シェア
蛟#17時毎日投稿
2021年2月12日 16:07
アルが消えてから五年間は、それまでの生活となんらかわることはなかった。アルの家は鍵が空いたままだったので、勝手に私が管理していた。 アルがいなくなっても同じように家にいき、本を読み続けた。なにか特別なことがあったと言えば、12歳の春頃だったか、この家を出入りする子供が一人増えたことだろう。 彼は門番の子供で、幼いときから親から剣をならって過ごす。私と真反対の境遇の男だった。唯一の共通点は外
2021年1月3日 12:37
目を背けたくて背けたくて背けたくて。どうしようもなく、あなたが怖かった。あの日、いつかを誓った貴方と別れた日。こうやって、死ぬほど死ぬ気で生きているのに。このひとつの失敗はあまりに大きすぎた。暗い冷たく現実のものとは到底思えないこの檻の中は、皮肉にも太陽が当たれば、透明できれいな水が薄汚い自分を写す。いかにも、あの方は私を殺す気はないと。ああ、弱味を握り、心を握り、命を握る。