LSD《リリーサイド・ディメンション》第61話「対極の戦い」
*
――世界が、どうなってもいいなんて思わない。
オレは、ただ、この……百合世界が大好きだから、守りたいだけなんだ――。
「――その真・魂の結合が俺たちにも使えないと思ったか?」
「なん、だと……?」
リーダンが、オレたちの戦いにおける要となっている真・魂の結合が薔薇世界の騎士にも使えると言っている……?
「真・魂の結合、実行」
「青葵の鎧」
「真竹の鎧」
「蜜柑の鎧」
「向日葵の鎧」
「藍の鎧」
「薫衣草の鎧」
『空想の鎧』
「……これで薔薇世界の騎士たちにも俺に与えられた無限のAPが自由に使えるようになった」
「なんで、オレたちの能力が、おまえたちにも……」
「俺とおまえも、それぞれの世界における中心となる存在だ。だから、おまえにできることは俺にもできるんだよ」
「そんな……オレたちの魂の結晶が……」
「では、こちらもいこうか。ブルーノっ!!」
「ええ、いきますよ」
ブルーノが青葵の弓矢を構える。
「無限の矢」
口上とともに放たれた一本の矢が無限とも思える量に増えていく。
「でも、こっちだって障壁があるっ!!」
オレは黒百合の障壁を展開する――。
「黒百合の障壁っ!!」
無限の矢を吸収し、エネルギーとして蓄える。
「その隙が命取りだ」
ブルーノの攻撃のあと、ルイが心器を変化させる――。
「――真竹の銃槍」
真竹の槍を真竹の銃槍に変更した。
「がら空きだよ」
槍の先端に備えづけられた銃口が火を噴く。
「真竹弾っ!!」
緑色の光の弾がオレたちに向かって飛んでくる。
「有加利の盾っ!!」
有加利の盾が、その弾による攻撃を防いだ。
「防ぎましたですっ!!」
「今度は、こっちの番ですよっ!!」
ユーカリがルイの攻撃を防いだあと、メロディが花蘇芳の杖の心器を開錠し、技を放つ。
「爆発新星っ!!」
その杖による魔法の攻撃は盾でも鎧でも防御不可能なはずだ。
今、メロディが出せる最大火力の攻撃……真・魂の結合をしているからMPもAPも潤沢だ。
だから、今度こそ勝てる……そう思った。
だが――薔薇世界の騎士たちは誰も彼もが生きていた。
誰も彼もがピンピンしていた。
なぜ、なんだ――。
「――なにか疑問のように思った顔をしているな。だがな、それは当然なんだ。俺たちには無限の命が存在する。だから、どんな攻撃を受けても、それらが無意味となるのだ」
もう、なにも勝てる手段は残ってないのか……?
「今度は、こっちの番だ。同じ技で、まったく違う状況を演出してやろう」
リーダンは薔薇の剣の装備を解除し――。
「――薔薇の杖」
薔薇の杖という心器を装備する。
「爆発新星」
高火力の爆発の魔法がオレたち百合世界の騎士に向けて放たれる――。
「――黒百合の銃剣っ!!」
黒百合の銃剣を顕現させ、刀身を割って銃口を露出させる。
「――超吸収っ!!」
リーダンが放った爆発新星を全部、吸収する。
そして、吸収したエネルギーを真・魂の結合によってオレたちに伝播されていく――。
「白百合の銃剣っ!!」
右手に黒百合の銃剣を、左手に白百合の銃剣を装備する。
薔薇の剣千本を吸収したこと、リーダンが放った爆発新星のすべてを吸収したことにより、オレが放つ技もパワーアップしている――。
「――千合弾《せんごうだん》っ!!」
百合弾の十倍の威力を持つ技を発動させ、純白のエネルギーの弾が白百合の銃剣から放たれた。
薔薇世界の騎士に向けて放ったわけじゃない。
魔物だ。
少女の騎士たちには対処できないであろう魔物たちを、その輝いた弾で、すべて倒した。
残るは邪帝、闇帝、冥帝と薔薇世界の騎士たちだけだ。
闇の帝《みかど》たちの闇の家臣である邪家臣三体、闇家臣三体、冥家臣三体も千合弾によって倒された。
帝《みかど》たちを守るように散っていった。
「まだ、終わらんよ。百合世界の騎士たちよ」
「ああ、ここからが本番だ。戦おうぜ、薔薇世界の騎士たちっ!!」
「言われなくても……な」
リーダンは高らかに宣言する。
「超回復も超伝播も超吸収も超放出も、おまえたちだけが使えると思ったら大間違いだ。俺たちも真・魂の結合が使える。それが事実だ」
「だったら、やってみろよ。オレたちを屈服させる技を見せてみろ」
「いいだろう。ならば茶番は終わりにしようか。確実に、おまえたちを拘束してみせよう」
リーダンは薔薇の杖の装備を解除した――。
「――薔薇の牢獄」
リーダンがローズプリズン――薔薇の牢獄と叫んだ瞬間、融合された世界から薔薇の模様が施された鉄格子が出現する。
それは解除不可能なプロテクトが施されており、かつてリリアがつくった「分化」の術式が施された空想の箱のような異空間を形成している。
「薔薇の牢獄は薔薇世界の言語を理解できないと、それを解除できない。つまり、もう逃げ場はないということだ。その心器による空間は、かつてのおまえが作り出した薔薇世界と百合世界をふたつの世界に分化させたものと似ている。要は真逆の完全融合の術式による心器だ。ここでは俺がルールだ。すべての理は俺のためにある。では、次だ」
リーダンは新たな心器を開錠する――。
「――薔薇の鞭」
薔薇の鞭という心器を開錠したリーダンはオレの手足を拘束した。
「今から、おまえの中にいるホンモノの遊里道千早を取り出す作業をする。俺の彼女を返してくれないか? ニセモノの百合道千刃弥?」
これはヤバい……ピンチだ。
この状況をオレは、どうすることもできないのか?
なにか手は、ないのだろうか――。