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20代早期離職期のキャリアブレイクを振り返る
わたしは、新卒で入社した大手の人材総合サービス会社を2年経たずに退職した。あんなに就活を頑張り、就活の結果を在学生に発表する機会をもらったにもかかわらず。
続けられなかった理由はいろいろある。
そこから約半年間、わたしはニートだった。最後の2か月は転職活動をしていたので、求職者ではあったけれど。でも、新卒でがむしゃらに朝から夜まで働いた結果、勝手に貯まっていったお金を頼りに、なににも縛られずに半年を過ごした。
なにをしていたのか、正確にはあまり覚えていない。でも、気持ちはいまでも鮮明に思い出せる。
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やめてすぐに働く気にはなれず、かといって会社を辞めたことを友人にも言えず。とにかく家族と、それから当時お付き合いしていた彼と時間を共にした。
辞めてすぐは、毎日を埋め尽くしていた仕事をもうしなくてよいことに安堵したように思う。
もう毎日テレアポをしなくてもいいし、満員電車で押しつぶされなくていいし、ヒールを履いて走り回らなくていいし、急にパーマをかけてもちょっと派手な服を着てもなにも言われない。
でも、1週間ほどするとその安堵は急激に不安と焦りに変わった。
同期で会社を辞めたのはわたしが初めてだった。みんななんやかんや言いながら仕事を毎日頑張っている。2年目で会社を辞めたわたしに再就職先が見つかるのか。こんな生活をしていて、仕事に戻れるのだろうか。そもそもなんで辞めたんだっけ?辞めてなにをしたいのだろう。
なにもやる気が起きなくて、ずっと家にいた。たまに犬と散歩に行って、空が青かったり、花がきれいだったり、そんなことに気がついては涙が出た。
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その少しあと、同期の結婚式があった。社内婚だったので、参列者は前職の人ばかりなことが想定でき、辞めたわたしは正直行きづらい。でも、行きたいし、行ったほうがいい気がして、旅も兼ねて名古屋までひとりで行くことを決めた。一人旅はこれが人生で初めてだった。
どうだったかというと、行って正解だった。
まだ転職活動もスタートさせていない。次、何がやりたいのかも定まっていない。なんなら会社を辞めてからなにもしていない。
そんなわたしにも一緒に笑いあえる仲間がいたことに気が付いたから。
「久しぶり!」となにも変わらずに笑って手を振ってくれる先輩がいた。「大丈夫か?」と心配してくれる上司がいた。これからのことはなにも聞かずに、この瞬間を一緒に楽しんでくれる同期がいた。
働いていた期間、何もできなかったと思っていた。でも、違った。少なくとも仲間に出会えたし、こうやって辞めてからも一緒に笑いあえる居場所を作ることができた。
あそこは、アウェーではなく、確実にわたしにとって、ひとつのホームだったように思う。
直接的に言われたわけではないけれど「おかえり」って言われて、「ただいま」って返すような、そんなコミュニケーションをもらったように感じた。
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そこからなんとなく地に足をつけてものごとを考えれるようになり、しばらく悩んでいたけれど、再就職は人事職で探すことに決めた。
理由は、就職活動のときに一番なりたかった職種が「カウンセラー」と「人事」だったから。
(転職活動を長引かせたくなかったので、〇月までにには再就職をすると決めて、事務職や営業職も並行して受けたけど。)
当時、未経験人事の求人は少なく、しかも第二新卒という言葉もまだ言われ始めたぐらいの時期だったから、再就職はなかなか大変だった。
焦りもでたけれど、ここで諦めたらダメな気がして、最後までやりきり、なんとか人事未経験で入社する会社が決まった。
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わたしはいまもその会社で働いている。途中退職して、1年半ほど専業主婦をして、正社員から業務委託に切り替わったけれど、在籍としてはもう7年目になった。
この会社を一度退職したのは、子どもが生まれたからではないのだけれど(いやで辞めたわけでもない)。子どもが生まれてちょうど1年ほどたったときに、社長から「また一緒に仕事をしないか」と連絡をもらい、業務委託で出戻りさせてもらった。
専業主婦期間は、子どもとすごす豊かな時間でもあり、夫と怒涛の喧嘩を繰り返した地獄の日々であり、社会復帰を模索し焦った過程でもあった。
前回の離職期間よりも長く、そして終わりが見えなかった。でも、このときのわたしを救ってくれたのも「おかえり」と言ってくれる居場所の存在だったのだ。
「また一緒に仕事をしないか」という言葉は、「いつでも帰っておいで」と言われるような感覚に近かった。
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思い返すと、これ以外にも何度かわたしは家族以外の人から「おかえりなさい」と言ってもらった経験があるのだ。すごいことだなと改めて思う。
ということで、わたしはいつも「おかえり」「ただいま」と言い合える環境に助けられてきた。家族以外で、このコミュニケーションをとれる場所が人生の中でいくつかつくれたことが、いまのわたしを支えてくれている。
だからわたしも、だれかに「おかえり」と言いたくて、いま頑張っているのだと思う。
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