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「現場が忙しい」を言い訳にさせないために


現場業務と意思決定機会のバランスをどうとるか

現場優先で会議体を運営していませんか

施設では24時間、365日、介護職をはじめ、看護師、生活相談員、ケアマネジャー、管理栄養士、機能訓練指導員などの多職種が連携して利用者の生活を支えています。

しかし、経営層が集まる会議やフロア・ユニット内で行われる会議、各種委員会、研修など、現場を抜けて話し合ったり、意思決定に関わったり、学び合いの機会があります。
会議のファシリテーターや研修の講師を務める立場として、当初予定していた職員が参加できない、ということが少なくありません。
私の立場としては優先度を高くして参加して欲しいと思いますが、どうしても現場を抜け出せない状況があることもないがしろには出来ません。

ただし、"参加者が集まらないと会議や委員会が開けない"、"担当者が不在のため意思決定は来月まで持ち越し"となると、議論や意思決定が後回しになってしまい、話し合う必要があることが話し合えず、かえって現場の困りごとが放置されたままということはないでしょうか。

特にコロナ禍においては、"現場が大変だから会議や委員会、研修も行わない"という施設もありましたが、その場合、上記のようなことが起こってしまい、余計事態をこじらせかねません。

会議は月1回、とは限らない

「経営会議は毎月第〇、○曜日」「〇〇委員会は毎月第〇、○曜日」のように、各種会議体や委員会は月1回を基本に行われていることが多いと思いますが、シフト勤務で多職種や複数名が参加するゆえ、頻繁に集まれない(集まりにくい)から、特定の曜日に固定することでシフトを調整しやすくしています。

ただし、議論の進捗状況や意思決定しなければならないタイミングによっては、月1回では不十分なこともあると思います。
その場合は、会議を"臨時"で開催できているでしょうか?

先日、稼働率を改善するため待機者の本入所を促そうとしたら、「入所判定会議は月末です」という悠長な返答があったため、「臨時で今すぐ開いてください」と依頼したら、すぐに開催し、今月末までに4名の入所が決まりました。
月末の入所判定会議まで何もしないで待っていたら、稼働率の改善が先延ばし(減収が拡大していた)になっていたところです…。

では、どのように現場業務と組織の意思決定機会とのバランスを取り、組織管理やサービス提供を滞りなく進めることが出来るかを考察していきましょう。

その場にいなくても参加できる環境をつくる

照会や会議次第を活用して参加者からの発言・意見を募る

事前にシフトの都合で会議や委員会に参加できない状況が分かっていれば、"当日いないからしょうがない"で終わらせるのではなく、"照会"という方法で、当日参加できなくても発言や意見を募るようにしましょう。

介護支援ソフトにもよりますが、当施設のソフトでは"照会"という機能があります。
例えば、カンファレンスに参加できない多職種が事前に共有事項を記載することが出来る仕様になっており、話し合う必要がある事項や意思決定して欲しいことを申し伝えることが出来ます。
大半の事柄を文字にして残し、補足的に口頭で説明すれば、その場に参加できなくても、参加しているのと同じくらい必要な情報を共有できるでしょう。

また、各種会議の次第が共有フォルダにあり、自由に加筆修正できる状態で管理されていれば、当日参加できなくても、「いついつまでに次第に意見や提案内容を"照会"として加筆してください」と依頼しましょう。
会議の次第を当日配布しているような施設・事業所では、何を議論し、意思決定するかがそのタイミングにならないと分からないため、会議そのものがお通夜のような状態になっていないでしょうか。

LINE WORKSなどのグループウェアを導入していれば、多職種のグループトークで共有したい内容を発信することも出来ます。
注意点としては、グループウェアで情報発信しているから直接口頭でコミュニケーションを取らなくてよいのではなく、グループウェアで発信するとともに口頭で補足したり、それをきっかけにコミュニケーションの量を増やすためのツールとして位置付けることです。
グループウェアを導入したのに情報共有がかえってしにくくなっている状況がある場合、グループウェアに依存しすぎて、コミュニケーションの量が減っていないでしょうか。

Zoomを施設内でも活用する

Zoomを用いたオンライン研修は最たる例で、研修会場に行かなくても研修を受けられるツールとして、皆さんの施設・事業所でも当たり前のように使用していると思います。
フロア・ユニットから抜け出せなくても、見守りを兼ねてオンラインで参加できる状況であれば、会議室とフロア・ユニットをオンラインでつなげ、その場にいなくても参加できる環境をつくることが出来ます。

私が所属している施設のリーダー層や中堅向けの研修、お客様の研修では、参加できない職員向けにZoomを用いて、画面共有でレジュメを映し、講義内容をレコーディングをしています。
研修終了後、Youtubeにアップして、URLをLINE WORKSで共有し、誰でも視聴できるようにしています。
連続性のある研修もあるため、欠席したら内容が分からないということを回避できるようにしています(研修を請け負う側としては、最低限必要な対応ではないかと思っています)。

Zoomなどのオンラインツールは施設と外部を繋ぐイメージが強いですが、施設内での活用方法を探ると、いろいろ解決できることがあるかもしれません。

"現場業務だけしていればよいわけではない"ことを自覚させる

「忙しい=~できません」の式を成り立たなくさせる

「現場が忙しいので参加できません」「現場が大変なので取り組めません」といった「現場が~」を理由に「~できません」「~しません」という式が成り立ってしまいがちですが、前項のようなやり方次第(下記式の"X")でその式を成り立たなくさせることが出来ます。

・現場が忙しい=参加できません
・現場が忙しい≠参加できません+"X"
=現場が忙しい-"X"≠参加できません
=現場が忙しい-"照会で必要事項を記載"≠参加できない(=参加できる)

前項のポイントは、「その場にいない(参加できない)から私は関係ありません」という状況(環境)を改め、「その場にいなくても(参加できなくても)当事者意識を持ってやりなさい」という状況(環境)を作ることです。

「現場が忙しい」という理由を排除することは、現場業務だけしていればよいという考え方や組織の中の役割理解を改めさせる効果をねらっています(この"X"の部分は経営層やリーダー層が牽引していく必要があります)。
デジタル化やICT活用の副次的な効果としても期待したいところです。

「現場が忙しい」をネガティブな言い訳にしてほしくない

確かに現場業務は忙しく、感染症対策を行いながら24時間、365日、利用者の生活を支えているのは承知の上です。
だからこそ「現場が忙しい」をネガティブな言い訳にしてほしくないと考えています。
「現場が忙しい…、でも会議にも出席(発言)しないと!」「現場が忙しい…、でも研修を受けて学びたい!」というポジティブに仕事に向き合ってもらいたいと思っています。
そのための生産性の向上や現場の業務改善の提案と実行を、これからも進めていきたいと思います。

管理人

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