LSD《リリーサイド・ディメンション》第59話「虹の少年たち」
*
――赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の髪を持つ少年たちがオレたちのいる想形空間に現れる。
赤はリーダン・ロリー・ローズゲート――茨門紅一、青はブルーノ・ホリホック・マロウ――葵青菜、緑はルイ・イヤーズ・バンブーツリー――竹木類であるが、そのほかの四人はオレたちが、まだ見たことのない人物だった。
橙が名乗る。
「マンダリン・シトラス・オレンジ……前世の名は橙蜜柑」
黄が名乗る。
「サニー・シャイニー・デイリー……前世の名は日廻陽光」
藍が名乗る。
「ハート・インディゴ・ダイアー……前世の名は藍染心」
紫が名乗る。
「ラヴァン・デュラ・グラスセント……前世の名は草香薫衣」
リーダンは彼らについて語る。
「彼らは薔薇世界と百合世界が分割されたときに生まれた薔薇世界の神託者だ。これで、もし薔薇世界と百合世界が戦争になったとき、神託者同士で戦うことができるからな」
「戦争だと?」
「今、おまえ……チハヤ・ロード・リリーロードは納得していない。アリエル・テンペストの心器である風玉の指輪が五闇の指輪によって精神が汚染され化物になったからな。おまえはアリエルを取り戻したいのだろう?」
「そうだよ。薔薇世界がアリエルをもとに戻してくれるなら話には乗ったさ。オレの命を差し出すくらいのことはしたさ。でも、おまえたちはオレを騙したんだ。だから、もう、この世界がどうなろうと知ったこっちゃないね。でも、オレは百合世界の少女たちは守るって誓ったんだ。だから、この世界を変えてやる」
「逃げ出したおまえが、この世界を救うだと? 笑わせる。だったら、今すぐ、この世界を救ってみろ。ニセモノの勇者よ」
「オレはニセモノじゃない。ホンモノの……チハヤ・ロード・リリーロードだ!!」
オレは心器を抜刀する。
「――咲《さ》け! 白百合《しらゆり》の花《はな》よ! 空想の箱、開錠《かいじょう》! 来《こ》い! 心器《しんき》――白百合の双銃剣!!」
抜刀した瞬間、オレたちのいた想形空間から外の風景が見える異空間へと変わった。
融合した世界を戦場に百合世界と薔薇世界の戦いが始まる――。
*
――チルダは、もう一度、転移するための心器である透百合の紗を使おうとするが――。
「――透百合の紗っ! あれ……?」
「もう、その心器は対策済みです。もう、絶対に、この戦いから逃げることはできません」
ブルーノが、自身の心器を開錠する――。
「――青葵の弓矢」
青葵の弓矢という遠距離攻撃用の装備を、この世界に顕現させた。
「放ちます。これは毒矢です」
少女たちを射程に捉える――。
「――白百合の短剣っ!!」
矢を短剣に当てることで効果をなくした。
「もう、口上を述べる時間はないぞっ! 瞬間的に叫べっ!!」
『了解っ!!』
百合世界の神託者たちが口上短縮化して心器を開錠する――。
「――聖母黄金花の鎚っ!!」
「――紫苑の小銃っ!!」
「――花蘇芳の杖っ!!」
「――有加利の指金具っ!!」
「――透百合の剣っ!!」
「――女王百合の大剣っ!!」
マリアンが高らかに宣言する。
「チハヤの大事な人を、さっさと、もとに戻すのですわっ! そうしなければ、わたくしたちと協力することはできませんわよっ!!」
その宣言に対して、ルイは急に告白する。
「万里奈……いや、マリアン・グレース・エンプレシアっ! おれはキミと戦いたくないっ! なぜなら、おれはキミを愛しているからっ!!」
「アリエルをもとに戻さなければ、その想いは永遠に叶いませんわっ! 第一、わたくし……あなたのことをよく知りませんの。ごめんなさいね」
「確かに、そうだな。おれたちは転生前から、まともに会話してこなかった。けど、それがおれの後悔となったのだ。だから、おれはキミに好きだと伝える。二千年間、ずっと純情に思い続けてきた……それを糧に今、キミに好きだと告白するっ!!」
「ごめんなさい。アリエルの精神を破壊した、あなたにだけは言われたくないので……だから戦いで決着をつけましょうか」
「そうだな。なら、力づくでもキミを奪ってみせるっ!!」
ルイは自身の心器を開錠する――。
「――真竹の槍っ!!」
ルイは竹のような槍――真竹の槍を装備する。
「では、お望みどおり力づくでキミを奪ってやる」
マリアンとルイの勝負が始まろうとしていたが――。
「――蜜柑の剣」
「――向日葵の剣」
「――藍の剣」
「――薫衣草の剣」
マンダリン、サニー、ハート、ラヴァンが心器を開錠した。
「最後は俺だ」
リーダンは口上短縮化して――。
「――薔薇の剣っ!!」
薔薇の剣と呼ばれる薔薇のように赤き剣がリーダンの手に装備される。
「まだだっ! こちらには、まだ戦力があるっ!」
三体の帝が召喚される。
「邪帝と闇帝と冥帝だ。闇属性の帝三体が、おまえたちを襲うだろう。どうする? これでも、まだ戦いを続ける気か?」
「ああ、まだ、こっちは、あきらめる気がないけどな。オレも真の力を引き出してやる」
オレはオレ由来の心器を作成する――。
「――黒百合の剣っ!!」
今、口上した心器――黒百合の剣は現実世界に存在する黒百合が由来ではない。
オレが架空の人間だったことが由来であり、その黒い百合はニセモノの百合だ。
けど――。
「――オレの黒百合はニセモノだっ! けど、ホンモノの黒百合ほど甘くねえぞっ!!」
白百合の剣を反転して形成された黒百合の剣……その力が解放されようとしていた――。