人事評価制度を0ベースから丸ごと改定した話
経営陣、リーダー陣とともに何度も議論を重ね、人事評価制度を0ベースから丸ごと改定し、2024年2月から新しい人事評価制度をスタートさせました!
コードキャンプにてコーポレートリーダーをしております栗山です。人事評価制度改定プロジェクト自体は約9ヶ月間に及び、毎週の人事定例やリーダー陣、その他メンバーにも様々なアンケートやワークを通して、意見を交わし、等級、評価、報酬制度、行動指針など一つずつ創り上げていきました。
どのような思いを込めて、またスケジュール、フローで改定していったのかまとめていきたいと思います!
少しでも参考になる部分があれば嬉しいです。
人事評価制度とは
まずは一般的にいわれている人事評価制度について見ていきます。
人事評価制度
人事評価制度とは企業ビジョンや戦略など企業目的を達成するために従業員のパフォーマンスやスキルを評価し、給与や昇給などに反映する仕組みで、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つの機能から成り立つと言われています。
上の図のように等級・評価・報酬制度には相関関係があり、評価基準にもとづいた評価制度、そして能力や職務内容によって序列化された等級制度、給与や賞与が定められた報酬制度がそれぞれ関連しながら人事評価に落とし込まれていきます。
人事評価の目的
なぜこのPJを達成させると等級ランクが1つではなく2つあがるのか、なぜこの実績を上げたことで報酬がUPするのか、実際のパフォーマンスと人事評価制度の枠組みに当てはめた評価は、当たり前のことですが、そのパフォーマンスをどの程度(レベル)と認識しているかによります。
どの程度(レベル)のパフォーマンスなのか、はもちろん個人によって価値観が違うように各個人で捉え方には程度の差が生じます。その程度の差を上長、メンバーがそれぞれどのように感じているか、また会社として全社でみたときに均衡となるよう、標準化された人事評価制度が仕組みとして機能し、公平感のある処遇が分配されていきます。
このときメンバーが納得感ある評価内容や評価プロセスの透明性を担保することが重要で、人事評価を通して自分になにが出来て、なにが出来なかった、どういったことを会社は自身に期待しているのか、上長とメンバー、また組織間ですり合わせを行い、組織の序列に当てはめながら自己を見つめ直すことで、モチベーションを向上させ、個人の能力開発や育成も進めます。
そういった企業が重視する価値の序列を直接的に表したものが人事評価であるため、間接的に企業文化の醸成にも寄与すると言われています。
今回の人事評価制度改定では、作って満足!と手段が目的化しないよう、人事評価制度を通して一個人メンバーの人材価値も向上できるような制度設計となるように本質的に必要なものだけを残し、シンプルでわかりやすい人事評価制度を目指しました。
なぜ人事評価制度を変えるのか
コードキャンプはサービスインから2023年11月でちょうど10周年を迎えました。創業当初のメンバーは卒業し、2021年には東証プライム市場上場の親会社フューチャー株式会社の完全子会社として会社のステージは変わっていきました。
そういった中で人事評価については創業メンバーが策定した人事評価制度での運営が継続されており、2022年12月代表交代を契機として、代表と共に人事評価制度改定を行うこととしました。
ここからは実際にどういったスケジュールやフローで人事評価制度改定を行っていったのか振り返っていきます!
今回の人事評価制度改定プロジェクトは「評価デザインPJ」という名称で、私がオーナーとなり代表の川西、コーポレート担当役員の皆川、コーポレートメンバーの小泉有子とともにPJを発足しました。コードキャンプのありたい組織をデザインするための人事評価制度を作りたいという思いを込めて、デザインというワードを入れました。
評価デザインPJスケジュール
ここからメンバーに行った評価デザインPJの説明資料を引用しながら書いていきます。
第1ステップ 何を軸とするか
2023年4月頃からコードキャンプが大切にしたい人事方針はなにか、現状の課題はなにか、過去どういった思想で人事評価制度を策定したのか、他社にはどういった事例があるのか、下調べを進め情報を整理していきました。
2022年12月に代表が川西に交代したタイミングで、リーダーを中心として新しいMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定しており、このMVVを達成するための組織を構築するための人事評価制度策定を軸にしていくこととしました。
第2ステップ 今のコードキャンプを現状把握
MVVを軸としてどういった人事評価制度とすべきか、を検討していく中で、まずは現状のコードキャンプはどういった組織で、MVVの理解度や達成ステータスはどの程度なのか、を把握するために全社に評価デザインアンケートを実施することにしました。
MVVをどの程度メンバーが理解できているか
現状のコードキャンプはどの程度MVVを達成出来ていると考えるか
MVVを達成するために必要な組織風土/価値観/行動基準は何であると考えるか
アンケートを通して、ミッション・ビジョンについては一定の理解度を達成していましたが、バリューとして大切にしたい価値観への理解度が低い事がわかりました。
「受講生の成功とはなにか」、「社会で活かせる教育とはなにか」をより具体に落として全社で共通認識を持つ必要性があり、全社でバリュー探求ワークを実施することとしました。
評価デザインアンケート結果はmiroというオンラインホワイトボードツールを利用し、全メンバーの回答結果を一覧化し、分類、集約していきました。
第3ステップ バリュー探求ワークを通してバリューの共通認識を深める
バリュー探求ワークでは、一つの意見に絞るような集約ワークではなく、それぞれ各事業部で集まり、各メンバーの解釈に一定の余白をもたせ、それぞれの担当領域において考えるバリューの理解を分かち合うことで、刺激を受け、相乗効果が生まれることを期待し、各メンバーの考えを理解しあおうというワーク形式を選びました。
実際に私もワークをファシリながらワークに参加しましたが、各メンバーの考えを聞き、そういった熱い思いを持って仕事をされていたんだな、など刺激になる考えが多くありました。
バリューはコレ!行動指針はコレ!と暗記するのではなく、バリューがあって、それを自分に落とし込んだときにこう解釈する、という考えを分かち合う行為こそがバリューの浸透に繋がるのだなと、感じました。
第4ステップ 評価対象と評価プロセス設計
バリュー探求ワークと並行しながらMVVを達成するための人事評価制度として何を評価対象とするか人事、経営陣で議論を進めました。
一般的な評価対象は成果、行動、技術/技範、知識、考え方/価値観のカテゴリーがあり、コードキャンプでは今まで役割職責評価と成果評価の2つでした。
MVVを達成するための組織とはどういった組織か、経営陣と議論を重ね、MVVを達成するには個人のパフォーマンスを最大化させ、個人の成長が会社の成長に連動するような人事評価制度が必要と考えました。
一人ひとりの目的地が点でバラついているのではなく、同じ目的地にたどり着くように、何ができるようになれば次のステップに上がるのか、それぞれの職責が明確化され、わかりやすい階層設計を創ることとしました。
今までの役割職責評価についてはマネジメントかプレイヤーという階層の下に6階層の職位が分けられていました。ただこのとき例えばプロフェッショナルとスペシャリストの明確な職位の定義の程度の違いは定められていませんでした。
新しい人事評価制度では、グレードという役職階層の下にランクを作成し、そのグレードランクの職責の重さをわかりやすくするために、それぞれのランクに応じた職能を定めることとしました。
この職能評価により、コードキャンプとして必要な職能を定め、どういった能力やスキルを高めてほしいと、会社の目指す方向性を示しながら個人の成長ステップが促されることを期待しました。
コードキャンプで必要な職能はなにか、経済産業省が出している社会人基礎力やたくさんの書籍、参考文献とにらめっこし人事、経営陣でひたすら議論し、一つずつ設計していきました。
そして職能評価は「責任を持って仕事を進める力」、「チームで働く力」、「経営」の3つの区分の中から下の資料の通り、8項目に定義しました。
この8項目の職能においてこのグレードランクメンバーにはこういったパフォーマンスをしてほしいと、ランク別に定義し、更に細かく階層化していきました。
例えばジュニアメンバーの課題解決力ならG1-1は上司の指示を受けて対応できればOK、G1-2なら上司と相談しながら対応策を検討できればOK、G1-3なら一時的にでも課題解決できればOKといったように、それぞれのグレードランクに応じてステップを明確化しました。
PJメンバーの小泉と共に、個人の成長ステップやコードキャンプで必要な職能はなにか、一覧化し、整理し、階層化し、8つの職能×6グレード×3ランクずつで144項目の職能ステップ(一部階層持ち上がり有り)を作っていき、正直かなりの労力を使いました。。。
経営陣へ素案を出して議論し、修正案を出して、更に議論し、ときには0から作り直して、案をだして議論し、修正し、を繰り返して形にしていきました。
個人の成長は△△ができて〇〇へステップを踏むのでは、××が出来ないとグレードは上がらないはず、など経営陣とときに考え方の違いで意見が分かれることもありましたが、一つずつ考えを整理し、分解しながら一つの形に落とし込めたことはとても有意義で価値のある時間を過ごすことができ、とても良い経験をさせてもらえました。
そして概ね完成形となったバージョン5のタイミングでリーダーへ職能トライアルとして、実際に自身のメンバーを職能評価で当てはめて考えた場合に、設定階層とその職務内容が一致しているか、職能グレードが実際の業務とマッチしているか、取り漏れている職能はないかなど、細かくメンバー別に見て職能グレードを確認してもらいました。
そしてリーダーから出た意見や質問などを解消していきながら、最終的にバージョン8まで作成し、グレードランクに応じた職能を定め、グレードテーブルを作成していきました。
実際の評価プロセスとしては、とてもシンプルにこのグレードテーブルに対応した職能相当のパフォーマンスが実行できたか、を評価基準とし、メンバーと上長でなぜこのグレードランクなのか、グレードテーブルを参照しながら、すり合わせを行います。
例えばミドルG2グレードメンバーの場合、課題解決力ならG2-1相当のパフォーマンスなのか、G2−2相当のパフォーマンスなのか、実際の業務に落とし込みながらメンバーと上長ですり合わせをしてもらうイメージです。
A上長とB上長があるパフォーマンスに対して全て完全一致の評価結果をすることは難しいと思いますが、その評価の算定材料として、各グレードランクの職能を細かく定義していますので、そのズレを最小限にすることができ、上の人事評価の目的で記載した通り、公平感ある処遇の分配の実現に近づくことが出来たと思っています。
また上から下と縦の関係だけでの評価ではなく横から横の評価として360度評価を追加し、多角的な評価を通してより公平感ある評価プロセスとなるように変更しました。
360度評価は相手の成長を願い、お互いがフィードバックし刺激しあいながら成長できる組織を目指したいという思いも込めて追加しています。
また実際の評価には影響しませんが、リーダーと評価対象を議論をする中で、一つ視点を中長期に見据えた個人のキャリア設計もメンバーとリーダーで対話する項目を設けても良いのではという意見が上がり、採用することとしました。
今は経理をしているけど、実はエンジニアを目指したい、、など中長期的に挑戦してみたい、目指したい姿を振り返る機会として記載し、会社として100%支援を確約できるものではありませんが、個人のキャリアの可能性を狭めることなく、どんどんと支援できるような組織でいたいと思っています。
評価対象を役割職責評価から職能評価へ変更し、スキルや能力について細かく定めていきましたが、職能評価のように一定の定量化された評価だけではなく、MVV達成に向けてどういった行動や価値観を大切にし行動してほしいというバリューから更に具体に落とした情意項目としての行動指針も新たに定めていくこととしました。
第5ステップ 行動指針を策定し行動指針評価を追加
第3ステップでバリューについて共通認識を深めましたが、より具体に落とした行動指針を定めるべく、全社で行動指針言語化ワークを実施しました。
バリュー探求ワーク同様に各事業部で集まり、miroを用いて、各メンバーの考えを出しあい、理解を深めていきました。
実際に私もワークに参加しながら、コードキャンプは「新しい価値を創造し、自走するDX人材を、世の中に」というビジョンを設けていますが、スピード感ある新しい社会的ニーズキャッチの必要性や自分自身もアップデートし、学び続ける向上心の思いの強さは強く根付いており、受講生が真に満足できるカリキュラムや学習手法を提供したいというメンバーの本質的な価値提供への思いの強さに1メンバーとして感心したワークでもありました。
そして最終的には経営陣の意向も反映され、行動指針を策定し、まずは自分なりに理解し、行動をしていくことから、と評価に組み込むこととしました。
第6ステップ 新評価制度説明会実施
そして遂に2023年11月末、来期の人事評価が2024年1月からスタートする直前に、新しい人事評価制度について、また現評価や報酬からどのように新評価制度へ移行していくのか、など全社へ新評価制度説明会を実施しました。
メンバーとは評価デザインアンケートやバリュー探求ワーク、また行動指針言語化ワークを通して、現状の評価デザインPJの進捗状況は都度共有していましたが、実際の評価対象や評価プロセスはリーダー、人事、経営陣での議論で進めていきましたので、職能評価の追加など大きい変更点は細かく意図も含めて説明するように意識しました。
今回の改定内容として一番大きい変更点である職能評価の追加については、リーダーに行った職能トライアル同様に、メンバーにもグレードテーブルを理解してもらうためにメンバー職能トライアルを実施し、例えば課題解決力は自分がどのグレードランクを達成できていると考えるか、など実際に行ってもらい、疑問点や質問などを集め、解消していきました。
そして2024年2月より新しい人事評価制度へ移行完了いたしました!
評価デザインPJを振り返り
MVVの達成を目指し、会社として期待している方向性を示しながら、個人のパフォーマンスを最大化させ、個人の成長が会社の成長に連動するような人事評価制度を策定することが出来たと思っています。
大きい変更点
職能評価を追加し、グレードランクの職責を明確化させ、個人の成長ステップをわかりやすくしたこと
360度評価を追加し、お互いがフィードバックし刺激しあいながら成長できるよう多角的な評価プロセスを取り入れたこと
中長期視点でのキャリア形成を考え、表現する欄を設けたこと
行動指針を策定し、どういった行動を目指していくか定義、行動指針評価を追加したこと
ただ評価デザインPJを振り返り、良かった点だけではなく、悩ましかった点も多くありました。
良かった点
メンバーを巻き込んでアンケートやワークを実施したのは、様々な考えを知れてよかった、またそのワーク自体が組織へよい効果を与えられたと感じた
他社事例など様々な参考文献を参考にしながらコードキャンプの目指す組織にするためには、と経営陣と議論を重ねながら人事評価を作れたことが良かった
徹底した下調べにより経営陣からは意思決定がスムーズにできたと言っていただけた
評価対象、評価プロセス、行動指針についてコードキャンプの今後の組織を作っていく制度として幅広く、バランスよく制度設計ができた
悩ましかった点
評価対象の選定やプロセスの決定は人事と経営陣がメインでの議論で1ヶ月程度で決定していった。並行してリーダー陣とも議論を進めていたが、来期の人事評価制度から移行という期限があり、スケジュール的にギリギリで正直カツカツだった。評価改定PJとして1年は最低必要、じっくりと行うなら1年半は必要と認識した
アンケートやワークを通して、メンバーを巻き込んでいった反面、人事評価の目的で記載した通り、人事評価は企業が重視する価値の序列を直接的に表したものが人事評価であり、経営陣の意向や思いを人事評価制度に反映していく必要がある。その経営陣としてのキメの意思決定とメンバーからの意見の汲み取りのバランスを表現していくのが難しかった
経理や会計畑の経歴の私がコーポレートリーダーとして0から人事評価制度を設計していきましたが、大分スケジュール的にはギリギリで特にリーダーには毎週のように問いを投げかけ応えていただきました。。。感謝m(_ _)m
また経営陣にも素案を出しては見事に砕いていただいたりし笑、たくさん議論を重ねて、本当に皆さんの協力がなければ、ここまでのスパンで人事評価制度改定は難しかったと思っています。ご協力ありがとうございました!!
新しいMVVを掲げ、新しい人事評価制度を下に新しいコードキャンプをこれから創り上げていきたいと思っています!
随時新メンバーも募集しておりますので、ご興味のある方はぜひお声がけください!
この大長文をここまでお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
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