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タイトルが自由律俳句

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自由律俳句をタイトルに載せて、500文字以下のショートエッセイを書いています。
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#タイトルが自由律俳句

春の道 無邪気な母が先導する

春の道 無邪気な母が先導する

#休日のすごし方 #タイトルが自由律俳句

『ここの木だったかな〜、こっちじゃなかったかな〜』
母が一生懸命探しているのは、以前カタツムリがたくさん付いていたという1本の木である。約2メートル間隔で生えている、2〜3本の木の間を行ったり来たりしている。
・(今日は晴天で木の表面は乾いていたので、別のところに移動しているのではないか。)
・(前にいたからと言って、今日そこにいるとは限らないのではない

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施錠が気になる布団の中

施錠が気になる布団の中

#タイトルが自由律俳句

お手洗いに行って、リビング方面に帰る前に、一度リビングとは反対方面の玄関に向かい、ドアの施錠を確認するのが日常だ。上の鍵よし、下の鍵よし、チェーンロックよし。工場の指差し確認同然だ。こちらの3点がそろっていないと安心できないが、逆にそろっていると深い安心を得る。最近は、確認を容易にするために、玄関を整理した。眺めの良い小さな愛すべき我が玄関。間抜けな私の行動は、行き過ぎる

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新しい靴が硬い

新しい靴が硬い

#タイトルが自由律俳句

主要な駅で人がごっそり降りると、正面の席が空いたので座ることにした。腰を下ろすと足の裏への圧力が緩んで足先がじんわり温まるのを感じた。今まで血の巡りが悪かったようだ。新しい靴を履いてきたせいだ。
靴はきれいな方がいいと、誰かが言っていたが、それはどんな場面の話だったか思い出せない。少なくとも今日はあまり元気もないし、柔らかで履きなれた靴を履いて来るべきだった。しかも行き先

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腹痛の原因がふたつみっつある

腹痛の原因がふたつみっつある

#タイトルが自由律俳句  

高校生の頃、通学のために毎日電車に乗っていた。田舎なので、電車をひとつ逃してしまうと、30分待たなければならなかった。駅で電車を待つという時間を、人生で一番過ごしていた時期だ。その際、腹痛が同行している場合がある。腹痛は私にピッタリと寄り添う。

私は困ってしまう。駅にはベンチがあったので座る。けれど、本当は横になりたい。横になると痛みが収まることを知っていたからだ。し

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サンタクロースを信じる類の抗い

サンタクロースを信じる類の抗い

#タイトルが自由律俳句

小学校3年生のころ、植物と会話がしたくて、帰り道一人の時、小さな声で道端の草花に話しかけていたことがある。返事が聞こえたことは一度もない。

中1のころ、サンタクロースをいつまで信じていたかという話になった。隣にいた友達が、最近まで信じていたよと言ったので、わたしも!と言う。本当は、当時も信じていた。

本音を言えば、植物からの返答もサンタクロースも初めから信じていなかっ

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冬。銭湯に行く約束をした心熱い

冬。銭湯に行く約束をした心熱い

30年弱生きてきたので、自分自身を癒す方法をわかってきた。言葉を変えると、自分の心が癒される瞬間を知ってきた。それはひとつではなく、いくつかある。最近知ったもので言うと、誰かに何かを教えてもらった瞬間。

昨日、寒い日だった。好きな人と会い、その人が好きな銭湯を教えてもらった。すると、頼んでもいないのに、お風呂の数やその他の施設情報を教えてくれる。頼んでもいないのに、安くチケットを買う方法を教えて

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子どもみたいな自分をなだめている

子どもみたいな自分をなだめている

以前から嘘をつくのが嫌いで、自分で自分を追い込むことが多かった。ただ、最近まで自分を追い込んでいるということに気づいてすらいなかった。客観的な視点というものは、持とうとしてもすぐに持てない。持とうとして数年経った今、気づいたら小さいそれを持っていた。他の人と比べるとだいぶ遅い時期に持たされた。

『嘘をつくのが嫌い』の所以をたどると、そこには正義感がいて、その正義感は私を怒らせたり無駄に強くしたり

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