【お麩の歴史】みんなが知らないお麩の歴史
1. お麩はどこで生まれたの?
お麩の歴史はとっても古く、中国の宋代(960年~1279年)にはすでにお麩の元である〈麵筋(メンチン)〉が食べられていたと北宋中期を生きた科学者が書いた夢渓筆談に記載されています。
※麵筋…グルテンミート
2.いつ、どうして日本に来たの?
日本に麵筋が伝わったのは、鎌倉時代~室町時代(1185年~1573年)と言われています。
当時中国に留学に行っていた僧侶たちに麵筋が伝わり、肉食禁断でもしっかりとタンパク質が取れる麵筋が重宝され、日本にその食文化を持ち帰ったことから日本の麩の歴史がスタートします。
3.お麩は高級品だった?
日本に伝わってからしばらくは、御所の中心である京都を中心に寺院や宮中のみで食べられていました。
国産小麦が高級品であったことから、寺院や宮中でも特別な日のお料理として提供され、一般人には到底手に入らない貴重な食材でした。
茹でる事が主流だった麵筋は、桃山時代(1568年~1598年)になると麵筋を焼いて食べる「ふのやき」というものが出てきました。とても貴重品で珍しいもので、まだ一般人の口に入ることはありませんでした。
この頃になると、料理だけでなくお菓子としても使用されるようになり、千利休が開催した〈天正茶会百席〉にもお茶菓子として出されたと当時の茶会記に記されています。
4.そして全国へ
江戸時代になると、お麩は全国に広まっていきました。
地方からの奉公人や見習い、総本山で修業した修行僧が地方へ持ち帰り、それぞれの気候や風土に合わせた製法で麸を作りました。
後程説明しますが、これが地域によって特色の違うお麩がある理由です。
寛政12年(1800年)になると江戸幕府が西洋の小麦と生産法を手に入れ、
安政6年(1859年)には開港と共に精白小麦粉が初めて輸入されました。
明治時代になると精白小麦粉が広く使用されるようになり、現在の焼麩も製造されるようになりました。
国内産の精白小麦粉の大量生産が可能になり、すき焼きやお味噌汁、酢の物など幅広く使用されるようになったことから麩の需要が伸び、製造業者が増えていきました。
5.地域によって様々!お麩の種類と特徴
修行僧や奉公人によって地方に広まったお麩は、地域の風土や気候に合わせて様々な形や作り方へと変わっていきました。
新潟県は、車麩やお椀型の新発田麩(しばたふ)
宮城県仙台市は油で揚げた油麸、山形は板状の庄内麩などその形や特徴は様々。
焼麩だけでなく、もち粉を合わせて蒸した生麩や、生麩の中に餡を入れた和菓子の麩まんじゅうなど、様々なお麩が生まれ、私たちの食に根付いています。
それぞれの特徴を少しお話します。
「車麩」
新潟県の名産品である車麩は、しっかりとした食感と歯ごたえが特徴。
お肉の代わりに使いたい場合や、しっかりお麩を味わいたい場合は車麩がおすすめです。
「新発田麩(しばたふ)」
新潟県下越地方でお味噌汁の定番として食べられているお麩。
煮るとふっくらとし、つるんとなめらかな舌触りが特徴。
汁物に良く向いているお麩です。
「油麸」
仙台市の名産品です。油で揚げたお麩で、煮るとコクがでてとろんとした舌触りが特徴。煮物等に向いているお麩です。
「生麩」
京都で発展した生麩は、もちもちとした食感が特徴。
よもぎやあわを練り込んで「風味や食感を楽しむ生麩」と、
梅の花やもみじの色と形をした「鮮やかな見た目を楽しむ生麩」の2種類。
今現在は京都のみならず全国各地で生麩が作られています。
「麩まんじゅう」
餡を生麩で包んだ和菓子です。
笹に包まれており、つるんとした舌触りともっちりコシのある独特な食感です。
6.減少の一途をたどるお麩業界の現在
明治時代、全国へ広まり製造が盛んになったお麩ですが、食の欧米化が進みお麩の需要が減ってきています。後継者不足や需要の減少から廃業していくお麩製造業者も増え、最盛期1,200軒ほどだったのが現在は200軒ほどに減少。今も減少の一途をたどっています。
7.SDG’S 見直されてるお麩の未来
日本食としてのお麩の需要が減ってきている現在ですが、
SDG’sやプラントベースへの関心が高まっている中、近年お麩が見直されてきています。
「環境への負担が少ない植物性のタンパク質を積極的に取り入れる事で、
地球への負担を減らし持続可能な社会を作っていくことに繋がる」
これにぴったり当てはまるのがお麩!
植物性のタンパク質からできているのでタンパク質豊富、お肉の代わりにも使用できるお麩は、プラントベースにぴったりの食材です。
プラントベースや、ヘルシーで健康的という観点から若い方に関心が高まっているお麩、
現在は煮物やお味噌汁だけでなく、お肉の代わりや洋風料理、デザートまで様々な料理方法で食べられています。
是非日々の食卓に少しずつでも取り入れてみてくださいね。
宮村製麩所
宮村 小百合
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