映画『不死身ラヴァーズ』を観てきた話。#映画感想文
人間の記憶って曖昧で本当に当てになんない。それは例えれば砂の器を脳だとして、僕らの記憶は水。毎日その器にドボドボ水を注ぐけど、どんどん砂が溶けて底から水が漏れちゃう。そして、その水は下に行けば行くほど自分が忘れたいことになっていく。
嫌なことってさ、都合よく器から漏れちゃう。
なんというかそんな映画だった。
映画『不死身ラヴァーズ』。漫画家・高木ユーナ氏の初連載作であった同作を実写化。監督は『ちょっと思い出しただけ』の松居大悟監督。主演には新進気鋭の見上愛を迎え、「思い人が忽然と姿を消す」という不条理にひたむきに立ち向かっていくという恋を描いたコメディタッチな恋愛作品である。
はい。まず最初に言っておきます。これを「恋愛を題材としたファンタジー映画」だと思って観に行くと完全なミスリードになります。僕もそうでした。予告を見ただけではSFっぽいのかな?というイメージを膨らませていましたが、それが大違い。
あまり言及しない方がこの作品は面白いので不用意な発言を控えますが、作品全体はとてもテンポ感が良くてグイグイ引き込まれていく。
特に、高校時代から大学生ぐらいまで二人が出会いを繰り返し距離を詰め、両思いになり、じゅんが消える。このエンドレスリピートの部分は凄く印象的だった。基本的にはりのとじゅんが出会って〜の繰り返しなんだが、なんだが全部の出会いが一つ一つ新鮮なものに思えるようで、見ているこっちまでいちいち恋愛をリセットしている気分になる。
なんというか、簡略に言うと「恋愛の一番楽しいところの上澄み」を掬いまくって濃縮還元したものを直で飲まされてる気分だった。テキーラショットで3・4杯いっちゃってる感じ?飲んだことないけど。
さながら、さまざまな黄金パターンの恋愛を
一気飲みしてるようでした。凄い畳み掛け。
あとシンプルに見上さんがいちいち可愛いんじゃ。JRAのCMに長澤まさみ氏と出ている子ってイメージが先行してたけど、正直魅力的なヒロインすぎる。このキャスティング考えた人天才だと思います。ケロッと明るくまっすぐで、でも打たれ弱く繊細なところもある。
この微妙な仕草を演じ切れる人って素晴らしい。
作品の魅力を何倍にも引き上げてくれています。
ちょうど先日、同じ恋愛映画でも全くテイストの異なる「四月になれば彼女は」を見てきたばかりでの、この作品。両者を比較するなら、「四月〜」はこれから始まってゆく永遠の愛を感じさせるもので、後者の本作は若い時の刹那的で、人生の中で一瞬輝いていた彗星みたいな恋って感じがした。
でも、その瞬く間の輝きを胸にしまって
生きている人ってきっと多いと思う。
いや、絶対に多いはず。
ついつい若い頃の恋愛を美化して酒のつまみに語っちゃいがちな僕らにこそ、グサグサ突き刺さってくる「理想と現実」が、この作品に詰まっている気がする。その現実から逃げずに、りのは最後までじゅんと向き合い続けた。そのひたむきさを、僕らはトレースできるだろうか?
そして、そのひたむきさが時に無駄だと感じる瞬間やどうせだめだと消極的になる瞬間もある。だがそれだけで終わらせず、きちんと自分の恋にどんな問題があることを自覚し、見つめ直させる時間が来る。辛いが、それが逃げきれない恋愛のリアル。
きっと、恋愛にここまでストイックにド直球で向き合い続けた主人公はいない気がする。そんなりののことが、この作品を通して途中感情の浮き沈みはあったものの、最後にはとても愛おしく思えること間違いない。
ちなみにこの作品を見た後は
「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」を聴きたくなります。
リンクを貼っておきますから見たら帰ってきてね。
おしまい。
こちらの記事もおすすめ。↓