LSD《リリーサイド・ディメンション》第25話「真・魂の結合《トゥルース・ソウルリンケージ》」

  *

 オレとアスターは、お互いに意識を合わせ……念じあう。

『ユリミチ・チハヤの契約を承認しますか? YES OR NO』

 アスターの目の前にはポップアップウィンドウらしきものが表示されているだろう。

「YES! 承認!!」

 ……と、口上し、許可を承諾する。

(大丈夫なのですよ?)

 メロディたちは空想力《エーテルフォース》を利用して脳内で会話をしている。

魂の結合ソウルリンケージは、魂のつながりを強固にして発動《はつどう》する。概念を用いたルールを相手にぶつけるための……要するに必殺技みたいなものですよ? チハヤお姉さまは、さっきまでわたしたちと魂の結合ソウルリンケージをおこなって……脳にダメージを受けていたではありませんか!!)

 マリアンは決意する。

(彼の過去を見たでしょう? あの過去はマイナスそのものである悲劇の主人公のよう……。でも、マイナスから始まれば、あとは上がっていくのみですわっ! この物語は彼の始まりなのです! そして、彼の運命は「神託《しんたく》の間《ま》」の予言にも表示されたように未来の勇者になるはずなのですっ! だから、もう彼は上がるしかありません。この果てしない勇者道を!!)

(マリアン女王さま、それは違うんじゃないです? チハヤお姉さまの名字はユリミチです。意味は百合の道ですよ? チハヤお姉さまが上がるのは百合《ゆり》の道《みち》――百合道ですっ!!)

(――というか、チハヤのその台詞は、あるヒーローの名台詞と、あるヒーローの名台詞を組み合わせて自分の色を付け加えたものですわよ。要するに「バッタもん」ってことですわね!!)

(いいじゃないですか、バッタもん! 世に出ている昔話も、所詮なにかのバッタもんなんですよっ! わたしはいいと思いますよっ! ヒーローに憧れるって、かわいいじゃないですか!!)

(あたしもメロディに賛成ですっ! バッタもんサイコー!!)

(で、これ……なんの話ですわ?)

(「バッタもん」の話ですよ)

 ――マリアンたちが脳内でムダ話をしゃべっている間に、オレとアスターは魂の結合ソウルリンケージをおこなう。

 さっきは四人同時におこなったから負荷がでかかったと推測する。

 なら、今度は……絶対に成功させてみせるっ!!

 世界の平和を守るためになっ!!

  *

 ――オレは体色がめまぐるしく変わる……つまり、属性が一秒ごとに変化する「魔帝《まてい》」を相手にする前に、「魔帝《まてい》」の下にいる魔物……スライム、ゴブリン、ホークマン、イーグルデビル、オーク等を倒すため、アスターと魂の結合ソウルリンケージをおこなわなければいけない。

「アスター! いくぞっ!!」

「チハヤさまっ! いっていいですよっ!!」

「よし、いっちゃってやるぜっ!!」

 お互いに了解を得た。これでアスターは口上を唱えられる。

 意識を合わせるため、アスターは一度、空想の鎧エーテルアーマーの装備を解除している。

 だから再度、空想の鎧エーテルアーマーを着装《ちゃくそう》するっ!!

空想の鎧エーテルアーマー、着装《ちゃくそう》!!」

 アスターは以前、エーテル・アリーナでオレと戦ったときよりも強化された紫苑《しおん》の鎧《よろい》を自動的に装着するっ!!

紫苑の鎧アスターアーマー!!」

 アスターは自身の空想の鎧エーテルアーマーである紫苑《しおん》の鎧《よろい》を着装《ちゃくそう》したことで、オレの無限APエーテルポイントを使いたい放題になる。

 それにより、MPマジックポイントが何度でも何十度でも何百度でも何千度でも使える。

 APエーテルポイントMPマジックポイントに変換することができる。

 同時にオレはアスターの花言葉《はなことば》を使用することができる。

 つまり、オレたちは無敵なのだ。

 ……アスターは魔法少女並みの変身速度で空想の鎧エーテルアーマーを着装《ちゃくそう》している。

 つまり、この創作物がアニメで表現された場合……バリバリのえっちいエフェクトが入るってことだぜイエイ!! オレ、要するに美少女たちに、あんなことや、こんなことや、いろいろやらしいエフェクトをつける予定なのか!? 天才だろ、マジで!!

 で、ここからが「真・魂の結合トゥルース・ソウルリンケージ」の本領発揮ってわけだ。

 オレは百合《ゆり》の剣《けん》をホバーボード状態にして上に乗り、操り……空を飛び回る。

 魔物どもの攻撃が厄介だ。

「でも、甘いぜっ! 百合千雨《ゆりちさめ》の発動《はつどう》で下級魔物をすべて、蹴散らしてやるっ!!」

 オレはアスターと共有している属性を百合《ゆり》の短剣《たんけん》に付加する。

「くらえっ! 疾風《しっぷう》之《の》百合千雨《ゆりちさめ》っ!!」

 風属性の千の短剣による雨が魔物たちを襲う。

「くらったなっ!!」

 強烈な千の斬撃を食らった化物たちは悲鳴を上げ、消滅する。

 オレは魔物たちの消滅を黙って確認する。

 化物たちの消滅を確認したオレは、ホバーボード状態の百合《ゆり》の剣《けん》でイーストウッドとセントラルシティを旋回、「断罪《だんざい》の壁《かべ》」を見る。

 やはり、オレが紫苑《しおん》の花言葉《はなことば》を解析した結果が現れたか。

「……紫苑《しおん》の花言葉《はなことば》は『追憶』『キミを忘れない』『遠方にある人を思う』……だ」

 つまり、紫苑《しおん》の花言葉《はなことば》は「記憶」に関連するのだ。

「……オレはマリアンたちと魂の結合ソウルリンケージをおこなったとき、自分を見失いかけた。なぜか? それはオレの脳だけでは複数の記憶を管理できないからだ」

 要するに、なぜオレがアスターとの魂の結合ソウルリンケージ真・魂の結合トゥルース・ソウルリンケージと名付けたのかというと、やはり紫苑《しおん》の花言葉《はなことば》は「記憶」に関連する効果を持っているから、だ。

 魂の結合ソウルリンケージには、絶対にアスター・トゥルース・クロスリーである彼女の存在がいなければいけないのだ。それで魂の結合ソウルリンケージは真に完成するというわけ、だ。

「これから『四帝《してい》』と戦っていくことになるだろうが、自分を見失わないためにも彼女は、アスター・トゥルース・クロスリーは必要だ。オレがオレでいるためにも」

 オレは自身で納得した。

 アスターの様子でも見に行くか?

「記憶」を保持できるのは、すごくありがたいけど……マリアンたちと魂の結合ソウルリンケージをしたときよりも存在を感じない。

 これが真・魂の結合トゥルース・ソウルリンケージのデメリットか。

 まあ、負荷が減るんだ。

「携帯端末を使うか。ってか、なぜ今まで使わなかった、オレ……?」

 オレはアスターに連絡を取ろうとする。

「アスター? 今どこだ? アスター……?」

 おかしい……なぜ、反応がない?

 彼女がおかしいと感じたオレは、全神経を集中させ、彼女を探す。

 ……もしかして、なにか問題でもあったのだろうか?

「おーい、アスター……大丈夫か?」

 様子を見る。

 紫苑《しおん》の花言葉《はなことば》の真の能力を知っているオレだから言う――。

「――アスター……オレのことを気にする必要、ないと思うけどな」

 彼女はオレに目を合わせる。

「……なにもかも、お見通しなのですね……チハヤさま」

 オレは彼女の声を聞いて確信する。

「どうしてオレの過去を、そのまま受け止めたんだ?」

「それは、そういう花言葉《はなことば》、だからですよ」

 彼女はオレの過去を思い出しながら。

「どうして、あなたの世界の人たちは、あなたを『敵』であると認識するのですか? それなのに、どうしてあなたは『味方』のいない世界に抗おうとしていたのですか?」

「……そっか。オレの記憶や感情が、すべて伝わったわけか。……あのさあ、気にする必要、ないよ。はっきり言わせてもらうけどさ、オレとアスターは違う人間だぜ。なぜ自分のことのように記憶をとどめる必要がある? 臭いものに蓋をするって言葉は、この世界にはあるのかな? 意味、わかるかな? あくまでも一時しのぎでやり過ごそう、そうしよう、なあ……アスター」

「そう、させて、いただき……ます」

「よろしいっ! では、席に戻っていいぞアスターくんっ!!」

「戻る席は、だいぶ遠くにありますけどね……私たちの学校が……」

「ならば、この世界を救う戦い第一弾を終わらせようぜ……みんなで」

「はいっ!!」

 ――……そんな感情が彼女からオレへと、伝わったような感じがした。

「私、決めましたっ!!」

 アスターはオレに宣言することがあるようだ。

「私は自身を覆う殻を捨てますっ! だからチハヤさまにいただいた、この心器《しんき》を使わせていただきますっ!!」

「おう、使え使えー! むしろ使わないつもりだったのか?」

「ええ。私は騎士である前に剣士として生きてきたつもりなのでっ!!」

「なるほど……今までは殻を破りたくなかった、と……」

「そうですねー。そうかもしれませんねー」

 ……流せるようになったか、上出来だ。

「では、いきますっ!!」

 アスターは新しい心器《しんき》の口上を唱える――。

「――咲《さ》かせ! 紫苑《しおん》の花《はな》よ! 空想の箱エーテルボックス、開錠《かいじょう》! 来《き》たれ! 心器《しんき》――紫苑の小銃アスターライフル!!」

 アスターは紫苑《しおん》の小銃《しょうじゅう》を装備した。

 紫苑《しおん》の小銃《しょうじゅう》はオレの世界に存在する「ライフル」のデータを組み込んで作り上げた心器《しんき》である。

 当然、百合暦《ゆりれき》二〇XXにせんダブルエックス年の技術力でも「ライフル」らしきものは存在するだろうが、まあ……この心器《しんき》はオレの趣味が全開になっている。

 ゆえにオレの中二力が、中二病要素が爆発し、「オレが考えた最強のライフル」ってくらい能力がすごい。

 まあ、機能は今、見てみろよっ!!

「目標……スライム、ゴブリン、ホークマン、イーグルデビル、オーク……その他の魔物たちっ!!」

 今、オレとアスターは真・魂の結合トゥルース・ソウルリンケージ無限APエーテルポイントを共有している状態だ。

 アスターの心が、魂が、活発になり始めている。

 心器《しんき》の能力を解放するのか!?

「くらってっ! 私の、渾身の……銃撃をっ!!」

 アスターはロックオンした。

「魔帝《まてい》」以外の、すべての魔物を。

 無限APエーテルポイントが、MPマジックポイントに変換され、MPマジックポイントのすべてを消費する、アスターの、究極の必殺技が魔物を捉える――。

「――……流星連弾《りゅうせいれんだん》っ!!」

 MPマジックポイントを使って生成した空想の弾丸エーテルバレットを放つことにより、イーストウッドに存在する、邪気を持つ、すべての魔物を……消滅させた。

『ピロリロリ~ンッ!!』

 ……というようなサウンドが鳴った。

 オレはアスターと真・魂の結合トゥルース・ソウルリンケージをしているから、なんとなく察しがついた。

 アスターはステータス画面を確認した。

Asterアスター――Levelレベル99』

 これで、役者はそろった。

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