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数値やデータに基づく根拠ある思考を身につけよう

介護業界の賃金水準について、他産業に比べても低水準であるという報道やつぶやきをTwitter界隈でも拝見します。

ただしかし、私が関わっている調査・分析業務においては、国の"介護従事者処遇状況等調査"の賃金水準に対して、約2〜3万円程度、高い結果が出ており、あくまでも"私の肌感覚"として、「介護職員(特に特養職員)の賃金水準が低い」という主張にしっくりきていない一人です。

確かに、株式会社や訪問介護や通所介護といった在宅系を含むと、賃金水準が低くなるかもしれませんが、社会福祉法人に限っていえば、福祉医療機構(WAM)の"財務諸表等情報開示システム"で決算書や現況報告の情報を確認することが出来ますから、法人全体の人件費率や労働分配率など、職員給与に関わる経営指標は確認することができます。

訪問介護や通所介護は、経営努力により青天井で収益を増やすことが可能ですが(定員数などの条件あり)、施設系は定員数が決まっており、営業日数365日(もしくは366日)の稼働で稼働率100%の収入予測が見通せる事業です。
逆に訪問介護や通所介護など稼働状況が利用者の都合などに左右される事業を多く抱える法人では、収入予測の精度はあまり高くなく、コロナ禍においては自転車操業状態と言っても差し支えないでしょう。
このように、サービス種別によっては、収入の変動要素が高い場合、経営していく上では、賃金水準をある程度に水準に抑えなければ資金繰りが回らないという状況の法人や施設、事業所もあることでしょう。

今回はそのように法人、施設の個別具体なケースはおいておき、数値やデータに基づいて、客観的に賃金が低いのか、高いのか、またそれ以外の数値やデータの捉え方について考えていきたいと思います。

日本介護クラフトユニオン「2021年度 賃金実態調査」

まずはニュースなどでも取り上げられている、日本介護クラフトユニオン(NCCU)が、介護現場で働く組合員の処遇状況を調査し、今後の処遇改善への取り組みの政策資料として活用している「2021年度 賃金実態調査」です(本調査は掲載ができないため、リンク先からご参照ください)。

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福祉施設における経営指標をわかりやすく解説します。

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