松井冬子 生々流転
襖絵の蝶に涙した話
松井冬子
現代日本画を見る人なら聞いたことがあると思う。
よく耳にするワードは、
痛み、狂気、圧倒的な美、芸大卒、伝統的細密技法…
2011年の横浜市美術館の松井冬子展では多くの作品が一堂に展示された。
(同年の紅白歌合戦の審査員での美しい着物姿も話題になった)
どの作品も強烈な印象でした。
ある絵では
横たわる女が切り裂いた腹の内臓を、子宮を見せつけ
ある絵では
少女が藤の花の下を血のにじんだ素足で歩いている
見ていると、その痛みに目をそむけたくなる。
でも圧倒的に美しい。
見たくないものを、細部まで見せつけれる。
でも何か自分の開示欲求を満たされる気持ちになる。
それからずっと松井さんの絵から受けた感情は
内臓の奥に美しい蜘蛛の巣のように自分の中にあった。
そして久しぶりに松井冬子さんの絵に対面した。
新宿 瑠璃光院白蓮華堂 ~ 生々流転(しょじょうるてん)~
10年の歳月をかけて描き上げらた48面の襖絵が
大廊下と三つの和室で展開されています。
お寺の方に案内して頂いた順に、、、
《夏》蝶~焔と煙の嵐から静かな雷の海の景色への移り変わり~
《冬》山景色~雪と松の老樹と炎と頂上の見えない山~
《秋》天空~太陽と月と金星の光線~
《春》桜~うねる幹と枝と量感のある八重桜
※文でお伝えするために春夏秋冬以外は絵面を端的に書きました。
写真撮影不可でしたのでチケットから、、、
これは《夏》のごく一部の蝶
すべて見てきたあと、再びこの蝶を見て
苦しさと美しさと安堵が入り混じって、泣いてしまった。
怨念の嵐のうねりの中をごく薄い羽で飛んで来た
強風は続き、天地が分からなくなり、
羽ばたきを止めれば死ぬ、痛みを感じながら飛ぶ、
飛び続け、ようやく大気が穏やかになり、
安然の地への風が吹く場所に辿り着く
もしくは終わりの受け入れ
痛みからの昇華
絹に墨で描かれているのですが、お寺の名前”瑠璃光院”にちなんで
瑠璃(ラピスラズリ)の青がところどころに使われています。
蝶のごく細い墨の線の中にも目を射るような青がありました。
拝観させて頂いて、ありがとうございます。
また美術館で松井冬子さんの大きな企画展があったらいいな。
生々流転もまた見る機会があったらうれしい。
瑠璃光院白蓮華堂は新宿の南口から徒歩3分のところにあります。
都会のど真ん中ある静謐さが、とても不思議な感じがしました。
独白に近いような記事で恐縮です。
読んで下さってありがとうございます。また〜。
みわ
@湘南のすみっこ
※生々流転は作品保護のために常設展示ではないそうです。
今回は昨日までの特別展示に訪問させて頂きました。