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……懐郷。 風花の中に、そんな言葉が浮かんでいた。 夏澄の手をすがるように握り返す…
過去に想いを馳せ過ぎたのか、かすかな目まいがした。 風花は頭を振る。 となりの夏澄…
川を上って行くにつれて、蜜柑の木の根元が見えてきた。 少しだけ、地面が見える場所があ…
風花たちと優月は向かい合い、輪を描いてすわった。 「ここには、動物がたくさんいるんです…
「でも、早く復活できたんだな。霊力でか?」 長い間、むっつりと黙り込んでいた飛雨が、や…
「なんでよ。この仔は弱いんだよ」 草花はやけに大きな声をあげる。 「そうとは限らないだ…
草花は怯えた顔で、動物たちを呼び寄せる。護るように、両手を広げてかばった。 透明な水晶玉のような物を、立貴は取り出した。 彼はそれを両手で包むようにし、胸の前に持ってくる。 瞳を閉じて、なにかを念じるようにした。 しばらくして、水晶玉が青く輝きはじめた。 太陽のように幾筋もの光を発し、野原を照らす。 しろつめ草のほうに向かい、霊力を放ちかけていた夏澄は、それで動きを止めた。 光はだんだん強くなり、ゆっくりと広がって、春ヶ原全体を満たした。 大気が