【2024 読了 No.2】富永雄輔著『男の子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)読了。
く
著者は学習塾の経営者。長い指導経験と卓越した観察力をベースにした著述である。
特にこの本では、(これは男の子に限らないことだが、)基礎学力の重要性を再三強調している。
昨今は、昨年度最後に読了した本の著者のように、「考えることこそ重要だ」として、基礎学力の積み重ねを軽視する傾向がある。
しかし、どんな思考問題も日本史の論述問題も、基礎学力が無ければ解けない。
富永氏がこの著書で書いているように、
「一見、難しそうに見えるこうした問題も、1つひとつの要素に分解していけば、必ず解くことができるもので」、「分解したときの基礎的な知識をいかに持っているかが重要なだけ」なのである。
「一見、難しそうに見える問題も…分解していけば、必ず解ける」例として、私の専門分野(大学入試日本史の指導)で説明してみよう。。
2023年度の一橋大学の二次試験日本史の大問1は総字数400字の論述に見えるが、あくまでも、問1~5全てを合わせた字数が400字なのである。
1つひとつを分解すれば、問1の海保青陵を問う問題だけが難しかったが、問3~問5は超基本用語の説明がメインであった。
差が出そうなのは問2。だが、その問2さえも、「経世論を朱子学および荻生徂徠の学問とそれぞれ関連づけて説明しなさい」という問題でも、分解していけば、朱子学が封建教学であること、同じ儒学でも荻生徂徠の学派は古学(の中の古文辞学派)と呼ばれていること、荻生徂徠は著書『政談』では武士土着論を唱えていること、彼の弟子の太宰春台も『経済録』で藩専売制を勧めていることなどが書ければよい。そして、最後の締めに荻生徂徠とその弟子の学問が経済構造の再構築にまで至り、経世論の先駆けになったことを書けばまとまるわけである。
分解していけば、なんのこっちゃない。山川出版社の教科書や用語集に書いてあるものを総動員すれば書けるわけである。
大学の入試の日本史学習においては、私が高校生の昔も今も、山川の教科書&用語集がスタンダードな基礎学力である。
「論述対策」とか「過去問研究」とか言う前に、基礎学力をしっかりつけるべきなのである。
そうなれば、暗記というものは避けて通れない。
暗記にはいや~な思い出がある。
私は中学入試に関しては、“御三家”に合格した、まぁ言うなれば「二月の勝者」なのだが、憧れの名門に合格したばかりの小学生の私の母は、残酷な一言を浴びせかけた。
「あなたは頭がいいんじゃなくて、暗記力が強かっただけよ」
確かに理社が得意だった。
でも、算数もめちゃ得意で、単に国語だけが苦手だっただけなのだが。
この言葉、ってか“呪い”だね😥。その後45年以上も私を苦しめてきた。
加えて憧れの名門だが、そこの先生方は頭の硬いおばさんが多くて、当時ベストセラーだった『試験に出る英単語』(略称「出る単」)等で英単語を覚えるのは「いけない」と言う。
二つのことが重なって、単純に英単語を暗記することに罪悪感を覚えるようになってしまった😔。
浪人しても、「出る単」や「豆単」を使わなかった。単に最も気に入った授業の予習で英単語を英英辞典で引いてvocabularyを増やしたのである。
考えてみりゃずいぶん無駄なことをしてきたと思う。
私は英語はそこそこ喋れるし、発音はいいらしいのだが、vocabularyが圧倒的に少ない。英文の読解なら、多少知らない単語があっても強引に類推読みができる。
でも、英検準1級筆記述大問1には、それでは太刀打ちできない。
これだけは単純暗記が絶対必要なのである。そうと分かってはいたのだが、まだ心のどこかに、拭い切れない暗記への“罪悪感”がこびりついていた。
そんな私の気持ちを代弁し、浄化してくれるフレーズがこの本にあった💡👏🎊。
「矛盾したことを言うようですが、暗記が得意な子どもは、できるだけ暗記を避けようとします。」
「彼らは、覚えなければならない項目が100あるとしたら、そのまま100を丸暗記するのではなく、それぞれに自分なりの意味づけをして覚えていきます」
歴史用語同士なら、その項目相互の「関連性」、漢字なら成り立ちを考えたりしながら覚えるわけで、「こうした工夫こそが、考える力に直結します。」という結論だった。
「よくぞ言ってくれた‼️」と拍手がしたかった。
ちなみに、出る単は浪人してから読んでみたのだが、驚いてしまった。英単語の成り立ちを詳しく説明してくれていた。
もっと早く読めば良かったと思う。
おばさん先生は、きっと
『出る単』を読んでもみないで、イメージだけで否定していたんだろうね。
英検準1級の単語についてはチャンツは一周してみたのだが、あまり好きになれなかった。私の場合は機械的に“こなす”より、辞書で引き直せる方がいい。
特に英検準1級対策単語となれば、その単語より一般的な既に同意語は幾つか知っている。例えば、lenient(形容詞・寛大な)が出た時点で、「これって確かtolerantが同意語だよね?」と思いつくので、両方を比べてみるというワンアクションを加えることにした。同じ「寛大な」でも、lenient の方が「甘い」ってニュアンスが強くて、tolerant は「耐性が強い」って意味も含むんだ~~~と微妙なニュアンスの違いを楽しむわけである。
何でもいいから、自分が気に入ったワンアクションを加えた方が定着力は良くなると思う。また、そこのワンアクションの工夫こそ、思考能力を鍛えることに繋がりそうだしね。
それにしても、世の“おばさん”や母親は頭ごなしに「いけません」って否定することが多いよね。
勉強の仕方や読む本の内容について、頭ごなしに否定するようなことはやめてほしい。少なくとも全く勉強しない、全く本を読まないよりは、ずっとずっとずっとマシなのだから。