サイン本山脈
3月一週目。
宮崎の書店さんにお送りするサイン本を書きに来てくださいと言われて、宝島社へ。
私はとても恵まれた新人で今は編集担当さんがおふたりついてくださり、2作目の『猫のお告げは樹の下で』から、編集長ウシロスキーと編集女史イシバシーナと一緒に創っています。(仮名です、日本人です)
前日、イシバシーナに軽い気持ちで「何冊あるんですかー」とメールしたら、あちらもさくっとしたお返事で
「237冊です」
にひゃ……( ゚ ▽ ゚ ;)
ええええええ!!
そんなにいっぱい書かせていただけるの!?
サイン本は返品ができないので、書店員さんに「必ず売る」という気合がないと置かせていただけないのです。
デビューしたとき、先輩作家さんから「書店さんで著者が自分から『サインしましょうか』とは絶対言ってはいけない」と教わりました。
私のほうこそ気合をいれねば。ここぞというときのお守りアイテムのひとつ、大好きなRADWIMPSのコンサートトレーナーを着こみ、サインペンを4本仕込んで降り立った半蔵門(宝島社の最寄り駅)。宝島社のミーティングルームにはドドンと大きな段ボールが2箱用意されており、私の目の前で箱を開き始めるウシロスキー。
こ、こんなにたくさん、ホントにいいのですか……
でもなんで「237冊」って半端な数なの?
そう問う私に、ウシロスキーは穏やかなまなざしでこう語るのでした。
「書店さんによって、リクエストの冊数が違うからです。こっち(版元)がコレだけ作ったから配ってくださいっていうんじゃなくて、先方からいただいた必要な冊数の合算が237冊だったんです」
……………じーん(´;-;`)
なんとありがたい……。
「最低でもこの237冊は必ず売るよ!」っていう、宮崎の書店さんからのエール。
心をこめて書かせていただきました!!
本に「予備」なんてものはないので、一冊一冊、全力で本番です。
私の隣でずーーーーっと、帯をはずし本を開き、端を押さえていてくれたイシバシーナに感謝。いったん席を外して後半で手伝いに来てくれたウシロスキーも「お茶いります?」なんて給湯室に走り出し、わーっ、編集長じきじきに淹れてくれたお茶を飲んでしまったよ! 玉露入りならぬウシロ入りだよ!
あああ、ありがとうございます、美味しいです、恐縮です。
連なる山脈をひとつずつ超えるようにして書き進め、いよいよラストに近づいたころ、イシバシーナが言いました。
「ほらっ、あと一山ですっ!」
………って!
あなた今、隣にあった数冊を上にのっけて一山にまとめたじゃん!
すばらしい。作家のモチベーションを上げようとする優秀エディターの小技を見た。このように日々、たくさんの方々に支えられております。
午後3時頃から書き始めて、トイレに2回行って、たまにチョコレートを食べて、書き終わったのは9時半。時間はかかったけどその間ずっと嬉しくて、指先の痛みさえ喜ばしく思いました。
サイン本をお手元に置いてくださった宮崎の読者さん、どうもありがとうございます。私より一足先に宮崎入りしたココアくん、いいなぁー。