源氏供養
私の高校3年間は「源氏物語」と共にありました。
藤原孝標の娘を筆頭に、古より続く
婦(腐)女子の通過儀礼を素直に通り抜けました。
中二~高一で「あさきゆめみし」を読み込んでストーリーをたたき込み、
現代語訳の円地源氏、女性一人称の瀬戸内源氏を読みました。
高二になり、毎月1冊ずつ「窯変源氏物語」が刊行されはじめ、
橋本治の一人称と挿絵代わりのモノクロ写真に惹かれ、図書委員特権を行使し、一番最初に読ませていただきました。
全巻刊行後、「源氏供養」という上下巻からなるエッセイの形をとった
膨大なるあとがきが出版され即購入。
(婦人公論1991年3月~1994年2月に掲載とあるので本編と並行だった様子)
砕けた研究論文のような感じでスラスラ読めました。
印象的だったのは、仕えている主人の前で当たり前に堂々と悪口を言う女房たちがいるという「モラルのない時代」という指摘。
源氏物語とは「走る少女がいずれはそれを許されなくなる」という話で
千年前の高貴な女性は出家する以外に自由は得られないという解釈。
現在(自分)の物差しを持ち込んで読むのは興ざめかも、と思い
以後、時代物を読む時は自分の物差し・価値観を持ち込まないよう
活字を追いつつ当時の価値基準も合わせて拾い、時にはお話の時代について調べつつ、理解するよう心がけるようになりました。
ただ、少女が「翼をもがれる」感覚は千年経っても消えないと思いました。
でも、今の女性は紫式部の時代と違い、自由に走り回ることができる。
その前提をどう活かすかは「私達の問題」と橋本治は締めくくっており
10代が終わりに近づいていた私には背中を押された気がしました。
今は自分の意思で走って行けるのだよ、と。
この膨大なるあとがき、源氏物語にハマったことがある方にお薦めします。
残念ながら絶版のようです。個人的には本編より面白いと思うのですが…
※ハードカバー上巻は1993年10月刊行
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