ミステリアスな2本のゾナー 戦前と戦中のオールドレンズ
ごく簡単なゾナーの説明
ゾナーとはレンズの構成型につけられた名前です。子供番組の怪人ではありません。
画像撮影用レンズは、複数のレンズで構成されていて、それぞれの型式を構成型と呼びます。
ゾナーとはツァイスのベルテレという設計者が開発した構成型で、詳細については以下のwikiを参照してください。
ここで重要なのはゾナーはツァイスのレンズで、当時(いや、いまも?)ライバル関係にあったライカには供給されなかったことです。ところが、なにごとにも例外はありまして、さまざまな要因からライカで使えるツァイスのレンズが存在しているのです。
戦中製造? ライカねじ込みマウントのゾナー
自分の手元にあるLTM(ライカねじ込みマウント)ゾナーは、イタリアのライカコピーLTMカメラ用に供給されたという話で、ヤフオク落札したように記憶しています。とりあえず、自分が買える値段でした。
ところが、趣味のソビエトカメラに関する情報を探していたら、なんだか見覚えのあるレンズが紹介されていたんですね。
こちらのサイトによれば、第二次世界大戦中にツァイスが輸出用として製造したレンズだそうで、大変に数は少ないと説明されています。ドイツの敗戦後、ソビエト軍が接収したレンズや生産設備、技術者で新たに製造したのがおなじみジュピターシリーズですが、その原型となったレンズとされています。たしかに、戦後にソビエトが試作したレンズは鏡胴が同じで、光学部のみ新設計のようにみえます。
興味深いのは、先のサイトに紹介されているレンズと、自分のレンズの製造番号が非常に近いところで、もしかしたらホンマに激レアなんちゃうかとワクワクしました。
なにせ鑑定書付きのフルレストア品だと、リンク先のようなお値段なのですよ。ライカの純正レンズが新品で2~3本も買えちゃう!
でも、真贋鑑定とレストアに出す手間と費用を考えると、夢にとどめておくのがよいような気にもなります。
実際、手間ひまかけて贋造しても見合う価格になっているし、戦争が始まる前はウクライナやロシアに残存していた生残設備で、実際にフェイクを作っていましたから、鑑定書がないと二束三文です。しかも、真贋鑑定されたレンズはピントレバーが7時の位置に……。
フェイク……かもねw
肝心の写りですが、それでも割とよいんじゃないかと思います。
少なくとも、自分は気に入っています。ただし、後述するミステリアスなゾナー5cm/f1.5のほうが好きなので、あまりつかっていないんですよね。
戦前製造? 分解痕が目立つ改造ゾナー
こちらはツァイスのコンタックスマウントなので、特にレアなアイテムというものではありません。まぁ、それでも本当に戦前製造のTコーティングされたゾナーならば、それなりに希少価値があるのですけど……。
レンズのコーティングは、光学ガラスの表面反射を抑えて性能を向上させる加工で、詳細についてはキヤノンの解説を御覧ください。
自分の手元にあるのは戦前製造のレンズで、赤い刻印が示すようにTコーティングが施されています。ツァイスのTコーティングについては、こちらの解説をご覧ください。
こちらの解説によると、第二次世界大戦前のTコーティングは軍事機密扱いだったため、軍用レンズにしか施されていなかったそうです。ただ、先の解説には戦中に機密解除され、民生品にも施されたようですが、他方で市場には流通しなかったとの情報もあります。
問題は、手元のレンズは分解組み立て痕が歴然としており、最悪の場合だと複数のレンズから合成されたキメラの可能性があります。第二次世界大戦末期から戦後の混乱期にかけて、ドイツ本土の空襲被害や輸送の混乱から生産管理が崩壊し、適当なありものを組み合わせてでっち上げたものも多数あるようです。さらに、先述のように贋造も横行したため、この手の軍用だの特別製造品だのは、基本的にぜんぶ眉唾ものと考えざるを得ません。
とはいえ、なんとなくロマンチックなのは確かですし、そもそもフィルターリングが切断されているので買い手がつかない(自分は買ってから気が付きました……)。
肝心の写りですが、かなり気に入っています。
写りという点ではあたりを引いた気にすらなります。
というわけで、いずれも掴まされた気がしなくはないのですが、写りが好ましいのもまた確かなので、うまいこと使いこなそうと思っています。