LSD《リリーサイド・ディメンション》第64話「神託者《オラクルネーマー》たちの戦い」
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――オレが邪帝、闇帝、冥帝を倒したあと、それぞれの世界の神託者たちが戦いを始めていた。
オレとユリハはリーダンと、アリーシャはブルーノと、マリアンはルイと、ユーカリはマンダリンと、チルダはサニーと、メロディはハートと、アスターはラヴァンと戦っている。
百合世界と薔薇世界、それぞれの神託者たちが連携を取りながら技を発動させる――。
「――爆発新星」
メロディがハート・インディゴ・ダイアーに向かって、その技を発動させる。
が――。
「――藍の機械人」
――ハートは心器である藍の機械人《きかいじん》に瞬間的に搭乗して――。
「――藍の障壁」
メロディの爆発新星がハートの藍の人造人間の手から発動された藍の障壁によって防がれる。
場面が変わって、次はユーカリとマンダリン・シトラス・オレンジの戦いだ――。
「――蜜柑の舶刀」
蜜柑の舶刀を装備し、攻撃をおこなうマンダリン――。
「――有加利の盾指金具」
それに対してユーカリは指金具の甲に盾らしきものが装着された有加利の盾指金具という創作武器で蜜柑の舶刀の攻撃を防御し、その次にマンダリンの懐に攻撃しようとする。
マンダリンは回避して攻撃、ユーカリは防御して攻撃……その繰り返しだ。
場面が変わって、アスターとラヴァン・デュラ・グラスセントが戦っている――。
「――薫衣草の香」
ラヴァンは霧状の心器である薫衣草の香を使用する。
その香はアスターの精神に干渉し、意識を低下させるものだ。
アスターは、それを察して風素を体にまとう。
風素を体にまとうことで薫衣草の香の効果を無効にする算段だ――。
「――紫苑の小銃」
心器である紫苑の小銃を装備して――。
「――流星連弾」
ラヴァンに狙いを定めて技を発動させる――。
「――薫衣草の盾」
薫衣草の盾を精神で拡張させ、その技を防いだ。
場面が変わって、次はチルダとサニー・シャイニー・デイリーの戦いだ――。
「――向日葵の鏡」
サニーは向日葵の鏡という大型の鏡の心器を装備する――。
「――向日葵の激光束」
その技は向日葵の鏡から放たれる光線だ。
チルダは、それをかわして反撃に挑む――。
「――透百合の銃剣」
透百合の銃剣という心器を装備する――。
「――透百合弾」
透百合の銃剣の刀身が割れ、中から銃口が現れる。
銃口から光の弾が発射され、サニーは対処をおこなう――。
「――向日葵の激光束」
両方の光の弾は衝突する最後まで輝き続けていた。
場面は変わる――。
「――真竹の銃槍」
ルイは真竹の銃槍を装備する。
「殺しはしない。愛しているからな。ちょっと痛みが出るくらいに調整して放ってやる」
真竹の銃槍の先端には銃口がある――。
「――真竹弾」
真竹の銃槍の先端の銃口から緑色の光の弾が放たれた。
マリアンは、それを対処しようとする――。
「――聖母黄金花の戦鎚」
マリアンは聖母黄金花の戦鎚という新たな心器を装備して、真竹弾を打ち返す――。
――ルイの真横を通り抜けて真竹弾はドォーン! と、ある壁にぶつかった。
「やるな……万里奈」
「ええ、どんな弾でも打ち返してみせますわよ。当然ですけど、油断しないでくださいね。こっちにだって技は、あるんですから……覚悟っ!!」
マリアンは聖母黄金花の戦鎚を持ち、地面に振り下ろす――。
「――聖母黄金花の戦鎚っ!!」
心器を口上するときの同じ名の技を叫ぶ。
戦場の大地が割れ、ルイの足元に崖ができる。
ルイは落ちそうになるが――。
「――真竹弾突」
真竹の銃槍から光の弾を出し、それを槍の形にして崖の壁に突き刺し、崖から落ちることを回避した。
「やるじゃないか……」
割れていない地面に立ったルイはマリアンを見据える。
「覚悟しろ……」
ルイはマリアンに銃口を向けた――。
――場面はアリーシャとブルーノへ移る。
「どうして僕がキミたちを憎んでいるのか? ……わかるかい?」
「わからない……。どうして?」
「僕だって本当は生物的な意味で女になりたかったんだよ」
「生物的な意味で?」
「ああ、この二千年の間、分割された世界で……薔薇世界で茨門紅一を……リーダン・ロリー・ローズゲートを永遠に愛していたかったから……だから僕は女になりたかったんだよ。でも、僕が性別を変化させる衣の心器をまとったとしても完全な女にはなれなかった……だって、僕は男だから」
「それが、女という性別を恨む理由?」
「もし、この世界に女がいなかったらリーダンがあいつに恋い焦がれることもなかった。リーダンは僕を愛してくれていたかもしれなかったんだ。けど、それは違うって、わかる。リーダンは、ひとりの花人類として、ひとりの花人類を好きになったんだ。性別は所詮、飾りに過ぎなかった、ということさ。どんなに僕が彼と交わったとしても、それは変わらない。リーダンの心には、あいつがいる。だから……恨んでしまう。違うって、わかっていても、だ。特にアリーシャ・クラウン・ヘヴンズパイル……キミは天山有紗として、前世で生を受けた存在だな。それが、あいつ……遊里道千早の遺伝子をベースにつくられたハイブリッドクローンであるということをキミは知っているな」
「ええ、まあ、ワタシは百合世界で人工的につくられた神託者として、この世界に顕現した……けど、それは最初から予定通りで、すべてはリリアが決めた運命として備わっていた」
「そう、だから、あいつに従う必要はキミたちにはないはずなんだ。なのに、どうして共に戦う? 僕たちを敵にして?」
「そうですね……あなたたちの言い分はわかります。本来なら、ワタシたちが従うべきは新人類であるとわかりますが、それが、なぜチハヤ・ロード・リリーロードという、ひとりの花人類にワタシたちが従っているのか……それは、やっぱり、ひとりの女の子に世界の命運をかけてしまった、ということでしょうか?」
「へえ」
「この宇宙は、ビッグクランチによって収縮し、消滅の危機を迎えようとしています。それならば、ですよ? ほかの方法を考えなかった、あなたたちに責任は、ないのですか? 本当に、それしか方法がないと断定できますか? 本来ならば、思考を乱す薬を飲ませることはよくないってわかりますよね? なぜ花人類にすべての責任を負わせるのですか? まだ、まだまだまだまだ方法はあるはずなのに、どうして……?」
「それは、どうかな……たとえ、その、別の方法があったとするね? でも、もう宇宙が滅ぶ段階に到達しているとする。その中で別の方法を探す? そんな時間が、どこにある? 時間は、もう、残っていないんだ! それに花人類に人権はない! 新人類に従うのが花人類の役割だ。この二千年は宇宙が消滅するタイムリミットを伸ばしているわけではない。減らしているんだよ! 僕たちは新人類に従うしかないんだ! それは、とても名誉なことなんだよ? 薔薇世界の住人も百合世界の住人も新世界を創造するために、新人類に従わなきゃいけないんだよ!!」
「だったら、もう戦うしかないですね。これは、そのための戦いです」
アリーシャは心器を開錠する――。
「――女王百合の大銃剣」
女王百合の大銃剣は女王百合の大剣に銃剣要素を組み合わせた心器だ――。
「――なら、こっちも――青葵の大銃剣」
ブルーノもアリーシャの心器をコピーするかのように青葵の大銃剣を装備する――。
「――女王大百合弾斬」
「――大青葵弾斬」
お互いの大銃剣の刀身が割れ、光弾の刃が放たれた。
そんな戦いが、今も……繰り広げられている――。