福嶋隆史著『「本当の国語力」が驚くほどに伸びる本』(大和出版)読了。
私は日本史が専門の予備校講師だが、考えるところがあって、今年の2月から副業に個別指導も行うようになった。
夏期講習として、中三の男子生徒の国語を10コマ(15時間)も見ることになった。予備校の講師の成り立ての頃は国語の講師だったので、それなりには自信があるが、指導力増強のためにこの本を紐解いてみた。
「国語力とは論理的思考力である」と作者は断言する。
そして、「論理的思考力」を「3つの力」に集約している。
それは、「言いかえる力」「くらべる力」「たどる力」だそうだ。
「言いかえる力」というか、「言い換えを見抜く力」は、意識すると速攻で役に立つ指摘だと思った。何故なら、読解問題では、主題に関わるキーワードは何度も言い換えられながら述べられることが多いからである。
加えて、正解の選択肢は本文そのままの表現だとすぐ「正解」と見抜かれてしまうからか、不自然な迄に言い換えているものが多い。ゆえに「言い換える力」というより、「言い換えを見抜く力」に留意することは、読解問題では効果的と思った。
「くらべる力」も、読解の初期の段階で、何と何とが比べられているかを読み取ることで、作者の主旨が理解しやすいだろう。
だが、国語の読解では、意味段落分けや接続詞の穴埋め問題等、この3つの型だけでは対応できない設問が多いと感じている。
ただこれも、「ふくしま式本当の国語力が身につく問題集」の「読解問題」などをやってみて、初めて身についていくのかも知れない。
それより、「言いかえる力」のうち、“抽象化←→具体化“の力は、私の専門の大学入試の日本史での論述指導に役立つと思った。
高校生や高卒生の論述で、文字数を無駄使いする生徒が多くいる。彼らはいくつかの具体例を抽象化できず、だらだらと具体例を並べて文章が纏まらなくなる。そういう生徒らには、いくつかの具体例を抽象化するように指導してみようと思った。
しかし、この指導は難しい。抽象化するには抽象的な語句の語彙力が物を言う。日本史の教科書の歴史用語ではない”懐柔策“のような頻出”抽象語句“を理解させ覚えさせなければならない。
一方で、著しく抽象的に書きすぎて、指定字数の7割位しか書けない生徒がいる。こういう生徒には、その抽象的な内容について具体例をいくつかあげて、補強するように指導してみようと思った。
ただ、こちらの指導はそんなに大変ではない。「たとえば、」ひとつ付けて、事例を挙げるだけだから。
大変なのは、生徒自身。具体的な歴史用語を正しい漢字で書けるように練習しなければならないから。
結局は国立大二次の論述問題も、私大の用語暗記中心とされる問題も、対策は同じになってしまうのだ。
でも、「結局は…」を納得されられれば、日本史論述指導は殆んど成功である。
生徒の中には、論述には特別な勉強が必要だと考えている生徒が多い。こういう生徒ほど、論述は大学ごとの出題傾向は個性が強く、その対策には講師の付きっきりの個人指導が必要と考える。
そして、こういう生徒程、私が授業の進度に合わせて出している添削課題(勿論、添削料無しの大奉仕だよ)をやってくれない😔。
教科書を参照して添削課題を進めてさえくれれば、授業の復習になるし、論述問題なんて、一橋のだって慶応の経済のだって実は教科書レベルってか、ほとんどそのままだってことが分かるのになぁ~~~😅。
分かれば、当然、対策は教科書の熟読だと分かる。
予備校の授業は、教科書の読みの難しい所を解説してくれるものと位置付けてくれればいい。加えてペースメーカー代わりに考えて貰えればいいのだ。それ以上でも、それ以下でもないのだ。
そこの所を理解させるためにも、ふくしま式の「言いかえる力」を説明に多用してみよう。
まだまだこの本のエッセンスを全て理解したわけではないが、指導をしながら読み返したり、「ふくしま式」の問題集もやってみながら、試行錯誤していきたい。
本当は中学生の国語指導のために読み始めた本だが、大学受験の日本史論述の指導にこそ役に立ちそうだ。