Miyu

ヨーロッパ在住。美味しいワインと食べ物とそこで出会った男達。気がつけば、思い出はいつだって、どこだって美味しいもので溢れている。

Miyu

ヨーロッパ在住。美味しいワインと食べ物とそこで出会った男達。気がつけば、思い出はいつだって、どこだって美味しいもので溢れている。

最近の記事

春霖

日常のほんの小さな出来事 雨の止んだ後の澄んだ空気と霧 黄色いレインブーツと雫に覆われた野花 風のそよぐ音 灰色の雲間から見える青空と流れていく雲 時々落ちてくる方時雨 出くわす子鹿やリス ハンモックに揺れながらの雨宿り 束の間の非日常が日常になりつつある 今は5月 薄いセーターにコートを纏ってまるで季節感のない梅雨 芍薬が開花するのを待っている 黄色いレインコートが届く頃には春を通り抜けて夏になってるかも知れない

    • 記憶の匂い

      久しぶりの再会はココナッツの匂いに包まれた。 困ることは、別れた後も当分その余香に包まれる。 こういう男は、何が自分を惹きつけるにおいなのかを知っている。 自分の体臭を知り、常に清潔にし、そのうえで香らせる少し癖のあるココナッツの香り。 良く考えたら、こっちの男達は、オイルやクリームを身体に塗る。 サーファー達の使っているモノイオイル。 モロッコのアルガンオイル。 私が日常で使っているのは、アルガンオイルがブレンドされたアーモンドオイル。 身体からふわっと香る

      • 欲望の翼

        脚の無い鳥がいるそうだ。 飛び続けて疲れたら風の中で眠り、一生に一度だけ地上に降りる。 熱帯雨林の薫る木々の残像。 昔見たこの映画は今でも匂付の風を纏う。 1分間の時間は、いつもどこかおかしい。そういう時ほど、エロさが漂い、あの気だるい雰囲気と距離感を思い出す。 シーン1 真っ赤なハット帽。 夕日の一歩手前、誰もいない草原の二つに別れた小道を歩く。 正面から自転車に乗った少年。 右側の小道を歩く。 右側に自転車が見える。 左側の小道にズレる。 左側に自

        • 氷の聖人と真っ白な世界

          氷の聖人と名前のついた曜日がある。春真っ盛りに突如としてあわられるまさしく中世より伝わる気候の聖人。毎日いろんな聖人がいてややこしいのだが、この氷の聖人達だけは、あちこちで囁かれる。二、三日おかげでしっかりと寒い。下界では雨が続き、天上では雪が降る。 それまで春通り越して夏になるんじゃないかっていう太陽の暑さも一気に何処かへ消え、窓を開ければ、霧のミストが静かに室内に入ってくる。テラスで霧に包まれながらコーヒーを飲む。眼前に広がるはずの壮大な山の景色は真っ白に覆われて何も見

          蒼い砂漠の少年とモロッコ

          真っ白だ。白い闇で覆われて、かろうじて進むべき道がうっすらと見える。 ぼんやり現れる木々に目をこらしながら、霧の中、1200標高のスイスアルプスの中を歩く。 自粛中で、気が付いたら毎日、野生のウサギ、子鹿、ロバなどに会う事が多いのだが、この霧の中じゃ何も見えない。 黙々と白い闇の中を歩きながら、エッサウイラーの夜の出来事を思い出す。 モロッコのとある町、私は現地で買った真っ白い絹の肌触りの良いパーカを頭からすっぽり被り、夕方、太陽が少し昼寝をし始めた頃に、大きな吹き抜

          蒼い砂漠の少年とモロッコ