで、ただのリフレッシュではなく、学びの多い旅になった。

ふたりとも赤毛のアンも安野光雅も好きなので、美術館はもちろん楽しみにしていたのだけど、和久傳乃森のレストランは、まるでその森と一続きになったような居心地の良さで、出てくるお料理も全てが「自然のいただきもの」という感覚が味わえた。そしてその後、腹ごなしに森や畑を散策したが、まさかこれが「人工の自然」だなんてことは、説明を読むまで全く気づかなかった。
ここで、わたしは自分が偏向的に「人の手が付けられていない自然が“自然”である」と思ってしまっていたことを思い知らされる。イングリッシュガーデンだって、あまりにも超自然な人工の自然ではないか。自然を守るために何かに人の手が入るのと同様に、自然を取り戻すために人が何かを作り出すこともある。
この森から、新しい「自然」の在り方を学べた気がした。

森に囲まれたレストラン
飾りに使う葉や花もすべて森から取ってきているのであろう
こんなかわいいガーデンゾーンも


また、コウノトリの郷では偶然にもガイドツアーの時間に遭遇して、ただ散策して見学するだけのはずが、コウノトリの生態や、周辺の自然環境のこと、コウノトリだけを育むお米づくりをしているのではない(周りの生態系すべて)ことなど、とても勉強になった。
郷から次の場所へ移動中、車内から稲刈り後の田んぼでトラクターを走らせている後ろを、サギがついて歩いている姿(掘り起こすと虫が出てくるので、餌を狙っているのだろう)なんかもなかなかにおもしろかった。
より一層いつもいただくお米が嬉しく、有難く思え、頑張って担いで帰った5kgのお米を、毎日おいしくいただいている。

コウノトリたちが自由に動き回っている様も見られる





グレースケールの具合(予定の埋め具合)はそれぞれだけど、やっぱり程よくゆとりのある方が、旅での出会いを満喫できるなと改めて感じた。
大人数での旅行(修学旅行、研修など)や、誰かに案内を頼む旅であればスケジュールを綿密に立てる必要もあるが、ひとり旅や数人での旅行の場合はこの余裕があることで素晴らしい、思いがけない出会いに巡り合えることも少なくない。

もちろん、無計画ゆえに何かを逃してしまうことだってあるだろうけど…それでもわたしはこう言いたい。

旅のグレーさは、旅の醍醐味でもあるのだ。





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