水の空の物語 第3章 第21話
風花たちと優月は向かい合い、輪を描いてすわった。
「ここには、動物がたくさんいるんですね」
スーフィアのひざの上のうさぎを撫でながら、夏澄がまず口を開く。
優月は苦笑いした。
「ええ、山で困っている仔を、草花が片っ端から連れてくるものですから。お陰で私も立貴も右往左往です」
「もしかしてこの野原が、一年中春というのも……」
「気候を良くして植物の成長を促し、あの仔たちを養うためです。草花の願いを、龍である立貴の力を借りて叶えました」
だから、春ヶ原……。
風花は目をみはった。
そんな場所だとは考えたこともなかった。なぜか、息が詰まった。
「とても、美しいんですね」
スーフィアが微笑んだ。
「本当に。……でも」
夏澄はいい淀む。
なんでしょうと、優月は笑顔で促した。
「春ヶ原では、この近辺の精霊に動物たちを預けていると聞きました。育てきれなくなっているんですか?」
「ついこの間まで、狩猟期間でしたから」
優月は瞳を伏せた。
「今年は怪我をする仔が多くて、草花がどんどん春ヶ原に招き入れたのです。それで、ここのしろつめ草のほとんどが失われました。周りの精霊にうちの仔たちを引き取ってもらい、野原はやっとここまで回復したのです」
抑揚のない口調で続けた。
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