映画「国家が破産する日」を観た話。
エヴァ熱が冷めやらぬ今日この頃。
久方ぶりに韓国の映画を見た。
うちの母は韓国ドラマが好きだった。休日には必ず家にこもり、平日のうちに撮り溜めした韓ドラを延々と見るのがお約束だった。最初のころこそ私も一緒になって見たりしていたのだが、日本のドラマの面白さに開眼していくうちに、韓国ドラマ独特の雰囲気というか作りの特殊さが受け付けなくなってきて、だんだん韓ドラから離れていった。
そういった背景があるのかどうかは分からないが、正直私の中に韓国が作るコンテンツへの若干の苦手意識があった。しかし、最近そんな考えを改めてみようと思わされた衝撃的な映画に出会った。
「国家が破産する日」という韓国映画。
Amazonプライムのレンタル100円セールを利用して借りてみた。ついこの間YouTubeで予告編をおすすめされたので最近の作品なのかと思いきや、なんと2年前の2019年の作品。こんな映画上映されてたっけか?と思いながら、鑑賞。
(調べたところ、韓国では260万人を動員する大ヒット作だったとのこと。納得である。)
私が生まれる前の1997年、東南アジア各地で頻発した通貨危機のあおりをうけ、韓国のウォンの価値が暴落し経済が致命的なダメージを受ける。韓国は紆余曲折の末、IMF(国際通貨基金)の支援下に入り、大規模な経済改革を断行する。この映画は、その紆余曲折を克明に描いた作品である。
大筋は、国の通貨政策チームが国家破産回避を目指す、いわゆる「チーム物」なわけだが、メイン人物は実は3人いる。
国の通貨政策チーム長であるハン・シヒョン。金融コンサルタントのユン・ジョンハク。そして、食器工場の経営者であるガプス。ハンは「危機を回避しようと奔走する官僚」。ユンは「危機を利用してのし上がろうとするギャンブラー」。ガプスは「危機に完全に飲み込まれる一般市民」。三者三様、全く違う視点からの経済危機が描かれる。この視点の違いが非常にエッセンスとして物語全体を活性化させている。
国の内幕だけが淡々と描かれる史実映画として終わらず、韓国社会の暗い部分に一歩踏み込んだような生生しさが、この三者によってなんともいえず醸し出されているように思う。まるで97年の韓国にタイムトリップしてしまったかのような感覚に陥り、とてつもない不安感が体を襲ってくる。
重要な部分のネタバレになるので言えないのが残念なのだが、一見すると「繋がらないだろう」と思っていた人物同士に実は深い繋がりがあったということが分かる映画終盤、私は涙が止まらなかった。はっきり言って、全く予期できていなかった仕掛けだったからだ。これはきっと、この国の経済問題といういまいちピンとこない問題が、実は自分のすぐ隣にも横たわって首をもたげているのかもしれないということのメタファーなのかもしれない。
今日本がIOCに物申せない状況と、韓国がIMFに物申せなかった状況。まあタイミングの問題かもしれないが、どうしても私はこの2つを重ねて見てしまう。結局、国家の利権争いや権勢や足の引っ張り合いも、大国の力の前には無意味なのか・・・と感じざるを得なかった。
「新感染」しかり「パラサイト-半地下の家族-」しかり、近年の韓国映画は世界でも大きな評価を受けている。韓国映画の一大ムーブメントは、これからももう少し続くかもしれない。私も、韓ドラで植え付けられた先入観を捨てて、隣国の映画文化に少し浸ってみたいと思う。
いやー・・・侮れないな、韓国映画。
おしまい。