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2023年2月の記事一覧
息をつめて見ていたものは何だったのか。重い選択があとをひく『息をつめて』
少年事件の被害者、加害者どちらも小説の題材としては珍しくないものだけれど、この小説はその描き方が面白かったし、親の立場に立ってみると、様々なところで重い問いを投げかけられたような気持ちになります。
冒頭、自分の存在を全てから隠すように、警察や周囲の人に気づかれないように生きている主人公(51才女性)の様子を見ていて、どうして「息をひそめる」ではなく「息をつめる」という言葉を使ったんだろうと少し疑
アメリカを蝕むオピオイド危機を描いた『ペイン・キラー』
「オピオイド危機」という言葉は耳にしたことがあって、このジャンルでは『DOPE SICK』という本も出ています。
今回読んだ『PAIN KILLER』も原著発売は20年のこと、危機として認識されて、ここまで話題になっているものなのだからどこか「すでに終わった話」ではないかと感じていたのです。だからこそ、オビの”現在進行中の惨劇なのだ”という惹句がひっかかりました。
こんなことが起こっていたら、
空を仰がずにはいられないミステリ三冠『われら闇より天を見る』
ミステリランキング三冠というのはそうそうはないことで、メディアはもちろん、身近なところでも読んでよかった、面白かったという声を聞いてきました。それをようやく読了。
もともと翻訳本を読むのが得意な方ではないので、冒頭で流れに乗るまではなかなか苦労しました。主人公のダッチェスがヤングケアラーのような状態にあって、それでも自分で自分を”無法者”とレッテルしつつ無茶しながら痛々しい頑張りをしているので、
近未来の日本について改めて考えた『北関東「移民」アンダーグラウンド』
表紙はどピンクだし、”ついに北関東ベトナム人アンダーグラウンドのボス、「群馬の兄貴」にたどり着く”なんてな内容情報が書いてあるし、どこか面白おかしい話を期待して興味本位で読み始めた本でした。
移民と犯罪を結びつけたルポ、と思ってしまっても仕方が無いような風体の本には、軽い語り口からは想像がつかない重い話が書いてありました。
日本の戦後復興期、高度成長期のむちゃくちゃな感じを振り返るノンフィクショ