記憶の匂い
久しぶりの再会はココナッツの匂いに包まれた。
困ることは、別れた後も当分その余香に包まれる。
こういう男は、何が自分を惹きつけるにおいなのかを知っている。
自分の体臭を知り、常に清潔にし、そのうえで香らせる少し癖のあるココナッツの香り。
良く考えたら、こっちの男達は、オイルやクリームを身体に塗る。
サーファー達の使っているモノイオイル。
モロッコのアルガンオイル。
私が日常で使っているのは、アルガンオイルがブレンドされたアーモンドオイル。
身体からふわっと香る甘い匂いと、それに合わせる香水、湿度、風そんなのが交わって時折見せる、自分の香り。
意外とそういうのに、人は弱い。
香りは記憶となって残る。
キスの習慣のある国じゃ特に。
何度か、首筋を嗅がれて、何を使っているのか聞かれる。
その香りが記憶に残る時。
同じ匂いに包まれるのが、再開の合図だ。
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