アメリカを蝕むオピオイド危機を描いた『ペイン・キラー』
「オピオイド危機」という言葉は耳にしたことがあって、このジャンルでは『DOPE SICK』という本も出ています。
今回読んだ『PAIN KILLER』も原著発売は20年のこと、危機として認識されて、ここまで話題になっているものなのだからどこか「すでに終わった話」ではないかと感じていたのです。だからこそ、オビの”現在進行中の惨劇なのだ”という惹句がひっかかりました。
こんなことが起こっていたら、それはコロナ禍に対する日米の認識も違ってくるでしょう。それくらい、根が深く、まだまだ先が見えないのがこの問題でした。
アメリカ(だけに限った話ではないのですが)社会が病んでいて、自殺者やうつ病が増加している…といったことを書いたノンフィクションは枚挙に暇がありません。そんな中、痛みに耐えられる「夢の鎮痛剤」という宣伝で大々的に売り出されたのがオキシコチンという処方薬。
医者から出された薬を必要以上に飲んじゃいけない、という事は誰でも知っている事ですが、まさかそこにここまでの依存性や危険性があるとは思わないでしょう。医療の名のもとに国中に広がってしまった裏側には大富豪の一族(製薬会社)が抱える深い闇がありました…という実話。
Netflixで映像化決定ということで、そろそろ映像で見られるようになるんでしょうか。
この薬を使っている人、離れられなくなった人の悲劇は決して終わったわけでなく、今もまだ苦しみが続いています。様々なポイントで悪いヤツが出てくるわけなのだけれど、告発がなかったら、こういった調査報道がなかったら表に出てこなかった問題だと考えると本当に恐ろしい。下手したら全ての薬に闇があるように思えてしまいます。
この薬を産み出し、それを大々的に売り込んだ巨大製薬会社。彼らの成功は、あるマーケティングや広告でもたらされたものでした。
医療の選択の失敗は取り戻すことが出来ないことが多々あります。本来科学的真実に迫って選択すべきところと、マーケティングで選ぶこと、こういったことをきっりちと分けていかないとならないんでしょうね。