サブカル大蔵経562松崎智海『だれでもわかるゆる仏教入門』(ナツメ社)
各宗派ごとの対談が素晴らしいのですが、特に、天台宗と臨済宗の、宗教としての錬成度と説得力が魅力的に感じられました。それを引き出した著者の人徳が伺えます。こういう方が同じ真宗にいてくれるのは、誇らしいというか頼もしいです。
この一連の作業、「同人誌」制作に似ていると思いませんか?私は、お釈迦様没後の仏教とは「あまりにも原作が素晴らしいため続編を熱望されるも、公式(原作者)からの供給が止まってしまっているため、やむなく始まった同人活動によって多数の天才作家さんが誕生し、人々を幸せにしている」ようなものだと思っています。p.14
オリジナルも二次も、フラットに認めていく姿勢が新鮮で本質的。特に仏典研究の世界では、どこが釈尊の言葉なのか、わからないことがわかってきました。だからこそ、オリジナル方向に敬意を表しながら、〈二次〉を認める姿勢は大事。
〈こうでなければならない病〉は、自分では気づきにくいものです。仏教と出会い初めて病に気づくことができる。p.46
自分はそうではないと思っている人ほどかかりやすい病。私自身のことです。
【天台宗】天台宗はプロフェッショナルの反対側にある宗派です。(谷晃仁)p.111
天台宗凄い。最澄さん凄い。〈専門〉に縛られない巨きな慈悲を感じます。やはり大陸的なのかなぁ。
【真言宗】最澄様の天台宗、空海様の真言宗というのは日本初の国産仏教総合百貨店なんです。/鎌倉仏教は一点突破のセレクトショップなんですよ!(蝉丸P)p.117
的確な比喩。そうなると、今は通販で、結局、行き着くところは、手作りかな?
【日蓮宗】父からは「僧侶は職業ではなく生き方。だから、あなたのやりたいことを一生懸命にやりなさい」と言われて育ちました。(渡邊晃司)p.124
私も似たことを父に言われました。日蓮宗的はより〈生き方〉を説くのかもしれませんね。
【臨済宗】大事なのは「疑問の心」です。臨済宗では迷いがあるから悟りがあると考えます。/意味付けを手放す。(細川晋輔)p.134
本書を一読した感じでは、臨済宗が、一番現代においても説得力を感じました。日本人の教養として学校で教えてもいいのでは?その上でまたいろんな宗派を選択したら良いと思います。
【曹洞宗】作法の形ができると、自然と行為に邪念が入らなくなります。茶道も作法を習得すると、お茶そのものを味わうことができるようになります。お茶がおいしくなるんです。(倉島隆行)p.148
これも至言。禅語の凄さを真宗も学ぶべきだと思いました。
【浄土宗】お釈迦様も法然聖人も破壊的イノベーター。伝統をひっくり返し、正しいものを作るために邁進した。それこそが仏教の保守主義者だと。(井上広法)p.154
なるほど…。破壊こそ法然的保守!
【浄土真宗】何かしないと往生できないなら誰も往生できなくなります(著者)p.170
真宗特有の逆説法話。意外と真宗こそ、禅的かも。
仏壇が家にあると、極楽浄土をつねに身近に感じられます。仏壇を迎えると、ただの住居が、仏様の教えを伝える「道場」になります。p.196
仏壇のある部屋は道場か…!仏壇って、ホントに要るのかな?と思っていたので、これは素敵な言葉でした。
あとは阿弥陀様とその方のご縁次第。そこから先は阿弥陀様の仕事です。お寺の門を閉ざしていたら、阿弥陀様の邪魔をすることになります。p.204
よく聞くフレーズなんですが、この文を読んでから、コロナ禍の現在、寺を預かる者として、指標にしている言葉です。